最近耳にする機会が増えた「オムニチャネル」という言葉。「なにか便利になるのかな?」といった認識をお持ちの方が多いかもしれません。オムニチャネルは、企業が顧客をより深くし、その顧客に最適なサービスや体験を提供できる手段といえるでしょう。これからも進化していくと思われるオムニチャネルについて理解を深めてみましょう。

オムニチャネルとは

Omnichannel
(写真=Montri Nipitvittaya/Shutterstock.com)

「オムニチャネル」とは、英語の接頭辞である「omni-」(オムニ:あらゆる~)と「channel」(チャネル:販売経路)を組み合わせた言葉です。店舗、イベント、通販サイト、カタログ、広告、SNS、スマートフォンアプリなどのあらゆるチャネルを連携させ、顧客に統合されたサービスやエクスペリエンス(体験)を提供する戦略です。各チャネルの顧客情報や在庫情報をシームレスに活用し、各チャネルが一体となり、個々の顧客に適したアプローチを行うことで、売上を上げるだけではなく、顧客満足度を向上させることを目指しています。

それでは、オムニに似ている“マルチ”のマルチチャネルとの違いは何になるのでしょうか。マルチチャネルは、複数のチャネルを用意して、顧客の購買機会を増やす戦略です。顧客へのアプローチはそれぞれ別々に機能し、チャネル間の連携はありません。一方、オムニチャネルでは、あらゆるチャネルが統合されて顧客へのアプローチを行うため、より顧客のニーズに即した対応ができるようになります。

オムニチャネルの例をいくつかあげてみます。

・ 店舗の商品が在庫切れの場合、商品を直接自宅へ発送してくれる
・ ネット通販で購入した商品について、実店舗で支払いや受け取りができる
・ ネット通販の購買履歴などの情報から、来店時にその顧客の好みにあった商品を紹介

このようにチャネルの垣根を取り払ったサービスが提供されるのです。

オムニチャネルの今

スマートフォンの普及によって、店舗に出かけて実際の商品をチェックし、その後ネット検索し、ネットで購入するという「ショールーミング」という購買行動も広まってきました。この購買の流れから、ある家電量販店では、チェックした商品を自社のネット通販サイトで購入しやすいように、商品のバーコードを読み取れるPOPを設置したりしています。オムニチャネル化により、実際の店舗で商品を見て、その後のネットによる購買行動につながりやすくなったのではないでしょうか。

コンビニエンスストア、総合スーパー、百貨店などを傘下にもつ、大手国内総合流通グループは、オムニチャネル戦略を掲げたネット通販サイトをスタートさせました。総合スーパーや百貨店など自社グループのさまざまな店舗の商品をネットで購入し、宅配だけでなく近くのコンビニエンスストアなどの店舗にて無料で受け取ることができるサービスです。このサービスもオムニチャネルの一部を実現させたものです。

このように、オムニチャネル戦略を推進している企業でも、店舗と通販サイトの統合など、オムニチャネルの考えを部分的に導入したものにとどまっています。実際はさまざまなチャネルを統合した顧客アプローチには至っていないのが現状です。

これからのオムニチャネル

企業がオムニチャネルを実現するには、「顧客体験」と「顧客ライフサイクル」の構築が重要となるでしょう。

顧客体験とは、カスタマー・エクスペリエンスともいわれ、顧客が商品やサービスの購入前後や利用時に感じる付加価値です。顧客ライフサイクルとは、商品やサービスの検討から始まり、購入、利用や消費、サポート、そしてまた検討するという、一連の流れの繰り返しです。

オムニチャネルに適した顧客ライフサイクルを構築するには、あらゆるチャネルを駆使して、ライフサイクルの各ステージを通して一貫した顧客体験を提供することが鍵になります。顧客は、オムニチャネルによる優れた顧客体験を得ることで、マルチチャネルでは得られなかった満足を得ることになるでしょう。

オムニチャネルについては、先進的な企業が出てきており、これからもさまざまな顧客体験が生み出されていくことでしょう。これからの時代、一貫性のある優れた顧客体験を生み出した企業がビジネスをリードしていくことになりそうです。(提供: お金のキャンパス

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