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(写真=file404/Shutterstock.com)

通常、企業が従業員に提供する福利厚生は課税の対象になりませんが、社宅を利用している場合は課税対象になる場合があります。課税対象になると、社員の手取り給与の金額に影響します。そのため、課税対象となる条件を確認しておく必要があります。今回は、社宅と課税について解説します。

所得税が課税されない場合、される場合

福利厚生は給与所得にならないため、課税の対象になりません。例えば、自宅から勤務地までの交通費は、一定額までであれば非課税になります。同様に、社宅や社員寮なども社員から一定の金額を受け取っていれば非課税になります。その他、出張や社員旅行、親睦会の費用などの福利厚生費も、基本的には課税の対象になりません。

福利厚生は基本的に非課税ですが、給与所得とみなされて課税対象となる場合があります。例えば、社宅を提供する場合、従業員から賃貸料相当額を超える賃料を受け取っていない場合は課税の対象となります。賃貸料相当額は、以下の1~3を足して合わせたものになります。

1.(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
2. 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル))
3.(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
(国税庁)

従業員から社宅の賃料を徴収していない場合は、この賃貸料相当額が給与所得とみなされ課税対象になります。賃料を徴収していたとしても、賃貸料相当額の50%を満たしていない場合は、差額が給与所得に加算されることになります。なお、借り上げ物件を社宅として提供している場合でも、上記の基準を満たしていない場合は課税対象となります。

福利厚生は、従業員がより働きやすい環境を整えるために提供されるものです。そのため、一部の従業員だけが対象である場合や、社会的に見てその額が過剰な場合は、給与所得とみなされ課税対象となります。例えば、社員旅行の場合は全社員の50%以上が参加し、旅行期間が4泊5日までのものが福利厚生の範囲となっており、これを超える場合は「社会通念上」、社員旅行とは認められないことになっています。

社会保険料や住民税にも影響がある

福利厚生が給与所得とみなされることで、所得税はもちろんのこと、厚生年金保険料などの社会保険料や住民税の金額も上がることになります。住民税は、所得税と同様に課税所得金額に基づいて算定されることから、社宅が給与所得に算入されることで支払い額が増えることになります。

社会保険料の場合は、厚生労働大臣の定める現物給与価額と、社員が負担した賃料の差額が標準報酬月額に算入されます。現物給与価額とは、従業員に提供される社宅を金銭に換算したものです。都道府県ごとに畳1畳当たりの金額が設定されており、畳一畳×広さで算出します。

例えば、東京都で6畳の社宅に住んでいる場合、2,590円(畳一畳分)×6畳=1万5,540円が現物給与価額となります。もし従業員の負担している賃料がこれに満たない場合は、その差額が標準報酬月額に算入されるため、社会保険料の支払い額が増えることになります。

社宅を使って節税もできる

福利厚生費には健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料などの「法定福利費」と「法定外福利費」があります。「法定外福利費」として経費に計上できるものには通勤手当、レクリエーションにかかる費用、社食の提供、そして社宅や寮にかかる費用が挙げられます。このなかでも、社宅は企業にとって節税効果の高いものです。社宅として所有している物件は借り上げ社宅であっても、家賃や減価償却費、借入金利子を会社の経費として計上できます。

福利厚生として社宅を提供すると企業の負担は重くなりますが、節税の効果を期待することもできるという特徴があります。とくに、借り上げ社宅の場合はより節税効果が高くなります。社宅の導入を検討する場合は、課税される・課税されない条件を把握し、有効に活用していきましょう。(提供: フクリ!

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