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こんにちは、経済学修士号を取得後、株価推定の事業・研究を行っている「たけやん」です。宜しくお願いします。

今回は、対外・対内証券投資と為替レートの関係を見たいと思います。まず、対外・対内証券投資の説明をした上で、円ドルレートとの関係、実効為替レートとの関係を順に見て、流出入ともに中程度の相関がある事を見ます。その上で、通貨別投資額との関係を見ますが、殆ど相関が無い事を確認します。


対外・対内証券投資とは

対外証券投資・対内証券投資は、国際収支統計における証券投資のことです。データとしては約定ベースと決済ベースが主にあるが、国際的に使われているのは約定ベースです。日本の対外・対内証券投資の統計も現在は約定ベースで公表されていますが、それは2005年からの事で、それ以前は決済ベースで公表されていました。

日本の対外・対内証券投資統計においては、総額や流入額、流出額だけでなく、発行体部門別統計や通貨別統計、地域別統計などが公表されています。

なお、日本の対外・対内証券投資統計は以下で参照できます。

参考: 対外・対内証券投資(財務省)


円ドルレートとの関係

前節で述べましたが、日本の対外・対内証券投資統計は2005年前後で連続性が途切れているので、ここでも2005年以降のデータを用います。

まず、円ドル名目為替レートとの関係を見てみましょう。

図1が対外証券投資と円ドルレートの推移、図2が対内証券投資と円ドルレートの推移です。高く相関しているようには見えませんが、長期トレンドとして見た場合は、同様の動きを示している様子が分かります。

図1:対外証券投資と円ドル名目為替レートの推移

図1:対外証券投資と円ドル名目為替レートの推移

出典:円ドルレートは「PACIFIC Exchange Rate Service」、対外証券投資は前述の財務省統計

注:左軸は流入・流出(億円)、右軸は為替レート(円)。

図2:対外証券投資と円ドル名目為替レートの推移

図2:対外証券投資と円ドル名目為替レートの推移

出典:円ドルレートは「PACIFIC Exchange Rate Service」、対内証券投資は前述の財務省統計

注:左軸は流入・流出(億円)、右軸は為替レート(円)。

実際に相関係数を計算した結果が以下の図3になります。対外証券投資は低相関から中相関といったところで、対内証券投資は中相関です。いずれにおいても 株式取得の方が高い相関係数を示している 事には注目に値するかもしれません。

図3:対外・対内証券投資と円ドルレートとの相関係数

図3:対外・対内証券投資と円ドルレートとの相関係数

出典:筆者作成

注:相関係数は1~-1までの値を取り、絶対値が高いほど強い相関関係を持っている事を示します。概ね絶対値が0.7を超えると高相関と解釈され、絶対値0.5~0.7くらいが中相関、絶対値0.3~0.5くらいが低相関、絶対値0.3未満だと無相関と解釈されます。


実効為替レートとの関係

対外・対内証券投資と実効為替レートの関係を見ても概ね同様の動きを示しているのでチャート図は割愛しますが、相関係数だけ見ておきましょう。

下図4は対外・対内証券投資額と名目実効為替レート・実質実効為替レートそれぞれと相関係数を取ったものです。全体的に円ドルレートとの相関係数より小さくなっていますが、特に対外証券投資との相関係数が低くなっています。対内証券投資との相関係数は比較的高いままです。

図4:実効為替レートと対外・対内証券投資との相関係数

図4:実効為替レートと対外・対内証券投資との相関係数

出典:筆者作成


通貨別投資額と為替レートの関係

では、もう少し細かく統計を見れば、高い相関を見つけられるでしょうか。ここで使うのは建値通貨別対外証券投資です。対外証券投資の相関は低い事が分かりましたが、例えばドル建て対外証券投資と円ドルレートを比較すればどうでしょうか。 しかし、流入・流出ともにドル建ての金額を見ても、相関係数は上がらないどころか、寧ろ低い事が分かります。また、地域別対外証券投資・地域別対内証券投資の米国を見ましたが、やはり相関係数は低いです。


関係の考察

全体的に対外証券投資と為替レートの相関係数が少ない事が分かりましたが、これは何故でしょうか。その理由は恐らく、国際資本取引において証券投資は一部である上、日本の対外証券投資は対内証券投資に比べて圧倒的に少ないのが影響しているでしょう。

実際、対外証券投資は対内証券投資の10分の1前後しかないのであって、為替相場に与える影響としては限定的だからです。ましてや地域別や通貨別にすると、更にその割合が減るのであり、結果から見れば相関係数が低くて当然と言えるでしょう。

但し、最近は様々なデータや分析から過剰に円安傾向に振れているという報告が多く、決済ベースで見た2005年以前のデータなら、高い相関傾向を示していた可能性はあります。

また、今回は投資家部門別の対外証券投資のデータを見ていないので、ムーバー(積極的に価格を動かして利益を出そうとする投資家のこと)となりうる金融商品取引業者・生命保険会社・損害保険会社・投資信託委託会社等の区分の投資額を個別に見れば、高い相関係数を示す可能性はあるでしょう。更なる分析のヒントとして提示しておきましょう。

参考文献:財政金融統計月報第668号(財務総合政策研究所)

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