夜型勤務から朝型勤務へ

伊藤忠は、従業員の効果的な業務促進と健康管理のため、2013年10月から試験的に朝型勤務を始めました。具体的には、20時以降の残業を制限、22時以降の残業を禁止する他、8時以前の朝型勤務を促進する内容です。その結果、メリハリのある勤務ができる、子育てがしやすくなった等、従業員にとってもメリットが大きく、労使間の協力を得たため、2014年5月から本格的に朝型勤務を導入しています。なお、同社では今回の朝方勤務導入と一緒に朝時間帯に軽食を無料配布しています。この様な勤務体制を促進している企業は同社以外では極めて例が少ない様ですが、同社では大きなデメリットがなかったため、将来的に他の企業にも広がる可能性もあります。


労働時間削減なるか

今回の朝型勤務は単に残業時間を朝に持ってくるだけではなく、慢性的な残業ありきを見直す点もあります。これにより、朝型勤務導入以前より効率的な働き方ができる様になったと言われます。具体的には、20時以降の退社が全体の30%→7%に減っている他、電気使用量が昨年より6%も減っており、全体的な勤務時間減少が読み取れます。同社の時間外手当の支払い実績も5%減少(編集者注:同社では導入前も後もサービス残業を行っていないのは勿論、朝型残業にも深夜残業と同じ割り増し時間外手当を設定している)しています。また、懸案であった8時以前の出社も全体の20%→34%に増えているのに留まり、20時以降の減少ぶんより8時以前の増加ぶんの方が少なくなっています。なお、伊藤忠ではフレックスタイムを廃止した他、政府が促進する裁量労働制は導入しない方針ですが、担当者の話では、これらの労働システムは労働時間が長くなる危険性を秘めているからです。今回の伊藤忠の改革があったからなのか、過労の防止が実現するため、政府としても労働分野の改革の重要施策と位置づける様になりました。


経営陣も一新して再出発

伊藤忠の改革は積極的な海外投資や労働システムの改革だけではありません。ここ数ヶ月の間に経営陣も一新して再出発しています。伊藤忠には12人の取締役が存在しましたが、2014年4月には取締役が1名入れ替わった他、6月には1名の取締役に代わって新たに2人の取締役が就任したため、取締役の人数が13人に増加しました。また、役職の変更も頻繁に行われており、同社の新たなる体制が読み取れます。この様に経営陣を新しくすることにより、常に新鮮でクリーンな経営が保たれるため、会社に「しがらみ」が少なくなると言われます。以上のような取り組みにより、年間3000億円の売り上げを確保しています。

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