不動産投資において、分散投資をイメージして、日本以外の不動産市場に注目する投資家も多いのではないだろうか。そのような中、アジア圏、特にASEAN諸国の不動産市場が注目されている。

ASEAN諸国の経済発展

(写真=TORWAISTUDIO/Shutterstock.com)
(写真=TORWAISTUDIO/Shutterstock.com)

ASEANとは「東南アジア諸国連合」の通称だ。1967年の発足以降、10ヵ国が加入する東南アジアの経済連合だ。2014年の10ヵ国の人口を合計すると約6億2,000万人におよび、EU(欧州連合)における約5億人よりも多く、日本の約5倍の人口規模を有する。

ASEANに加入している国はインドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、ベトナム、ミャンマー、ラオス、カンボジアである。

ASEAN諸国に出張したビジネスマンからは、「まるで高度経済成長期の日本を見るようだった」「現地を歩いていると消費の力強さが感じられた」という声を聞くことが多い。第二次世界大戦までは欧州諸国の植民地であったことなどにより経済発展のスピードは遅かったものの、近年のインフラ整備による投資熱の高まりで、不動産価格も上昇傾向にある。

ASEAN諸国に不動産投資を行うメリット

不動産投資に限らず、ASEAN諸国に投資する大きな理由として、高い経済成長率が挙げられる。2016年1月に外務省が発表した「目で見るASEAN -ASEAN経済統計基礎資料-」によると、2013年のASEAN各国の実質GDP成長率は、マイナス成長に陥ったブルネイを除いて大方4〜8%のレンジに収まっている。日本が1%ほど、アメリカが2%ほどの成長率であることを考えると、相対的に高い経済成長率と言える。

ASEAN各国の高い経済成長率を導く大きな要因のひとつで人口動態が挙げられる。前述のように、そもそも日本の人口の5倍以上はある巨大な経済圏だ。さらに、日本貿易振興機構ジェトロのエリアレポート『世界 人口ボーナス期で見る有望市場は』によると、ASEAN全体の人口ボーナス期は2041年まで続き、中国よりも長期に継続するという。

人口ボーナス期とは、生産年齢人口(15~64歳)が年少人口(0~14歳)と老年人口(65歳以上)の合計人口より2倍以上ある状態を指す。他国を見ても、シンガポールとタイを除くASEAN加盟国はこれから人口ボーナス期を迎える。インドネシアは2044年、マレーシアは2050年、ミャンマーは2053年、フィリピンは2062年まで継続すると試算されている。

人口ボーナス期を迎えるということは、今よりも労働人口(生産年齢人口)が増えるということだ。労働人口が増えるということは、日本の高度経済成長期のように、所得が増加し、多くの中間層が生まれ、消費が活発になることが予想される。それに伴い、株価や不動産価格といったリスク資産価格の上昇も期待できるのだ。

ASEAN諸国の持つリスクを認識する

ASEAN諸国へ不動産投資をする上で、リスクも認識しておく必要もある。一般的に、不動産投資のリスクとして価格変動リスク(購入当時より、価格が低下する可能性がある)、空室リスク(空室が発生すると、安定した家賃収入を得ることができない)、流動性リスク(いつでも、不動産を現金化できない)などが挙げられる。ASEAN諸国への不動産投資となると、上記に加えて、以下のリスクが挙げられる。

1. 購入が規制されている場合がある
不動産を購入できるかどうかという問題がある。国によっては外国人の土地や建物の所有権を認めていない場合もある。そのため、まずは投資先に不動産に関する規制がないか確認する必要がある。

2. 貸出金利が高くなりやすい傾向がある
国内の不動産を購入する際に比べて、一般的にローンの貸出金利が高くなる傾向にある。

3. 為替リスクがある
外貨建て資産であるため、為替リスクが伴う。ただ、これはメリットと表裏一体の関係にあり、一概にデメリットとは言い切れないだろう。また、取引量が少ない通貨ほど流動性リスクが高まることにも注意が必要だ。

4. 情報を入手しづらい
海外不動産という特性上、日本と比較するとどうしても情報を入手しづらくなる。不動産登記など権利関係や情報に関する法整備がされていなければ、正確な情報を元に不動産投資を行うことができない可能性がある。

5. 物件管理
時差や物理的距離、言葉の壁などがあるため、日本国内の物件に比べて、管理が難しいといえる。

これらをしっかりと把握し、ASEAN各国の不動産へ投資することが必要になってくる。

ASEAN加盟国の中でも、一人あたりGDPが日本を超える国がある

ASEANといっても国によって経済状況は大きく異なる。例えば、前述の外務省レポートによると、一人あたりGDP(2014年)は、最も高いシンガポールが56,287米ドルに対し、最も低いカンボジアは1,090米ドルと、域内で最大50倍以上の差がある。事実、シンガポールの一人あたりGDPは日本(36,194米ドル)を超える水準にあり、シンガポールを「発展途上のASEAN加盟国」と位置づけるのは、現状ではそぐわないと言えるだろう。

ASEANの面積は433万平方キロメートルと日本(約38万平方キロメートル)の約11倍だ。「ASEANへ不動産投資」と言っても、どの国の、どの都市の、どんな物件に投資するかで投資内容は大きく異なる。またASEANは、物理的にも距離がある地域なので、信用できるパートナー(不動産業者等)を見つけることも不動産投資を成功させる大きな鍵になるだろう。

(提供: みんなの投資online

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