日銀による金融緩和が続くなか、外国人観光客の増加による宿泊施設や店舗の力強い需要が追い風となって、主要都市の不動産投資が盛り上がりを見せている。

オフィスビルは空室率が低下傾向にあり、賃料のアップなど収益性も改善し、商業地の地価を下支えする。国土交通省がまとめた2017年の地価公示(1月1日時点)をもとに、商業地のうち、地価の高いトップ10をランキングで紹介する。

商業地価格,公示地価
(写真=PIXTA)

銀座の山野楽器本店、1平方メートル当たり5000万円台を突破

地価公示は、毎年1回、国交省が選定した標準地の1月1日時点の正常な価格を判定する制度だ。この指標に基づき、一般的な土地取引価格が算定されるほか、公共事業用地の取得価格の算定基準にも用いられる。

このうち商業地は6142地点が調査の対象となり、全国の平均変動率は1.4%と前年の0.9%から上昇率がアップした。また、3大都市圏は、東京圏(3.1%)、大阪圏(4.1%)、名古屋圏(2.5%)と、全国平均を上回った。公示価格の全国トップ10では、好調さを維持した東京都内の地点がランキングを独占した。その結果は以下の通り。

【順位 地点 公示価格(2017)/平方メートル 公示価格(2016)/平方メートル 変動率(%)】
10:千代田区大手町1丁目3番3外(東京サンケイビル)/2510万円/2350万円/6.8
10:千代田区丸の内3丁目2番外(新東京ビルヂング)/2510万円/2350万円/6.8
9:中央区銀座4丁目103番1外(塚本素山ビルディング)/2580万円/2110万円/22.3
8:千代田区大手町2丁目4番2外(新大手町ビルヂング)/2680万円/2510万円/6.8
7:新宿区新宿3丁目30番13外/2950万円/2550万円/15.7
6:新宿区新宿3丁目807番1/3020万円/2630万円/14.8
5:千代田区丸の内2丁目2番1外(丸の内ビルディング)/3490万円/3280万円/6.4
4:中央区銀座7丁目1番2外(ZARA)/3660万円/2880万円/27.1
3:中央区銀座2丁目2番19外(明治屋銀座ビル)/3700万円/2870万円/28.9
2:中央区銀座5丁目103番16(対鶴館ビル)/4300万円/調査対象外のためデータなし
1:中央区銀座4丁目2番4(山野楽器銀座本店)/ 5050万円/4010万円/25.9

中央区銀座4丁目2番4の山野楽器銀座本店の地点は、定位置ともいえるトップの座を守った。1平方メートル当たりの価格もさることながら、注目すべきはその変動率だろう。

トップ10のうち6地点が2ケタ以上の上昇率となった。このうち、3位の明治屋銀座ビル、4位のZARAの両地点の上昇率は、全国の商業地の変動率ランキングでも、それぞれ9位と10位に相当する高い伸びとなった。

銀座では、みゆき通り周辺で再開発事業が進み、店舗のリニューアルも相次ぎ、店舗賃料の上昇傾向が続いていることから、地価が押し上げられているという。

地方間の格差が拡大

商業地の公示価格トップ10を独占した東京圏の商業地の地価は、4年連続で前年の上昇幅を上回る結果となった。さらに、東京都心部(千代田、中央、港、新宿、文京、台東、渋谷、豊島各区)の商業地は、6.8%の上昇率となり、東京圏で最も高い伸び率となった。

地方の商業圏に目を移すと、大阪圏の4.1%の上昇のほか、地方圏(札幌市・仙台市・広島市・福岡市)が6.9%の上昇率を記録し、東京圏を上回る勢いをみせた。

一方、地方圏の4市を除く地方全体では、変動率がマイナス0.9%と16年(マイナス1.3%)から下げ幅が縮小したものの、依然として下落傾向から抜け出せていないのが現状だ。

不動産市況の盛り上がりが、東京圏から、大阪圏、名古屋圏、さらには地方圏へ波及しているのが確認できたが、それ以外の地方への影響は限定で、地方間での格差が如実になりつつある。さらに、都心部の商業地不動産が堅調に推移するなか、都市と地方の格差は広まる一方だ。

山野楽器銀座本の地価が5050万円/平方メートルに対し、県庁所在地の商業地の地価が最も低かった鳥取市は13万7000円/平方メートルで、2つの地点には368倍の開きがある。12年は東京都の商業地の最高価格が2700万円/平方メートルに対し、鳥取市は17万7000円/平方メートルで、両者の開きは152倍ほどだったが、わずか5年の間に、東京都心で商業地の不動産が活況を見せるなか、地方の商業地の公示価格の下落は歯止めがかからず、その格差はさらに拡大している状況だ。

2020年にオリンピックを控える東京と、多くの外国人観光客が訪れる地方の主要都市の商業地の地価が上昇するなか、その効果が地価の下落が止まらない地方都市に波及するのか。あるいは、都市部の1人勝ちとなり、地方との格差がますます広がっていくのだろうか。(ZUU online 編集部)