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(画像=フォートレス・インベストメントWebサイトより)

ソフトバンクグループ <9984> が米投資会社フォートレス・インベストメント・グループを33億ドル(約3770億円)で買収すると発表した。その狙いは、非上場企業や不動産への投資で豊富な経験と知見を持つ同社を取り込むことで、昨年10月にサウジアラビア王国のソブリン・ウェルス・ファンドであるパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)と組んで打ち出した1000億ドル(約11兆2800億円)規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」とあわせ、ソフトバンクの「投資ファンド化」を加速させるところにある。

ニケシュ・アローラ前副社長(49)を後継者候補に指名し、一度は引退を公言していたソフトバンクの孫正義最高経営責任者(59)は、アローラ氏が昨年6月に電撃退任した後、「私は、テクノロジー業界のウォーレン・バフェットを目指す」と野心的な新目標を設定し、その実現に向けて矢継ぎ早に買収などを繰り返している。

そのソフトバンクが、バフェット氏(86)率いる世界最大の投資会社バークシャー・ハサウェイに匹敵するファンドになるために重要な役割を果たすとみられているのが、フォートレスなのだ。どんな特徴があり、どのような評価を受ける企業なのか。

運用資産は700億ドル以上

フォートレス・インベストメント・グループは1998年に設立され、ニューヨーク証券取引所に上場する企業であり、リターンがある水準(たとえば、プライベートエクイティで最低6%から10%)を上回った場合にのみ、キャピタルゲインの20~25%を成功報酬として受け取る形式で投資や助言を行なう大手オルタナティブ資産運用会社だ。

わずかな自己資金を元手に、(1)不動産、(2)不良債権やクレジットリスクが高い企業の社債やその他の流動性が低い証券、(3)企業の経営権取得を目的としたプライベート・エクイティ・ファンド、(4)公開株や債券、為替、商品など流動性が高いものへの投資を行なうヘッジファンド、などを中心に幅広く巨額の収益を上げており、運用資産額は700億ドル(約7兆9000億円)を超える。

フォートレスは需給がひっ迫気味の日本の不動産に大規模な投資を行っており、2012年にウィークリーマンション東京(現マイステイズ・ホテル・マネジメント)を買収したのをはじめ、2013年には東京ディズニーリゾート内にあるシェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルを420億円で取得している。さらに、2015年にはリーガロイヤルホテル京都、2016年には函館国際ホテルなどを取得するなど、意欲的だ。また、営業利益率の高いビジネスホテルに、特に注力しているという。

テクノロジーと投資の融合

ソフトバンクがフォートレス買収を発表する以前の約1年間、「シーキング・アルファ」や「グル・フォーカス」など複数の米国の投資サイトでは、「フォートレスは過小評価されている」という評価が一般的だった。孫CEOは、そこに目を付けた。

ソフトバンクが設立予定のテクノロジー分野に出資する「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を指揮するのが、フォートレスの元シニア・マネジングディレクターであり、アローラ氏のかつての右腕であるラジーブ・ミスラ氏(55)だ。事実、ソフトバンクは、「フォートレスの投資ノウハウを、弊社が設立予定の『ソフトバンク・ビジョン・ファンド』の運営に生かしたい」としており、両ファンドの相乗効果を狙っている。

孫CEOは現在、IoT(すべてのデバイスがウェブにつながるモノのインターネット)、AI(人工知能)、スマートロボットの分野に注力する戦略「ソフトバンク2.0」を推進しているが、フォートレス買収には、そうした狙いも隠されている。

フォートレスは、「世界一(仮想通貨の)ビットコインを預かっている会社」で、仮想財布と保管庫を統合した決済サービスを提供するザポ(Xapo)の株式を大量保有している。同社はさらに、ビッグデータを活用することで、信用度の低い借り手が消費者金融からローンを受けやすくするゼスト・ファイナンス(ZestFinance)の株式を大量に持つほか、米ライドシェアの旗手リフト(Lyft)にも大規模な投資を行っている。これらの企業のノウハウを、ソフトバンクが「2.0戦略」の文脈において広く融合・活用するシーンも考えられる。

数歩先を行く孫CEOの投資思考

米投資サイトなどによると、現在のフォートレスの財務状況には不安な点がいくつかある。まず、過去3年の間に、本業でどれだけの現金を稼いだのかを示す「営業活動によるキャッシュフロー」が44%も減少したこと。また、企業の収益性を測る指標である自己資本利益率(ROE)が2012年以来、平均14%と冴えず、年を追うごとに低下を続けていることだ。

不安な点も多い買収だが、11兆円の負債にあえぐソフトバンクが昨年6月に英半導体設計大手アーム・ホールディングスを240億ポンド(約3兆3000億円)で買収することを決めた際、孫CEOは、「たとえば囲碁で勝つ人というのは、碁の石をすぐ隣に打つ人ではなくて、遠く離れた所に石を打って、それが50手、100手目に非常に大きな力を発揮する。あそこにあのとき置いておけば良かったというのが、5年、10年後にわかる。私は常に7手先まで読んで石を打っている」と述べたとされている。師と仰ぐバフェット氏を彷彿とさせる、長期的結果を見据えた投資術だ。

こうしたなか、ソフトバンクが、2013年に216億ドル(当時約1兆5700億円)で買収した傘下の米通信大手スプリントに、別の通信大手Tモバイルを吸収合併させる長年の悲願をあっさり放棄し、逆にTモバイルに、現在340億ドル(約3兆8400億円)もの負債を抱えたスプリントを売る案が浮上した。

孫CEOによるフォートレス買収の7手先にあるものは、スプリント売却で得られた資金を元手に、フォートレスを使って人々が思いもつかない別のテクノロジー大手を買収し、「米国に500億ドル(約5兆7000億円)を投資し、5万人の新たな雇用を創出する」とのドナルド・トランプ米大統領(70)への約束を果たすことかも知れない。(岩田太郎、在米ジャーナリスト)

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