はじめに
日本国内では日本人人口が減少する一方で外国人の人口と世帯数が急増している。2016年の一年間に日本人は全国で▲31万人減少したが、外国人は+15万人増加し、外国人需要は国内不動産市場にとって重要な分野となりつつある。本稿では、国内の外国人による不動産需要を考える上での参考となるよう、外国人人口に関する基本的項目を全国と主要都市、そして特に東京都区部に関して整理する。
外国人人口増加の概況
◆外国人労働者と留学生の増加
近年、日本で働く外国人労働者や日本への外国人留学生が急増している。厚生労働省によると、2016年に国内の外国人労働者数は108万4千人と初めて100万人を超え、前年からの増加は17万6千人(増加率は+19.4%)に達した(図表-1)。外国人留学生も大幅な増加が続いており、日本学生支援機構によると、2016年5月時点の留学生は23万9千人で、前年比+3万1千人(+14.8%)の増加だった(図表-2)。
◆外国人人口の増加と日本人人口の減少
外国人労働者や留学生の増加に伴い、国内の外国人人口は急増し、日本人人口が減少する中で、外国人人口の存在感が高まっている。
住民基本台帳に基づく人口によると、2016年の一年間に総人口は▲16万人の減少で1億2,791万人となった。このうち、日本人が▲31万人減(▲0.2%減、1億2,558万人)の一方、外国人は+15万人増(+6.9%増、232万人)となり(1)、日本人人口の減少の約半分を補った(図表-3)。
世帯数に関しては、日本人のみの世帯も増加が続いているが(前年比+0.73%)、「外国人を含む世帯」(外国人のみの世帯と日本人と外国人の複数国籍世帯の合計をこのように呼ぶこととする、以下同じ)の増加率は前年比+7.8%増と著しい増加となった(図表-4)。
短期滞在者を含めた国内に在留する外国人数(総在留外国人数)は、2016年末に291万人に達し(2)、前年比で+8.4%の増加だった。2008年のリーマンショック以降、国内の外国人人口は減少が進み(3)、2011年末には208万人となったがその後増加に転じ、2008年末時点と比べ、現在(2016年末)の外国人人口は+40.2%の大幅な増加となっている(図表-5)。
総務省の「人口推計」によると、近年、総人口は減少を続けているが、2013年以降、前年比減少幅は▲24万人から▲16万人程度へと縮小傾向にある。これは、日本人人口の減少幅が拡大傾向にある一方、外国人人口が2013年から増加に転じたためである(図表-6)。
外国人人口の増加と日本人人口の減少の結果、総人口に占める外国人人口の比率は上昇が続いている。「人口推計」によると、外国人人口比率は2000年(10/1時点)の1.03%から2016年には1.51%に上昇しており(4)、現在の状況(日本人人口の減少と外国人人口の増加)が続くのであれば、今後、外国人人口の比率はさらに上昇していく(図表-7)。
外国人人口の増加に伴い、「外国人を含む世帯」数も急増している。「外国人を含む世帯」は2016年の一年間に+12.3万世帯の増加(+7.8%増)となり、総世帯増加数の23.4%を占めた。新規の住宅需要における外国人を含む世帯の比率が高まりつつあると考えられる(図表-8)。
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(1)本稿では外国人数の把握に、法務省「在留外国人統計(旧登録外国人統計)」、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」、総務省「人口推計」を利用しており、それぞれの数値に相違がある。在留外国人統計(旧登録外国人統計)は国内に在留する外国人の全体数について長期にデータが把握でき、調査時点が年末(半年に一度の調査)であり暦年での集計に利便性が高いが、地域別には全体数(総在留外国人数)が把握できないことや日本人との比較などに課題があること、総務省「人口推計」は総人口から日本人人口を減ずることで外国人人口を把握できるが調査が10月1日時点であることと地域別データが県別までであること、住民基本台帳に基づく人口は毎年1月1日の調査結果が市区町村別に詳細に公表され住民登録をしている全外国人人口や世帯数も把握できるが、外国人の把握が2013年7月以降でそれ以前からの外国人人口を把握できないなどの特徴と課題がある。
(+2)短期滞在者等を含むため、総在留外国人数(図表-5)は、住民基本台帳に基づく人口(図表-3)よりも多い。
(3)リーマンショック後に、欧米を中心とした海外企業(外資系金融機関など)がアジア拠点を東京から上海やシンガポール、香港などに移転させる動きが加速したことは、東京のAクラスオフィスビルのテナント構成や賃料水準、高級賃貸マンション市況にも大きな影響を与えてきた。
(4)図表-3にあるように、「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」では2017年1/1時点の外国人人口比率は1.82%だった。
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◆男女別・年齢別の外国人人口
最近の外国人人口の特徴のひとつに、過去のトレンドと異なり、男性人口の増加が女性人口の増加を上回っている点がある。図表-9と10にあるように、1980年からリーマンショックの2008年までは、ほとんどの年で女性の増加数が男性の増加数を上回ってきた。2013年以降に男性増加数が女性を上回る状況が続いた結果、外国人人口に占める女性比率は2012年の55.4%から2016年は53.0%へと低下している。
国内に滞在する外国人の年齢構成は日本人と大きく異なっている。外国人は20歳~39歳が特に多く、外国人人口の50.3%を占めている(日本人では21.9%)(図表-11)。
外国人の増加は20歳代で特に多く、2016年の一年間に20歳代の外国人人口は+7万人(+11.9%)の増加だった(図表-12)。一方、日本人の20歳代は▲16万6千人(▲1.3%減)の減少だったため20歳代人口に占める外国人人口の比率は5.1%に達している(2014年は3.8%)。今後も、若年層に占める外国人人口の比率は上昇が続くと考えられ、若年層の比率が高い賃貸住宅市場で、外国人の存在感が高まると思われる。
◆出身国籍・地域別の外国人人口
在留外国人統計によると、日本に居住・滞在する外国人(総在留外国人数)のうち、アジア地域出身者が全体の81.3%を占め、次いで南米の8.5%、北米の4.1%、ヨーロッパの3.9%と続いている。
出身国籍・地域別にみると、中国が全体の29.0%で最も多く、次いで韓国(5)、フィリピン、ベトナム、ブラジル、台湾、米国と続いている(図表-13)。
ほとんどの国籍・地域で外国人人口は増加しており、2016年の一年間に増加が顕著だったのが、中国、ベトナム、フィリピン、ネパール、インドネシア、台湾、ブラジルなどだった(6)(図表-14、15、16)。特に、ベトナム、ネパール、インドネシア、スリランカ、ミャンマー、カンボジアなどは、2016年の一年間の増加率が20%を上回る急増となっている。
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(5)韓国には特別永住者として在日韓国人の方々が含まれる。特別永住資格については、「出入国管理及び難民認定法(入管法)」の特例法である「
日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法
」を根拠としている。特別永住者については、國分行政書士事務所「
特別永住者とは
」、東洋経済記事「「特別永住制度」は見直すべき時期に来ている-法改正による「
新たな付与」は必要なのか
」などを参照のこと。
(+6)近年、日本での人口が減少した国・地域として、韓国・朝鮮、ブラジル、ペルーがあげられる。ともに2016年は増加に転じているが、リーマンショック直後の2008年末から2016年末までの減少幅は、ブラジル▲12万9千人、韓国・朝鮮▲3万人、ペルー▲1万2千人だった。
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◆在留資格別の外国人人口
外国人の在留資格で最も多いのが全体の1/4を占める永住者(25.0%)で、次いで短期滞在(17.6%)、特別永住者(7)(11.6%)、留学(9.5%)、技能実習(8)(7.8%)の順となっている(図表-17)。一方、2016年の増加数で多いのは、短期滞在、技能実習、留学、永住者、技術・人文知識・国際業務の順だった。
外国人の出身国籍・地域別に在留資格は大きく異なっている(図表-18)。中国、フィリピン、ブラジルは永住者の比率が最も高く、韓国は特別永住者が57.6%を占め、台湾や米国、タイは短期滞在が最も多い。ベトナムは技能実習が43.3%・留学が30.7%を占め、ネパールは留学比率が33.8%・家族滞在が25.7%と高く、インドネシアは技能実習と短期滞在が30.1%を占めていることが特徴だ。
在留資格別ごとに出身国籍・地域の多さをみると、総在留外国人全体の29.0%を占める中国が多くの在留資格で最も多くを占めているが、フィリピンは興行の39.4%を、ベトナムは技能実習の38.6%を、米国は公用の30%、宗教の38.1%、法律・会計業務の46.6%、教育の51.6%を、ネパールは技能の31.4%を占めるなど、国籍・地域別に特徴がみられる(図表-19)。
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(7)特別永住者資格については脚注5を参照のこと。なお、特別永住者の出身国籍・地域の98.9%が韓国、朝鮮である。
(8)ここでの技能実習は「技能実習1号イ」「技能実習1号ロ」「技能実習2号イ」「技能実習2号ロ」の合計。外国人技能実習制度に関しては公益財団法人 国際研修協力機構の「
外国人技能実習制度のあらまし(現行制度)
」等を参照のこと。
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都道府県別・主要都市別にみた外国人口
◆都道府県別の外国人人口
国内の外国人人口はどの都道府県に多く、どの都道府県で少ないのだろうか。
住民基本台帳に基づく人口によると、各県の総人口に占める外国人人口比率が最も高いのが東京都(3.6%)で、次いで愛知県(2.9%)、群馬県(2.4%)、大阪府(2.4%)、三重県(2.4%)、岐阜県(2.3%)と続いている(図表-20)。在留外国人統計によると、外国人人口(在留外国人数(9))が最も多いのは東京都の50.1万人(10)で全国の21.0%を占めている。
国内の外国人人口(在留外国人数)は2011年以降、着実に増加してきたが、県ごとの変動は大きく、2016年は前年比で+2.2%(秋田県)から+13.0%(佐賀県)までの差があった(11)(図表-21)。増加率を都道府県別にみると、関東に加え、北海道・東北の一部・北陸の一部・中国・四国・九州・沖縄などで全国平均を上回る高い増加率となる一方、関西の府県では全国平均を下回った。2016年の外国人人口増加数(+15万人)の25.3%が東京都に集中し、関東1都6県で55.4%を占めている(12)。
「外国人を含む世帯」の増加率は、すべての都道府県で日本人のみの世帯を大幅に上回っている。「外国人を含む世帯」の増加数は首都圏や愛知県、大阪府などの大都市圏で多く、増加率は佐賀県、北海道、宮崎県、香川県、沖縄県、福島県、宮城県、鹿児島県などの地方圏で高い(図表-21)。
2016年の一年間における、「外国人を含む世帯」の増加数が、世帯数全体の増加数に占める比率が最も高いのは山口県で67.1%だった。山口県では日本人のみの世帯の増加数が+444世帯だったのに対し、「外国人を含む世帯」の増加数は904世帯と、日本人のみの世帯の増加数を大幅に上回った(図表-22)。
なお、日本人のみの世帯数は高知県と秋田県では既に減少に転じている。日本人のみの世帯数の増加率が0.1%を下回る和歌山県や山口県でも、日本人のみの世帯数は遠からず減少に転じると考えられる(図表-23)。
都道府県ごとに外国人の出身国籍・地域に関してどのような相違があるのかをみていこう。
在留外国人統計によると、過半数の都道府県(34都道県)で最も人口が多い外国人(在留外国人)の出身国籍・地域は中国だった。関西地域を中心とする6府県では韓国が最も多く、静岡県や愛知県を含む東海地域などの6県ではブラジルからが、沖縄では米国からが最大の国籍・地域となっている(図表-25)。
2016年の一年間の増加数では、ベトナムが42道府県で第一位となっており、残りの5都県でも第二位を占めるなど、ベトナム国籍者の増加は全国に広がっている。すでにみたように、ベトナムからの在留資格のうち技能実習が43.3%を占めており、日本人の人手不足が技能実習への需要を高め、ベトナム人の在留を増加させたのではないかと思われる。
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(9)都道府県別には「在留外国人数」(2016年末に238万人)のみ公表されており、短期滞在や外交・公用を含む「総在留外国人数」(同291万人)が把握できない。このため、都道府県別の合計値は既述の全国値(総在留外国人数)と異なり、短期滞在等の比率の高い都道府県では差異が生じていると思われる。在留外国人数の総在留外国人数に占める比率を国籍・地域別にみると、ベトナムやブラジル、ネパール、ベルーなどでは98%を上回るが、米国やタイは6割を下回る。在留外国人統計の定義等については、法務省の「
利用上の注意
」を参照のこと。なお、「在留外国人数」は「在留カード」保有者の集計結果であり、(2009年に公布された新しい)在留管理制度については法務省「
新しい在留管理制度について
」を参照のこと。
(10)住民基本台帳に基づく人口によると、東京都の外国人人口は48.6万人である(図表-20)。
(11)2016年の一年間では全都道府県で外国人人口は増加したが、2015年は秋田県で減少し、2013年と2014年には15府県で減少がみられた。なお、県によっては外国人人口の増減は大きく、例えば静岡県は2013年に▲1,886人の減少(全国最大の減少)だったが、2016年は+3,755人の増加(全国10位の増加)となった。
(12)住民基本台帳に基づく人口によると、2016年の一年間に総人口が増加したのは8都県であったが、このうち、滋賀県と福岡県では日本人人口は減少しており、外国人人口の増加が県内人口の増加をもたらした。
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◆政令指定都市と東京都区部の外国人人口
次に、政令指定都市等(本稿では東京都区部を含む21都市)における外国人人口と世帯数の増加の現況を整理する。
政令指定都市等の21都市においても外国人人口は急増しているが、2016年の外国人人口の平均増加率は+6.6%増で、全国平均の+6.9%増を下回っている(図表-26)。21都市の中で、外国人人口の増加率が全国平均を上回ったのは9都市、下回ったのは12都市だった。増加率が全国平均を大きく上回ったのは札幌市や相模原市、さいたま市、都区部、川崎市などであり、特に低かったのが京都市や堺市、静岡市、神戸市、新(13),(14)。
政令指定都市等の外国人人口比率をみると、大阪市で4.7%と最も高く、次いで都区部の4.4%、名古屋市の3.2%、京都市の3.0%と続いている(図表-27)。外国人人口比率が低いのは、札幌市、新潟市、熊本市だった。
政令指定都市等で「外国人を含む世帯」の増加率が最も高いのは札幌市で、次いで相模原市、都区部だった(図表-28)。東京都区部では、2016年の一年間に、「外国人を含む世帯」は2万5千世帯の増加で、これは全国の増加数の20.3%に相当する。と同時に、都区部での日本人を含む総世帯増加数の30.5%を占めている(図表-29)。「外国人を含む世帯」の増加数が、市の世帯増加数に占める比率が最も高いのは、北九州市の48.4%だった。
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(13)熊本市での外国人人口の増加は2016年に+2.3%と小さかったが、2015年には+4.5%の増加であり、2016年の増加率の低さは熊本地震の影響と思われる。
(14)政令指定都市と都区部の21都市のうち、日本人人口が減少したのが9都市であった。このうち、日本人人口の減少幅が大きかったのが北九州市(▲5,588人減)、静岡市(▲3,407人減)、新潟市(▲2,994人減)、神戸市(▲2,992人減)など。なお、相模原市は日本人人口が▲727人減、外国人人口が+1,065人だったため、外国人人口の増加により市の総人口は増加となった。
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東京都区部の外国人口
◆全国市区町村別の外国人人口ランキング
在留外国人統計によると、20116年末時点で国内の外国人人口(在留外国人数)の17.8%が東京都区部に集まっている(15)。
全国の市区町村別のランキングをみても、外国人人口が最も多いのは東京都新宿区で、外国人の集積が多い20市区中、東京都の区は14を占めるなど、都区部ではそれぞれの区にも多くの外国人が在留し、その増加数も多い(図表-30)。以下では東京都区部での外国人人口の増加の状況をみていく。
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(15)住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数によると、国内外国人人口の21.5%が東京都区部に居住している(2017年1月1日時点)
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◆東京都区部外国人人口の概況
住民基本台帳に基づく人口によると、東京都には、2016年の一年間に全国で増加した外国人人口の1/4(25.3%)が、都区部には1/5(21.5%)が集中している。都区部でも日本人人口の増加が頭打ちになる中で、外国人人口の存在感が高まっている。
東京都区部における2016年の外国人人口の増加率は8.5%と日本人の0.7%を大きく上回っている。外国人人口は増加率だけでなく、一年間の増加数も+3万2千人へと拡大しており、総人口の増加数(+9万7千人)に占める外国人の比率は32.9%に達した。なお、日本人の増加の大部分(87.2%)が社会増(国内他地域からの人口純流入)によるもので、外国人の増加の大部分(99.8%)は海外からの転居などが占めている(図表-31)。
東京都の「外国人人口」によると、東日本大震災後に2年連続して外国人の人口は減少したが、その後、2013年(1/1時点)を底に急速に増加に転じている(図表-32)。2017年1月に外国人人口は41万1千人に達し、都区部総人口に占める比率も4.41%となった(2016年は4.11%)。2016年の一年間の外国人の増加数(+3.2万人増)は、1988年の+3.0万人の増加を上回り1980年以降で最大の増加となった(図表-33)。
◆東京都区部の出身国籍・地域別の外国人人口
東京都区部の外国人人口の出身国籍・地域では、中国出身が最も多く、全体の38.9%を占め、次いで韓国、ベトナム、フィリピン、ネパール、台湾の順となっている(図表-34、全国では中国の構成比は29.0%(図表-13))。
最近の都区部における外国人人口の国籍・地域別の推移・増減を示したのが図表-35から図表-39である。中国やベトナム、ネパール、ミャンマーなどの出身者が急増する一方、韓国・朝鮮や欧米諸国はリーマンショック以降の下落などからまだ本格的に回復したとはいえない状況にある。
◆東京都における在留資格別にみた外国人人口
在留外国人統計から、東京都内に在留する外国人の在留資格をみると(16)、都内では永住者(13万3千人)が最も多く、留学(10万人)、技術・人文知識・国際業務(6万1千人)が続いている。
東京都内では、外国人の職業(在留資格)に全国とは異なる偏りがみられる。例えば、法律・会計業務を在留資格とする外国人の93.9%が東京に集中し、報道(89.4%)や芸術(55.9%)、高度専門職(51.2%)でも、過半数が東京都内に在留している(図表-40)。一方、全国ベースで急増している項目に関しては、留学の36.1%、技術・人文知識・国際業務の38.1%が東京都に集まっているが、技能実習は2.5%とほとんど東京都内ではみられない。
都道府県別に出身国籍・地域別の在留資格別在留外国人数は開示されていないが、都内での構成比が高い法律・会計業務は、全国ベースでは米国からが46.6%と半数近くを占め、報道は中国が19.8%、韓国が19.4、米国が9.7%を占めている(図表-19を参照のこと)。
東京都内で増加している在留資格としては、留学、技術・人文知識・国際業務、永住者、家族滞在などで、増加率では高度専門職が突出している(図表-41)。
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(16)在留外国人統計では都道府県別しか在留資格別の外国人数を公表していないため(都区部データは未公表)。
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◆区別にみた外国人人口
東京都区別で最も外国人人口が多いのは新宿区(41,235人)で、次いで江戸川区、足立区、豊島区、江東区と続いている(図表-42、43)。ほとんどの区で外国人人口が急増している中で、さほど上昇率が高くないのが、港区や品川区、渋谷区、目黒区、千代田区などの都心部や以前から欧米系外国人が居住する高級住宅地区として知られた区である(図表-44)。
秋にリーマンショックが発生した2008年の1月と2017年とを比較すると、港区と渋谷区で当時より外国人人口は減少したままであり(港区で▲12.9%、渋谷区で▲13.4%)、千代田区や目黒区、品川区でも増加率は+3%未満と極端に低い状態にある(17)(都区部全体では同期間に+26.6%の増加)。
2008年からの増加率が最も高いのが豊島区(+70.0%)で、次いで中央区(+46.2%)、江東区(+44.8%)、中野区(+42.1%)と続いている(図表-45)。
2016年の一年間の都区部での外国人人口の増加数をみると、新宿区に加え、江戸川区、豊島区、板橋区、葛飾区で2千人を上回る増加があり、それ以外でも、江東区、大田区、世田谷区、中野区、杉並区、北区、練馬区、足立区も年間で1千人を上回る大幅な増加となっている(図表-46)。
総人口に占める外国人の人口比率は都区部全体で4.4%、最大の新宿区でも12.2%だが、その比率は上昇を続けている。2016年の各区の人口増加に占める外国人の比率は、都区部で32.9%に達し、足立区では70.6%、豊島区では68.7%、新宿区では61.7%だった。
では、各区で増加しているのはどの国・地域からの出身者なのだろうか。
はじめに区別に外国人の出身国籍・地域をみると、図表-48にあるように、全ての区で中国・台湾が最も多く、韓国・朝鮮は豊島区を除く全ての区で第二位となっている。他の主要国籍・地域では、ベトナムは豊島区(第二位)や新宿区・文京区・台東区・中野区・北区・荒川区(第三位)に集積し、フィリピンは墨田区・品川区・大田区・板橋区・練馬区・足立区・葛飾区(第三位)に、米国は千代田区・中央区・港区・目黒区・世田谷区・渋谷区(第三位)に、インドは江東区と江戸川区(第三位)に人口が集まっている(図表-48、49)。
人口増加数に関しても、ほとんどの区で中国・台湾が最も多いが、ベトナムが豊島区と荒川区で人口増加の第一位に入っており、インドは江東区では第二位・江戸川区で第三位に、フランスは目黒区では第二位・渋谷区で第三位に、ネパールが新宿区・大田区・杉並区で第二位に入っているなどの特徴がある(図表-48、50)。中国・台湾や韓国・朝鮮などと異なり、最近増加が顕著となった国籍・地域からの外国人は、特に急増の当初には、居住場所が特定の地区に集中することもあるようだ。
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(17)都区部の中でこれら5区のみが2017年1月の外国人数が1970年以降の外国人人口のピークに達していない。
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◆区別・年齢別の外国人人口
都区部の外国人の年齢別人口分布は、全国と大きな相違はない(図表-51、52、図表11)。
年齢別の外国人人口で、2016年の一年間に増加数が最も多かったのは20~24歳の+8,280人(+15.9%)で、次いで25~29歳の+6,731人(+10.8%)だった(図表-53)。同じ年齢層の日本人の増加をみると、20~24歳で+7,812人、25~29歳では▲1,730人の減少である(図表-54)。5歳階級別にみると、2016年の一年間に日本人人口は25歳から44歳までは減少しており、これらの年齢層では外国人の人口増加が、年齢別人口総数の減少幅を緩和させている。
区別に外国人の年齢別人口の総人口(日本人を含めた人口)に占める構成比をみると、多くの区で外国人の20歳代前半で総人口に対する比率が最も高い。新宿区では区内に居住する20~24歳人口の37.4%が外国人であり、同じく豊島区では33.3%と、1/3以上が外国人となっている(図表-55)。
◆外国人を含む世帯の増加
都区部でも「外国人を含む世帯」数の増加が続いている。2017年1月の「外国人を含む世帯」数は30万5千世帯で、都区部の総世帯数(499万7千世帯)の6.1%となった(図表-56)。「外国人を含む世帯」の増加率が一年間に8.9%に達する一方、日本人世帯数の増加が頭打ちとなっているため(日本人のみの世帯増加率は1.2%)、世帯の一年間の増加数に占める「外国人を含む世帯」が占める比率は上昇しており、2016年の一年間では30.5%と3割を上回った(図表-57)。
「外国人を含む世帯」の増加数が多い区は、新宿区、豊島区、板橋区、江戸川区などであり、8つの区で前年からの増加率が10%を上回っている(図表-58)。
豊島区では2016年の一年間に、日本人のみの世帯の増加数が+1,238世帯であったのに対し、「外国人を含む世帯」の増加数は+2,170世帯であり(外国人のみの世帯の増加数は+2,148世帯)、区全体の世帯増加数の63.7%を占めた。新宿区においても「外国人を含む世帯」の増加数は総増加数の59.9%を占めており、若年層を中心とした外国人の増加と、「外国人を含む世帯」の増加は、都区部住宅市場でも重要度が高まり始めていると思われる。
区別の外国人人口増加率(図表-46)と「外国人を含む世帯」の増加率(図表-58)をみると、区ごとの人口増加率と世帯増加率に大きな差がみられる。このため、区によって「外国人を含む世帯」での人員数に差異があることが予想される。そこで、区別に外国人人口を外国人のみの世帯数で除して、外国人のみの世帯の世帯当たり人員数を概算値として計算した(18)。すると、外国人の1世帯あたり人口は区別に大きな格差があり、足立区や江東区、葛飾区、大田区では1世帯当たり人員数が2人を上回る一方、豊島区や新宿区、中野区では1.4人に満たなかった(図表-60)。
区ごとの外国人を含む世帯の世帯当たり人員数の違いは、居住する住宅の面積にも影響すると思われるため、外国人の住宅需要を考える上で重要と考えられる(19)。
そこで、2015年の国勢調査から、出身国籍・地域別に都区部における「外国人を含む世帯」の1世帯当たりの人員数を計算すると、世帯あたり人員数が多いのが、インド(2.24人)やイギリス(1.96人)、アメリカ(1.93人)、韓国・朝鮮(1.91人)などで、ベトナムやタイ、インドネシアは都区部の単独世帯比率が70%を上回り、1世帯あたりの人員数は1.4人を下回る数値であった。(図表-61)。
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(18)概算値としたのは、日本人と外国人の複数国籍世帯があるため。
(19)区ごとの世帯当たり人員数の違いは、各区に居住する外国人の国籍・地域や年齢層、労働者か学生か、単身世帯か家族世帯か、世帯所得や家賃水準などのさまざまな要因が反映していると考えられる。
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おわりに
本稿では、日本国内で急増する外国人人口と世帯数に関して、人口統計を基に基礎的な情報の把握を行ってきた。外国人人口の増加と世帯数の増加は、日本人人口の減少が加速する中で、不動産市場にとっても無視できない存在となる可能性が高まっている(20)。
実際、国立社会保障・人口問題研究所によると、2020年の日本の総人口は2017年と比べ▲121万人の減少、2025年には同▲399万人の減少、2030年には同▲741万人の減少と、今後の毎年の減少幅は拡大が続くと予測されている(21)。
本稿は最近の外国人人口と世帯数に関する基本的な情報をとりまとめたものであるが、今後の国内外国人人口の増加に対する基本知識として少しでも参考になればと考えている。
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(20)参考までに、近年、来日外国人による刑法犯検挙件数・検挙人員数は底ばいの状況にあるが、国籍別・地域別の人口が急増しているベトナム人による刑法犯罪が増加するなどの影響もみられる。警察庁「・来日外国人犯罪の検挙状況」によると、2015年の外国人の刑法犯検挙件数は9,417件で前年比▲2.6%の減少だったが、ベトナム国籍では+29.6%の増加で中国を上回り国籍等別で最多となった。なお、2016年上期はベトナムの検挙件数の構成比は下がり再び中国が上回ったという。
(21)本年4月に公表された予測では、2015年10月から2016年10月までに総人口は▲25万7千人の減少とされているが、実際には、図表-6にあるように▲16万2千人の減少であった。この差異の理由のひとつに、外国人人口の急増があると思われる。予測の仮定条件として、外国人の入国超過数を過去からのトレンドに基づき、毎年7万人程度と設定しているが、実際には14万人ほどの増加があったと思われる(住民基本台帳に基づく人口によると、2016年の一年間の外国人の社会増減数は13万9千人の増加)。このように、外国人人口の増加は今後の国内人口の見通しにも大きな影響を与えると思われる。
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竹内一雅(たけうち かずまさ)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部
不動産市場調査室長
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