シティバンクが香港やシンガポールを含むアジア9カ国・地域のコールセンターに、声紋認証システム「NICE(ナイス・リアルタイム個人認証)」を導入した。
複数のPINコードやIDチェックで通常30秒から45秒必要だった本人確認プロセスが、新サービスでは15秒に短縮される。ひと足先に導入された米コールセンターでは、年間最高3億秒(3472日5時間20分)相当の時間節約につながると期待されている。
リテール部門の取引の95%がオンラインとモバイル
コールセンターとのやりとりで顧客が最もわずらわしく感じるのは、個人認証のための質問への回答や暗証コードの入力だろう。「NICE」では通話録音から顧客の声紋情報をデータ化し、数秒間で本人確認を完了させる。顧客満足度の向上だけではなく、セキュリティー強化にも一役買う。
「NICE」はイスラエルのITソフト企業、NICEシステムが開発した。NICEシステムはほかにもビッグデータや分析用のソリューションを、世界150カ国、2万5000社に提供している。
米フォーチュン紙の報道によると、シティは2013年から声紋認証を利用した認証システム開発に着手。2015年からは顧客を対象としたテスト運転を実施していた。米国ではクレジットカード顧客を対象に昨年本格的に始動させ、すでに25万人から利用されている。
かつてはアジア太平洋地域のプライベートバンキングで最大規模だったシティバンクだが、2014年以降は韓国、マカオ、日本などから次々に撤退した。残された地域でも縮小を余技なくされている。現在のリテール部門の取引は95%がオンラインあるいはモバイルによるものだ。モバイル利用の年間成長率は35%と最高の伸びを見せている。
こうした顧客の需要の変化を見極め、台湾、オーストラリア、香港、シンガポール、フィリピン、マレーシア、ベトナム、インドで「NICE」を導入するという方向性は、シティのアジア部門にとって新たな拡大のチャンスとなるかも知れない。( FinTech online編集部 )
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