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今回も『日経マネー』2014年2月号の「初心者厳禁! 中・上級者向けの刺激的な運用アイデア19選:裏NISA」で紹介されたユニークな運用法を紹介していき、それを適宜改善した手法を提案していきます。

今回紹介する手法は、引用元記事の項目のまま書くと、以下の4つです。

・100万~200万円の元手で非課税枠を使い倒す
・元手10万円だけで100万円の非課税枠を連続短期決戦で使い切る
・VTなどの海外有名ETFだって日本からNISAで買える
・NISAでAppleやGoogleなど夢のある外国株を買う


100万~200万円の元手で非課税枠を使い倒す

NISAの非課税期間は5年間あるわけですが、その間中保有していると、相場が急落して含み益が無くなってしまう事があります。なので、ある程度利益が出たら確定させてしまう事が提案されています。
具体的には、年間100万円の非課税枠が5年あるわけなので、毎年100万円の非課税枠をめいいっぱい使い、ある程度の利益が出たら売ってしまう事を繰り返すということです。

ある程度利益が出たら確定させてしまうという方法については基本的には筆者も同意しますが、問題は「ある程度」がどれだけにするかという点です。

行動ファイナンス理論から見た投資に失敗しないための7つのチェックポイント【前編】で紹介したように、投資家が陥りやすい非合理的な行動の一つに、値上がり株を直ぐに売ってしまう「鏡映効果」があります。あまりに直ぐに利益を確定させてしまうと、その後に更に値上がりした時の利益が得られず、その分が「機械損失」になってしまうかもしれません。とは言え、ボラティリティが大きい銘柄の場合、利益が無くなってしまう事も同様に有りえます。

一番良いのは、値下がりの場合も値上がりの場合も売却する「利益率」を予め決めておき、それに達した場合は値上がりした場合も値下がりした場合も淡々と売却する事でしょう。
投資家を最も非合理的にさせるのは、冷静さを欠き感情的である心理状態と言っても良いので、5%なり10%なり含み益が出れば売却してしまう方が良いかもしれません。


元手10万円だけで100万円の非課税枠を連続短期決戦で使い切る

この手法も非課税枠をめいいっぱい使い切る手法ですが、こちらは10万円という少ない資金を使った1カ月程度の投資を10回行うものです。
資金が少なくても出来るというのが魅力的で、短期的に値上がりが見込めそうな銘柄を中心に短期で投資する方法が提案されています。

この手法は、かなりハイリスクですが、10万円という原資を元に小遣いの範囲を超えた利得を得る為には、大きなリスクを取る必要はあります。
とは言え、信用取引ほど大きなリスクではなく、全てを失ったとしても10万円なので、その意味では健全に投資を行う事が出来ると思います。

その意味で、資金が少ない投資家も余剰資金の範囲内で、ブルベア型のETFや新興企業株への短期投資を行う事で、ハイリスクハイリターンの投資を行うというのは、一つの手法として選択肢には入れても良いでしょう。


VTなどの海外有名ETFだって日本からNISAで買える

VT(ヴァンガード・トータル・ワールド・ストックETF)のような海外市場に上場するETFを購入出来る証券会社も存在するので、そうした銘柄をNISAで購入する事が提案されています。他にもSPDR MSCI全世界株式ETFやiシェアーズMSCIエマージェンシー・マーケット小型株ETFも紹介されています。

こうしたETFは安い信託報酬で世界中に投資する事が出来るので、手軽にグローバルマクロ投資も出来るという意味では筆者も悪くない選択肢だと思います。


NISAでAppleやGoogleなど夢のある外国株を買う

前節のように、NISAで外国株を買えるネット証券がある事を利用して、AppleやGoogleなど世界的企業の成長性に賭けて投資をする手法も提案されています。
但し、外国株の投資の場合は売買手数料だけでなく為替手数料がかかる上、NISA口座は確定申告が出来ない故に外国税額控除を利用出来ないなどのデメリットも指摘されています。

デメリットに関しては全く持ってその通りだと思いますし、夢のある銘柄に投資をするという事も悪くないとは思います。しかし、その対象としてAppleやGoogleを挙げるのは疑問を感じざるを得ません。

執筆時点(2014年3月10日)でAppleは時価総額世界1位、Googleは世界3位と名実ともに世界有数の企業であり、安定した投資を行う対象として選ぶのなら分かりますが、「大きな値上がりを狙う夢のある銘柄」としては相応しくないでしょう。

表題に合った銘柄は新技術を利用した新興企業などの銘柄が該当し、これらは当然ハイリスクになりますが、夢があるという点では、こうした銘柄の方が正しいでしょう。


改善案

今回紹介した4項目は、大きく内容を改善する点はありませんが、前節までで指摘した内容を踏まえて再整理すると、

・目標利益率を決めた上で100万円の非課税枠を目一杯使って投資する
・少ない資金を使い、ボラティリティが高い銘柄への短期投資を繰り返す
・海外のETFを使って手軽にグローバルマクロ投資をする
・将来性があると思える新興企業株に投資する

となるでしょう。

参考文献
萬真知子「初心者厳禁! 中・上級者向けの刺激的な運用アイデア19選:裏NISA」『日経マネー』2014年2月号

BY たけやん:経済学修士号取得後、株価推定事業・研究を行っている

photo credit: Nick-K (Nikos Koutoulas) via photopin cc

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