東京株式市場が波乱含みの展開になっています。日経平均株価は8/8(火)の取引時間中までは2万円台を維持していましたが、8/14(月)に一時19,500円を割り込み、その後少し戻したものの、8/18(金)の取引時間中には再び19,500円を割り込む展開になっています。北朝鮮問題の深刻化に加え、米国ではトランプ政権への不信が高まっており、NY株が下落に転じる兆しをみせているためです。
北朝鮮問題や米国の政治不安が短期間に収まるとは考えにくいことから、東京株式市場では波乱含みの展開が続く可能性がありそうです。一方、日経平均株価の予想PERは一時13.80倍(8/14)まで低下し、「アベノミクス相場」開始直前となる2012年11月13日の13.6倍に接近してきました。日本の景気・企業業績は好調とみられ、全体的に株価が下がれば逆にそこが買い好機になる銘柄も出てきそうです。
そこで今回の「日本株投資戦略」では、発表が終わった2017年4~6月期の企業業績を改めてチェックし、今後株価全般が下がる中で逆に「買い好機」となりそうな好業績銘柄を抽出してみることにしました。
「波乱相場」が買い好機につながり得る好業績銘柄はコレ!?
2017年4~6月期の決算発表が終わりました。時価総額300億円超(決算発表本格化直前の7/21現在)の上場企業(金融を除く3月決算企業)の営業利益は前年同期比約14%の増益となりました。このうち、会社予想を公表している企業の今期(18年3月期)予想営業利益は決算発表直前までは3%弱程度の増益でしたが、上方修正を発表する企業が多く、8/14(月)現在では5%超の増益見通しになりました。またアナリストが四半期業績の予想を行っている企業では全体の65%の企業で、4~6月期の営業利益が事前のアナリスト予想を上回りました。アナリスト予想では18年3月期の予想営業増益率は11%超、19年3月期は同8%超となっています。
株式市場では、決算発表を受けて一部の好業績銘柄が買われる展開になりました。冒頭で触れた時価総額300億円超の上場企業(金融を除く3月決算企業)について、決算発表の前営業日から8/16(水)までの値上がり率上位銘柄をみると、会社側が業績予想を上方修正した銘柄や、四半期営業利益が事前のアナリスト予想を上回った企業が多くなっています。
さて、今後はどのような銘柄が買われるでしょうか。「日本株投資戦略」では、アナリストが当面は営業増益基調が続くと予想し、株価に出遅れ感があるとみられる銘柄を抽出することとしました。スクリーニング条件は以下の通りです。
(1)時価総額300億円以上の3月決算銘柄(電力・ガス、金融を除く)であること
(2)業績予想を行っているアナリストが3人以上付いていること
(3)今期(18/3期)予想EPS(一株利益)の市場コンセンサスが過去4週間で上昇していること
(4)今第1四半期(17年4~6月期)の営業利益が事前のコンセンサス予想に対し10%超上振れとなっていること
(5)予想営業増益率(市場コンセンサス)が今期12%超、来期(19/3期)9%超であること
(6)今期の予想営業利益について、市場コンセンサスが会社予想を10%超上回っていること
(7)予想PER(市場コンセンサス)が31倍未満であること
(8)決算発表日の前営業日以降の株価上昇率が10%未満にとどまっていること
好業績を期待して物色する以上、業績予想が下方修正される銘柄を買ってしまうことは避けたい所です。(3)(4)(6)の条件を入れることで、そうした銘柄を抽出してしまうリスクを引き下げられると考えます。また、この項の最初の方でご説明したように、アナリスト予想では18年3月期の予想営業増益率は11%超、19年3月期は同8%超となっています。したがって、当面の増益率については、そうした「平均」以上の数字が予想される企業が抽出対象に相応しいと考え、(5)の条件を入れています。
好業績が期待される銘柄であっても、市場がすでにそれを織り込んでしまっていては、さらなる株価上昇を望みにくくなると考えられます。8/16(水)現在、東証1部の予想PERは平均で15.5倍であり、その2倍にあたる31倍以上の予想PERで評価されている銘柄は除外することにしました。また、決算発表日の前営業日を起点に8/16(水)までの株価騰落率(表1の「発表後騰落率」)が+10%以上の銘柄についても除外することにしました。
表1は上記の(1)~(8)の全条件を満たす銘柄を、今第1四半期(17年4~6月期)の営業利益が事前のコンセンサス予想に対し何%上回っているのか、その数字が高い順に並べて掲載したものです。「日本株投資戦略」では、これらの銘柄を「『波乱相場』が買い好機につながり得る好業績銘柄」であると考えています。
抽出された「好業績銘柄」の投資ポイント
ここでは、表1に掲載した銘柄の一部について投資ポイントをご紹介したいと思います。
サンケン電気 <6707> の第1四半期は営業利益が2,036百万円と前年同期の319百万円から大幅増となりました。事前の市場予想は700百万円前後でしたので、それに対しても大きな上振れとなりました。半導体デバイス事業で白物家電向け製品及び自動車向け製品の販売が引き続き好調に推移したことなどが要因と考えられます。18/3期の会社予想営業利益は7,300百万円(前年度比23.1%増)ですが、市場コンセンサスでは8,200百万円前後が見込まれています。
7/18(火)に、標準的な電源モジュールから撤退し、付加価値の高い分野に集中するため、資本調達と人員削減を組み合わせた構造改革を実施すると発表し、株価が上昇し、7/24(月)に年初来高値を付けました。現在は、その後の一服場面にあると考えられます。
日立建機 <6305> の第1四半期は営業利益が16,919百万円となり、前年同期の3,666百万円から大幅増となりました。事前の市場予想である8,000百万円からも大きく上振れしました。なお、日立グループ統一の利益指標である「調整後営業利益」は16,763百万円(前年同期比584.5%増)でした。
売上構成比が30.9%と最大の「アジア・太平洋」向けが前年同期比51.6%増となったほか、同構成比17.1%の「米州」向けや、同12.5%の「中国」向けも好調でした。建機の好調は中国市場の回復がけん引したイメージがありますが、実際には世界的に拡大しているのが特徴です。今期予想営業利益は会社予想が44,000百万円(前期比・調整前)であるのに対し、市場は53,200百万円弱となっています。
オムロン <6645> の第1四半期は営業利益が22,604百万円となり、前年同期の9,794百万円から大幅増となりました。事前の市場予想である13,455百万円からも大きく上振れしました。中国や韓国でスマホ工場の自動化需要が旺盛で主力の制御機器が好調のようです。IoTの普及をにらみ、他社の制御機器もまとめて一括制御するシステムにも対応しています。今期予想営業利益は会社予想が68,000百万円(前期比)であるのに対し、市場は75,700百万円前後となっています。
株価は決算発表で急騰後に一服状態となっていますが、25日移動平均線に接近しています。
日東電工 <6988> の第1四半期は営業利益が30,339百万円となり、前年同期の11,741百万円から大幅増となりました。事前の市場予想である22,720百万円からも大きく上振れしました。今秋から発売予定のiPhone新モデルでは一部に有機ELが採用される見込みで、当社のタッチセンサーや粘着剤が伸びそうです。今期予想営業利益は会社予想が100,000百万円(前期比)であるのに対し、市場は113,000百万円前後となっています。
なお、電子部品・半導体全般に好決算になる会社が多かったようです。表1の太陽誘電 <6976> や村田製作所 <6981> が展開している積層セラミックコンデンサー市場では需給の引き締まりが指摘されています。車載用電子部品やスマホ向けトランジスタが好調なローム <6963> も好決算となりました。
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
鈴木英之
SBI証券
投資調査部
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