PR会社の定義

「PR会社」という企業をご存知でしょうか?一方、広告代理店というのは聞きなれていると思います。広告代理店はクライアントに対し、効果的な広告手法の提案や様々なメディアに広告を、そのクライアントの代わり(代理)に展開する企業です。代理店の収益は主に広告の手数料になります。クライアントの担当は宣伝部となります。これに対し、PR会社は、クライアントに対し、効果的な広報の仕方、つまりPR手法の提案を行う企業です。クライアントが、新聞社やTVなどのメディアにプレスリリース送ったりする際に、効果的な方法をアドバイスしたり、代行したりする企業です。このため、クライアント側の担当は、広報部になります。収益源は、主にコンサルティング費となりますが、ほかにもいろいろな形態での収益があるようです。今、このPR企業が注目を集めています。この中でも急成長しているのが、国内独立系最大のPR会社といわれるベクトルです。そこで今回はベクトルの経営戦略を見ていきます。


PR業の市場規模と現状

まずは、PR業の現状をみていきましょう。公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会によると、「PR」とはパブリックリレーションズ:Public Relationsのことで、広報に近い意味だと定義しています。同協会が会員企業166社、非会員企業36社の計202社を対象に行ったアンケート調査では、2012年度はPR専業企業46社の平均売上高は9億3200万円、これに対し2013年度は平均で10億8000万円を見込んでおり、16%の伸びを予想しています。景気回復を織り込んだ予想結果といえそうです。2012年度の市場規模はPR業全体で901億円と推計しています。推計市場規模は、2008年度は741億円、2010年度は793億円でした。このように順調に市場は拡大しています。


ベクトルの経営戦略とは

ベクトルは同社と傘下企業からなるグループを構成しています。このベクトルグループは、PR業務を中心としたマーケティング企業グループです。グループ傘下のアンティル、プラチナム、イニシャル、シグナル、PRTIMESの各事業会社により戦略PR、インバウンドマーケティング、ソーシャルメディアPRなど、各社の専門領域を活かして世の中にモノを広めるコミュニケーションサービスを提供しています。海外拠点は、上海、北京、香港があり邦人企業のアジア進出のPR・マーケティングをはじめグローバルなサポートも行っています。

ベクトルが2014年4月に発表した2014年2月期の決算では、売上高は前年比26.5%増の64億6100円、営業利益は同26%増の9億800万円でした。また、経常利益は同28.7%増の9億900万円、純利益は同38.5%増の5億1000万円を計上しています。このように、ベクトルは広告費や宣伝費が減少する中において、売上高は年率15~20%程度の成長を続けています。

同社は、企業の「戦略PR」業に特化した国内ではほとんどの最初の企業だと言っていいでしょう。「戦略PR」の対象予算は同じ広報でも、広告宣伝費となるため一般的な広報予算に比べて対象予算が数億~数百億と大きいのです。同社はここに目を付けました。また、特徴的なのは、独自の社員教育システムを導入していることです。自社案件のみならず、他社や海外の成功案件までデータベース化し、社員が勉強できるシステム構築しており、社員は過去のケーススタディでパターンを学べるようになっています。顧客開拓から戦略の提案まで社員一人一人の裁量に任せられているようで、社員のモチベーションも非常に高いようです。