商売人として、「お金にシビアだ」と言われるのは誇り。武勲と言ってもいい。これは決してお金をなかなか払わなかったり値引きを無理強いしたりするのとは違うものです。

シビアだというのは、支払いがきちっとしているということ。つまり、この金額を払うと言ったらその金額を払う。いついつまでに払うと言ったらその期日を守る。もちろん、それ以前の価格交渉はキッチリやる。どんなに厳しい交渉をしたとしても、払うものは払う。

それこそが「お金にシビア」な姿勢の本当の意味で、ムダな出費をしないという意味では「ケチ」と同義語と言ってもいいのかもしれません。

支払い期日、支払い条件、支払い方法を事前に明確に決めるのはビジネスの鉄則ですから、ここを曖昧にするようではダメなのです。

(本記事は、岩松正記氏の著『 経営のやってはいけない! 』株式会社クロスメディア・パブリッシング (2016/11/14) の中から一部を抜粋・編集しています)

経営のやってはいけない!
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonへ飛びます)

お金に「シビア」なのと 「せこい」のは違う

でも、「せこい」のはちょっと違います。取引相手を不愉快にするだけで、百害あって一理無し。たとえば支払いの段階になって「あと1か月待って欲しい」とか期日を先延ばしにしてみたり、同じく支払う段階になって一旦決まった値段を「もうちょっとまけてくれない?」と言ってみたり。相手はもちろん言うだけタダなので気軽な気持ちで言ってくるかもしれませんが、こういうやり方をするような相手は信用できない。真の信頼関係は築けません。

相手がお金にシビアなのかセコイだけなのか、その見極め時点は、実は取引開始時にあります。一番初めに取引を始めるとき、最初から値切ってくる相手は要注意です。とにかく値切ることだけが生き甲斐で、見積もり通りの価格では決して納得せず、1円でも2円でも価格を引き下げようとする。そういう姿勢の人とは、そのあと長く付き合うことになっても、間違いなく価格で苦労することになります。

かつて「商談のプロ」と呼ばれる伝説の営業マンの商談に同席したことがありますが、その人は最初から見積もりを高めにして持って行き、商談時には必ず値引いていました。

先方が値引きを要求してくれば「これが限界です」と困ったような演技をしつつ値引きをし、何も言って来なくても最後に「これは気持ちです」と言って値引きをしていました。

これは相手に優越感を持たせるための作戦だったそうですが、これは逆に値引きをする方がシビアだと言えます。

こういうやり方も、ビジネス上はよくある話。この後の支払い関係さえキッチリしていれば、正当な取引の仕方だと言えると思うのですが、いかがでしょうか?

「利は元にあり」を忘れない

私がかつて仕えたベンチャー企業の社長の口癖は「利は元(もと)にあり」でした。

企業の目的は利益を上げることだが、利益は売上を上げるだけで稼げるものではない。

元(もと)、すなわち購買(仕入れ)をしっかりとやることこそ、利益を上げるためには必要なのだ、と事あるごとに口酸っぱく言われたものでした。
その社長が必ず実践していたのが、相見積もりを取ること。どんなものを購入する場合でも、必ず相見積もりを取って安い方を購入しなければならない。稟議書には見積書を2通以上付けなければなりませんでした。確かに面倒でしたが、そこまで徹底する姿勢はたいしたものだと感心した記憶があります。

「利は元にあり」という考え方は実に合理的です。会計的に見た場合、例えば売上100で経費70、その結果利益30という単純なモデルを考えてみましょう。この時、利益を40にするには(1)売上を10増やす、という方法の他、(2)経費を10減らす、というやり方でも、結果は同じになります。

同じ結果であれば、次に考えるのは、どちらの方がより簡単に実施できるかということ。

売上は相手からお金をもらう行為、仕入れはこちらがお金を払う行為です。ズルイ言い方ですが、お金を払う側が強いのは世の常ですから、出て行くお金を管理する方が楽なのは明白。だからといって、これは支払いを渋ったり仕入先を叩いたりするということではなく、「出て行くお金を意識しろ」という意味です。

創業期などこちらの立場が弱い時こそ、本来は価格交渉すべきなのですが、そんなことはできないものとハナから諦めている人が非常に多いのが本当に残念です。

利益を出すためであれば、本気で交渉できるはず。真剣な姿勢は必ず相手に伝わります。

価格交渉は、強い立場の者が弱い立場の者を脅して行うものではありません。しかし、残念ながら実際には、そういうことを平気で行って取引業者を大切にしないところほど、業容を拡大しているということも事実。こればかりは経営者の意識レベルの問題なので、嫌われたり恨みを買うことのない程度に、と言わざるを得ません。

しかしそれでも、適度な交渉は商売に不可欠。「恥ずかしくて言えない」なんて、見栄を張ってはいけません。恥ずかしがらず遠慮せず、それでいて真摯に、価格交渉は実行していかなくてはなりません。

条件の見直しは他人のせいにする

取引の条件というのは、一度決まるとなかなか変えられないもの。これは心理学的にも「アンカリング効果」と呼ばれ、船が停泊のために下ろす錨(アンカー)のように、最初に示した条件や一旦決めた条件は、容易には変更できないのが、人間の心理なのだそうです。

こちらの立場が弱い状態、たとえばこちらが取引をお願いして納品して取引が始まったというような場合を考えます。決済条件が締め日後翌々月末日に支払いを受けるというような条件だと、納品後、2カ月から2カ月半近く入金が無いことになりますから、その間の資金繰りは当然苦しくなる。もし、締め日後翌月末日の支払いという条件であれば、資金の寝る期間が1カ月縮まるのですから、前の条件よりも資金繰りが良くなります。

では、どうやったらそういう条件を改善できるのか。こればかりは先方にお願いするしかありません。もしそれが叶わない場合、はどうするか。ウマイ交渉をやっているところを見ると、「支払いの条件を延ばす」ことを行っています。入金まで2カ月かかるのであれば、支払いも同様に末締めの翌々月以降の支払いにする。入金したらその資金で支払うという状態に持って行くのが理想です。

ただ、こちらの支払い先が給料とか外注費、人工代であると、翌々月払いでは厳しい。

というか、そういう条件ではこちらとは取引してくれないでしょう。

考えてみてください。今月働いてその給料なり賃金なりが「入金にならないから翌々月に支払う」と言われたらどうでしょう。翌月1カ月間は無給状態になるわけです。

そもそも入金の条件が悪いのがその原因なのですが、さすがに「末締め翌月払いの会社としか取引しません」などということは、こちらの立場が弱かったらできるわけがありません。こちらはむしろお願いして取引してもらっているのであればそんなことはできない。それならば、支払いの条件を変えるしかありません。具体的にはどうするか。

たとえば「顧問税理士の指導で支払い時期が翌月末から翌々月末になった」といった具合に、他人のせいにするのが言いやすい言い訳です。こちらとしては泣く泣く指導によって支払いサイトを延ばした、というようにするのです。

ある会社は商談の際、「当局の指導があったから……」とか「顧問税理士の指導により……」と必ず言うそうです。自社の都合でというと角が立ちますから、そこはものの言い方ではないでしょうか。

岩松正記(いわまつ・まさき)
政府系起業支援団体の第1期アドバイザーとして指名数東北北海道No.1(全国3位・起業相談部門)となった税理士。山一證券では同期トップクラスの営業成績。地元有名企業のマーケティング、ベンチャー企業の上場担当役員等10年間に転職4回と無一文を経験後に独立。開業5年で102件関与 と業界平均の3倍を達成。

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