投資の原則
(写真=PIXTA)

子どもが豊かな人生を歩むための、効率的な資産形成の方法を教えることもできない( https://zuuonline.com/archives/141236 )。ということをおわかりいただいたところで、いよいよ実際に投資を始めるには何をしたらいいか、どう考えたらいいかを、お話ししていきましょう。(本記事は、菅下清廣氏の著書『一生お金に困らない子どもを育てる45のルール』(PHP研究所)の中から一部を抜粋・編集しています)

元本をどれだけ守れるかという安全性

投資を始めるときには、まず次の3つの視点を頭に入れておいてください。

  1. 安全性=投資した金額(元金)が失われるリスクが、どれだけ低いか
  2. 流動性・換金性=取引市場があって、すぐに現金に換えられるかどうか
  3. 利殖性・時間=どれくらいの利益を、どれくらいの期間で得るか

まず考えるべきは「元金がどれだけ守られるか」という安全性。といっても、残念ながら、投資の世界では、元本が100パーセント保証されることはありません。ただ、金融商品によって、元本が失われるリスクは大きく違います。安全性を一番に考える人は、よりリスクの低いものを選ぼう、ということです。

売買しやすさを表す流動性・換金性

次の「流動性・換金性」は見過ごされがちなのですが、非常に重要です。流動性とは、ひと言でいえば、取引市場があるということ。取引市場があると、買いたいときに買い、売りたいときに売れるので、「換金性」が高いということになります。つまり流動性と換金性はセットになっているわけですね。

株や為替、債券などは、すべて取引市場があります。値下がりしているときに売って元本割れしてしまう可能性はありますが、すぐに現金に換えられます。となると、流動性・換金性という点で問題なのは、どんな投資形態なのでしょう。

自分で行なう不動産投資などは、「流動性がなく、換金性に難あり」の典型例です。たとえば、家賃収入を見込んで8000万円のマンションを買ったとします。ところが思ったように入居者が決まらず、家賃収入が入ってきません。おまけに家の経済状況が変わって、すぐにまとまったお金が必要になってしまいました。

そこでマンションを売ってお金に換えようと思っても、話はそう簡単ではありません。なぜなら、不動産には取引市場がないからです。企業の株は、株式市場で取引されています。

たとえれば「スーパーの棚」に並んでいるようなものです。いつでも自由に売買できます。これが市場取引の一番の利点です。しかし、不動産には取引市場がなく、仲介業者が「売りたい人」と「買いたい人」を結びつけることで売買が成立します。こういう取引を「相対取引」といいます。つまり、自分が売りたいと思っても、買いたい人が見つからなければ売れないのです。

この「相対取引」の場合、取引の間口が非常に狭いうえに、仲介者には売る責任がありません。つまり仲介業者に「この物件を売りたい」といっても、デフレの時代には何年も売れないまま、ということが起こり得るのです。バブル時代ならいざ知らず、まず買った値段より安く売ることになる可能性が高いでしょう。現に、バブル期に1億円で買ったマンションを、デフレ下で泣く泣く10分の1の1000万円で手放したという話など、かつてはザラでした。

デフレ不況の時代は、値段が下がっても買い手がつけばまだいいほうで、悪くすると売れないままです。かくして不動産という資産はあるのに現金はない、という状況に陥ってしまいかねない。これが、流動性と換金性の低い投資の恐ろしいところです。最近は、アベノミクスにより不動産市場は著しく改善していますが、流動性が十分あるとはいえません。

もちろん、不動産、たとえばマンションなども物件次第で大きく値上がりしたり、即日売却できる場合もありますが、株のような取引市場は存在しないのです。

投資するのは「なくなっても真っ青にならない額」という前提はあっても、人生、何が起こるかわかりません。種銭を投資した、しかし急に物入りになった、というときに、すぐに現金に換えられなければ困ってしまいます。だから、流動性・換金性は見過ごすことのできないチェックポイントなのです。

どれだけ利益が出るかという利殖性・時間

最後の「利殖性・時間」は、投資の醍醐味、言い換えれば投資をする目的の部分です。種銭に対して、どれだけの利益が出るか。少なくとも銀行の利子より多くなくては、投資をする意味がありません。

また、投資した種銭を、即座に回収して利益を得るのか、それとも長期にわたって利益を得つつ元本を回収していくのか、どちらを選ぶかによって投資形態も変わってきます。ここでは個人投資家として、そして子どものお金の教養を培ってやりたい親として、どういうスタンスをとるか、ということも問われます。

「利殖性」と「安全性」は、ほぼ反比例すると思ってください。つまり投資の世界では「ハイリスク・ハイリターン」「ローリスク・ローリターン」が常であり、安全性が高いほど利殖性は低く、逆に利殖性が高いものには、当然、高いリスクが伴います。ですから、わずかな資金で大きな利益が見込め、しかもリスクはゼロ、なんて話を聞いても、なびかないこと。「うまい話には必ず裏がある」と思ってください。

「利殖性」とは、あくまでも「より大きな利益が得られる可能性の高さ」です。リスクは高くなる分、より大きなリターンが見込める。そこは自分で情報を集め、頭を使ってリスクをとる必要があり、見誤れば損をする可能性もあるというわけです。

菅下 清廣
スガシタパートナーズ株式会社代表取締役。国際金融コンサルタント、投資家。立命館アジア太平洋大学学長特別顧問。