投資信託の購入を検討するときに、まず見てしまうのが「基準価額」だろう。投資信託の価格を表すものだが、投資対象が同じ商品であっても基準価額には差がでる。1万2,000円のファンドと、1万8,000円のファンドでは、一見高い方が運用成績もよさそうに見えてしまうのだが、基準価額と運用成績は必ずしも比例するわけではない。

投資信託の基準価額は、どのようなメカニズムで算出されて、どのような意味を持つのか。また、基準価額と運用成績の関係について考えてみよう。

基準価額とは ?

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(写真=bluebay/Shutterstock.com)

そもそも基準価額とは何か。一言で説明すると、個々のファンドの純資産総額をそのファンドの総口数で割った金額だ。

個々のファンドが投資している株式や債券などの組入資産を「時価評価」した金額に、それらの資産が生みだした利息や分配金などの収入を加える。その数字から運用のための手数料など諸費用を差し引いた金額を算出する。これが「純資産総額」であり、いわば個々の投資信託の規模を示すものだ。

つまり「組入資産の時価に利息や分配金を加え、運用コストを引いた総資産の一口当たりの金額」が基準価額というわけだ。一般的に、運用会社は1日1回、東京株式市場が閉じる15時以降に日々の基準価額を公表する。組入資産が海外資産の場合、基準価額の算定基準が前日の値になるなど、一定のタイムラグを伴う投資信託も存在する。

基準価額は、組入資産の価格変動、組入資産からの収入、分配金の支払い、運用手数料の支払いなどによって変化する。特に分配金は純資産から支払われているため、分配金を支払った直後は基準価額が下落することには注意が必要だ。

基準価額と運用成績

運用成績を考える際に、基準価額だけを見ていると、本質を誤る場合がある。ふたつの視点からみていこう。
ひとつめとして、ファンドの設定タイミングだ。たとえ同じ資産に、同じような手法で投資するとしても、ファンドを設定したタイミングで基準価額に差が生まれることには注意が必要だ。通常、投資信託の基準価額は、1万円を基準として設定される。設定時の株価水準や、その後の追加投資などのタイミングによって基準価額も変化していくということである。

ふたつめとして分配金の支払いだ。前述のように分配金を支払うたびに基準価額は下落する。日本は毎月分配型の投資信託が多く、そうした投資信託の場合、基本的には毎月、分配金の支払いがあるため、組入資産価格の騰落状況によって異なるケースはあるものの、徐々に基準価額は下がっていく傾向がある。だからといって運用成績が悪いとは言い切れない。基準価額の下落分以上に分配金を受け取っていれば、通算の運用はトータルではプラスといえる。

組入資産からの利息や配当、投資信託が支払う分配金の多寡によっても、基準価額は異なってくる。また、信託報酬といった「運用に係る手数料」によっても異なる。単純な比較はできないということだ。いずれにしても、基準価額だけでは運用成績の良し悪し、あるいはこれまでどの程度の収益を上げてきたのか、その「レコード (運用実績) 」を知ることは難しい。

基準価額ではなく「トータルリターン」で判断する

では、どんな数字を見れば投資信託の運用成績の良し悪しを測ることができるのだろうか。結論から言うと「トータルリターン」というデータを見るのが分かりやすい。トータルリターンとは「投資信託を購入した時から現在に至るまでの受取分配金や換金・追加買付などを含めた全体の損益」のことだ。
平成26年12月1日以後に買い付けた投資信託に関しては、年に1回以上、トータルリターンを通知する「トータルリターン通知制度」が導入されている。それ以外の投資信託においても、販売会社や金融機関によっては各ファンドのトータルリターンを確認できる。

「担当者に勧められたから」や分配金の多寡という理由だけではなく、運用成績を加味して投資ファンドを選定したいところだ。(提供: 大和ネクスト銀行

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