米財務省通貨監督庁(OCC)が新たなFinTech企業による銀行業務許可書の申請に、「金融包括計画(FIP)」への順応を義務づける草案を発表した。

FinTechにたずさわる法的な環境整備を視野にいれた前進となるが、銀行業務への進出を目指すスタートアップにとってはクリアすべき大きな壁となりそうだ。

低所得層に対する融資活動差別防止法と同様の役割

22ページにわたる草案では、FinTech業務と通常の銀行業務における特質の差を配慮し、既存のCRAをそのまま適用するのではなく、FinTech向けの新たな規制システムを構築していく意向がうかがわれる。

基本的には金融機関による低所得層に対する融資活動差別を防止する目的で、1977年以降米国で銀行に義務づけられている「地域再投資法(CRA)」と同様の発想だ。

そのため実質的な提案はかなりハードルが高くなる。事業構成、コンプライアンス、リスク・マネージメント管理など、通常の銀行業務と同じ規制が課せられるほか、資本レベル、資産内容、流動性に基づいた「評定制度(CAMELS)」も適用される。

焦点が当たっているFIPに関しては、「目標、アプローチ、活動、指針」などをまとめ、申請の際に提出する義務が生じるようになる。業務許可取得後も自社の金融包括アプローチになんらかの変更が加えられる場合はOCCへの届け出が必要になるなど、FinTechをめぐる規制環境が一気に引きしめられる。

OCCはテクノロジー改革によって金融市場を向上させるうえで、公平性の確立が不可欠となる点を主張。またFinTechや新たな金融戦略の潜在的リスクが明確化されていない現在、 最低資本額の設定も必要だとの見解を示している。

こうした動きは消費者の安全を保護し、FinTech企業の質の向上に貢献すると期待できる反面、銀行業務を視野にいれているスタートアップに圧力をかける結果になると予想される。( FinTech online編集部

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