経済の回り方が多少わかるようになると、その知識は投資にも生きてきます。たとえば、インフレのときは投資のチャンスです。今までなら「そういうものか」と思っただけかもしれませんが、先ほどの話と合わせて考えてみると、もっと身近に感じられるはずです。(本記事は、菅下清廣氏の著書『一生お金に困らない子どもを育てる45のルール』(PHP研究所)の中から一部を抜粋・編集しています)
なぜ、インフレは投資のチャンスなのか?
先に、世の中に出回るお金が少なくなると、デフレになると書きました。それは、モノに対してお金の量が少なくなるから、という話でしたね。見方を変えれば、これは、相対的にお金の価値が上がるということです。
もちろん、5円はずっと5円であり、10円はずっと10円です。でも、モノとのバランスで考えてみると、同じモノを5円で買えるときと10円で買えるときでは、5円で買えるときのほうがモノの価値が下がっている分、お金の価値は上がっているのです。
このように、デフレのときは、モノよりお金の価値のほうが高い。したがって、モノを持つよりお金を持っていたほうが賢いといえます。
わかりやすい例をいえば、仮に3000万円のマンションを買っても、デフレ時代だと、翌年には2700万円に値下がりしてしまった……ということが起こるからです。であれば、3000万円のお金をそのまま持っていたほうが、資産は多いことになります。
反対に、インフレのときは、モノの値段が上がっているわけですから、お金の価値は相対的に低くなっている、ということになります。そのうえインフレは株価上昇とセットになっています。アベノミクスでも、金融緩和後、株価は順調に上がりました。悪いときには8000円だった株価が、一時は2万円台にまで上がり、日本中が沸きましたね。
だから、インフレのときは投資のチャンスなのです。では、今はどちらの傾向なのかというと、まぎれもなくインフレです。お金の価値が下がっているというときに、ただ銀行に眠らせておく道理はありません。
もし、金融緩和策が行なわれると知ったときに、「これはインフレ傾向になって株価が上がるな」と予想し、いち早く株式投資をしていたら、どうでしょう。
単純計算で2倍まで株価が上がったのですから、投じたお金が2倍に増えていた可能性もあるのです。もっといえば、インフレ時はお金の価値が下がるため、株価が2倍にまで上昇する間、銀行に預けていたお金は、反対に2分の1の価値になってしまった、ともいえます。
「殖やす」ことに頭を使わなければ豊かになれない
なお、アベノミクス政策(脱デフレ)のもとではインフレ傾向が期待されますが、この原稿を書いている2016年1月現在は、株価は大幅に下がり、為替相場では円高になっています。こういうときは、一時的にせよ日本経済はデフレ気味に動いているといえます。それはなぜなのか? それを考えるのが、この本の狙いであり、テーマです。
自分は投資をしていないから、日経平均株価なんて関係ない、と思っているかもしれません。でも、それは大きな勘違いです。
株価は日本経済を映し出す鏡であり、自分にも関係している。それはもちろん事実ですが、もっと直接的にいえば、株価が上がっている間に、自分が銀行に預けているお金の価値は、みるみる落ちているということです。
そう考えてみると、自分のためにも、子どものためにも、ますますお金の教養を身につけたくなってきませんか。
銀行や郵便局に預けていれば、たしかに安心です。必要なときにすぐ引き出せますし、1000万円以下であれば、ほとんど殖えないまで
も、失うことはありません。おそらく、利子を得ることなんてハナから期待していない、という人が大半なのでしょう。
それに銀行に預けてしまえば、あとは何も考える必要はありません。要するに、楽なだけで大きく殖えることはない。これが貯金です。でも、そうして自分の頭を使わず楽をしている間、インフレ下では、お金の価値は下がっている、という話なのです。
せっかく一生懸命、働いて得たお金です。稼いで日々の糧をつくるだけでなく、「殖やす」ことに頭を使わなければ、今以上に豊かになることはあり得ません。
努力なしでは、子どもに、満足な資産を残せない。子どもが豊かな人生を歩むための、効率的な資産形成の方法を教えることもできない。
菅下 清廣
スガシタパートナーズ株式会社代表取締役。国際金融コンサルタント、投資家。立命館アジア太平洋大学学長特別顧問。
【子どもに伝えるお金の哲学シリーズ】
(1)お金を殖やす3つのステップ
(2)お金を「使うだけの人」と「殖やす人」の決定的な差
(3)学校では教えてくれない 日常生活で実践する「お金の教養」の磨き方