medium_2515941746-640x330


なぜ金融政策が日本経済を救うために必要なのか

2014年の首相演説で今年もアベノミクスは買いです、と安倍首相が自信満々に言っていましたが、この様な金融政策がなぜ今の日本に必要なのでしょうか。こういった財政出動は主に国債を発行して新たな借金をして公共投資等を増やす事で経済を活発化させようとする物ですが、すでに国の借金である国債の発行額は約1000兆円にも上り世界第大の借金国となってしまいました。さらに日銀は市中銀行が保有する国債を買い取り、市場にお金をジャブジャブと供給する異次元の量的緩和を行う事を決めました。なぜそんな事をするのかを知る事でこれから投資に興味を持っている方は現状の日本経済を理解する事で自分に合った投資が見つかるかもしれません。今日は現在行われている金融政策がなぜ必要なのかをご紹介していきたいと思います。


先進国で唯一のデフレ国家・日本

日本はバブル景気が崩壊してから現在に至るまでデフレ状態にあります。約20年近くもデフレに陥ってしまった先進国は世界を探してみても日本しかありません。リーマンショックを起こしたアメリカもデフレを阻止する為に基軸通貨国である事も顧みずにドルを刷りまくり、不良債権を無制限に買い取る事で流動性を確保して見事に復活を果たしました。アメリカのFRBバーナンキ議長はアメリカの中央銀行総裁という肩書だけでなく世界恐慌の著名な研究家でもありました。デフレに陥ると蟻地獄の様になかなか抜け出せない事を知っていたからです。

①バブル景気が残した負の遺産

デフレの原因となったバブル景気の崩壊は日本経済に致命的な傷跡を残しました。かつて日本は物価の高い国として有名でした。当時の政策金利(公定歩合)は4%程度もあり、預金金利も10年預ければ貯金が倍になるくらいの利率が付いていたのです。さらに行きすぎた不動産価格は日本全土を売ればアメリカ合衆国の土地が4個分買えるくらい高騰していました。狂乱の渦の中にいた人達はアメリカの不動産バブル同様に不動産価値は永遠に上がって行くものだと信じていたのです。日本は政治二流、経済一流と言われる様に、このバブル退治の方法が最悪でした。ブレーキを徐々に踏めば良かったのですが、不動産総量規制や公定歩合の急激な引き上げ等の急ブレーキにより景気は一気に奈落の底へ落ちて行ってしまったのです。株価や不動産価格の下落はそれらを担保として融資していた証券会社や銀行を蝕んで行きました。信用度の低い中小企業への貸し渋りが始まり、経済の血液であるお金を円滑に流す銀行が国債ばかりを買いあさりその責務を果たさなくなってしまったのです。そうした結果、需要が極度に落ち込んでしまい常に供給過剰な世の中を作ってしまったのです。

②日本経済の現状

デフレ経済が続いた20年の間にはITバブルやアメリカの不動産バブル等の好景気を日本も体験しているのです。しかしデフレ経済である日本国民はその恩恵を受けるばかりか、逆に所得は右肩下がりに落ちて行ってしまいました。便利な物が安く買える反面、企業の利益体質は悪化して私達の賃金をどんどん削って行きました。良くデフレスパイラルと言われる現象がこれに当たります。日本の企業は物を安く作る為に海外に工場を作り日本独自の技術を海外流出させてしまいました。技術だけでなく会社を支えているキーパーソンも海外企業に引き抜かれメイドインジャパンの魅力はどんどん薄れていってしまったのです。現在円高による輸出企業の体力低下が指摘されていますが、円高が是正されたとしても韓国や台湾、中国等の企業に後れを取っており、名実ともに完全に抜き去られてしまったのです。デフレ経済の中で育った企業経営者の保守的な精神は、新しい物にチャレンジする事に臆病になり過ぎてビジネスチャンスが見えなくなってしまっているのかもしれません。これだけゼロ金利政策により貸出金利を低く抑えても誰も借りて設備投資をしようともしません。銀行の貸し出しが伸びているのは個人部門のみで企業向けの貸出残高は殆ど横ばいとなっています。私達は今、こういった閉塞感のある経済環境に置かれているのです。

③欧米の金融政策との比較

アベノミクスはアメリカのバーナンキ議長が金融危機で取った手法をお手本にしていると言われています。アベノミクスが実行され始めてからマーケットの反応はとたんに掌を返したように上昇相場となりました。このように金融政策により一気に景況感が変わると言っても過言でもないのですが、例えばこの金融政策をアメリカと比較してみると中央銀行の位置づけが違う事がひとつ大きな点です。アメリカの中央銀行であるFRBは雇用を安定的に保っていく金融政策の実行が求められており、現在では具体的な数値目標が定められています。それに対して日銀は強い独立性が保たれており特に明確なミッションを背負わされていません。この強い独立性は世界的にも稀で、安倍首相は今後FRBの様に経済環境に対してある一定の責任を持った運営をするよう、日銀法の改正にまで言及を始めています。


金融政策の行く末

安倍首相がデフレの脱却を最優先とする事を明言していますが、金融政策だけでは日本経済は復活できませんし財政出動には限りがあります。また、こういった財政出動のツケを消費税の増税等で回収されるとまた景気の腰が折られてしまいデフレに逆戻りと言ったことにもなりません。金融政策はエンジンを始動させる為のセルモーターにすぎません。今後企業活動を活発化していく為にはそれだけではなく、環境にやさしい技術に挑戦する企業を優遇したり、競争を活発化させたり等の規制緩和をセットで実施していかなければなりません。銀行も粛々と国債を買って運用するのではなく、そういった企業に必要な資金を提供する様な経営をする必要があるのです。現在実施されているアベノミクスがマネーゲームに使われて終わる事が無い様に政府は矢継ぎ早に政策を出して行ってほしいですね。

photo credit: Freakland - フリークランド via photopin cc