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(写真=Thinkstock/Getty Images)

AI(人工知能)がウォールストリートに革命を起こし始めた。大手国際金融機関は競うようにテクノロジーへの投資を拡大し、ビッグデータ、ブロックチェーン、クラウドを基盤とした次世代金融システムの構築に本腰を入れている。その中でも近年、急速に開発・実用化が進んでいるAIが、金融産業に与える影響について考察してみよう。

JPモルガン、AI分析ソフト「COIN」で36万時間相当の労働力節減

JPモルガン・チェースは年間36万時間相当の労働力を節減する機械学習ソフト「COIN(Contract Intelligence)」を導入。この最先端のソフトは「AIのプログラム自身が学習する」という機能を利用して、情報源を絞込み正確性を高めることにより、契約にともなうリスクを短時間で効率的に分析する。

この新たなシステムにより、これまで弁護士や融資審査部が膨大な手間と時間を費やして処理していた商業融資の契約審査手続が、わずか数秒間でより正確に完了可能な環境が創出された。

JPモルガンはさらにビッグデータ、クラウド、ロボティックの研究・開発用ハブを、ニューヨークに設立。最新のテクノロジーから収益源を探索すると同時に、コストやリスク削減の手段を検証している。

ゴールドマン、AI市場分析プラットフォーム「Kensho」でスピード予想

早期からAIに秘められた潜在性に着目し、投資に余念のなかったゴールドマン。2014年にはビッグデータと機械学習による株式市場分析プラットフォーム「Kensho」に1500万ドル(約16億7850万円)を投資。

2013年にニューヨークで設立されたスタートアップ、Kenshoは、AIを利用して最も困難とされる分析でも難なくこなす革命的プラットフォームを開発し、金融データ産業に一大革命を起こした。日本の禅がコンセプトになっているという「Kensho(見性)」は、経済報告書、金融政策改革、政治行事やその影響を考慮に入れ、6500万以上の質問事項に対する回答を即座に弾きだす。

例えば「新型iPadの発売で、最も株価が値上がりするAppleサプライヤーは?」「大型ハリケーンがフロリダに上陸した場合、どのセメント株が最も上昇するか?」といった質問を打ちこむだけで、即座に回答が表示される。これまで複数のアナリストが数日かけて行っていた分析が、わずか数分(しかもPC1台)にまで抑えられるというわけだ。

ブリッジウォーター、AIマネージメント・システム構築

世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエイツも大規模なデジタル改革とともに、2015年に独自のAI開発チームを結成。

元IBMの凄腕主任研究員、デヴィッド・フェッルッチ氏をチームに迎え、人間のマネージャーの代用となるAIマネージング・システムの構築に取り組んでいる。実現すれば従来はマネージャーに委任されている業務上の決断を、AIが遂行できるようになる。

プロトタイプ・マネージング・システム「iCEO」の開発者、米シンクタンク「未来研究所(IFTF)」のデヴィッド・フィドラー氏は、多くのマネージメント業務が基本的には情報関連であり、「AIの最も得意とする分野」とコメントしている。

ブリッジウォーターはすでに「ドッツ」と呼ばれるAI評価システムを開発。従業員の長所と短所の分析に役立てている。また従業員向け効率化ツール「コントラクト」なども、目標達成手段として利用されている。

将来的にはトレーダーのいない株式市場に?

AIに取り組む金融機関は後を絶たない。ほかにもCitiグループの国際企業ベンチャー子会社、Citiベンチャーズがテルアビブなど世界6都市に開設したイノベーションハブ「Citi Global Innovation Labs」をとおして、機械学習とAIの研究を進めている。カナダロイヤル銀行も今年1月からアルバータ大学の計算機科学部門である機械学習機関(AMII)と提携し、同様の開発に取り組んでいる。

しかしAIへの取り組みが加熱すればするほど、人間の労働力への影響が懸念される。2000年にはニューヨーク本社で600人のトレーダーを雇用していたゴールドマンだが、現在はたった2人のエクイティ・トレーダーとともに大部分の業務が自動化されている。こうした例は氷山の一角だ。テクノロジーの進化にともなう金融機関の縮小化は、最早回避不可能だろう。

香港を拠点とするAIヘッジファンド、Aidyiaのチーフ・サイエンティスト、ベン・ゲーツェル氏が興味深い発言をしている。「仮にトレーダーが全員死亡しても、AIは勝手にトレードを続けてくれる」――AIによって「永遠に眠らないウォール街」を創りだすことが可能になる日も、そう遠くはないのかもしれない。(アレン琴子、英国在住フリーランスライター)

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