PDCAの精度を高めるためには、いくつかのポイントとステップを踏むことが重要だ。まずPDCAにおける「因数分解」を理解し、適切なポイントに沿ってビジネスの精度とスピードを高めていく必要がある。因数分解の意味と、いくつかのポイントを紹介しよう。

(本記事は、冨田 和成氏の著書『 鬼速PDCA 』クロスメディア・パブリッシング(2016年10月24日)の中から一部を抜粋・編集しています)

PDCAを成功させるには「因数分解」が肝になる

鬼速PDCA
(画像=Webサイトより)

私のなかで、鬼速のPDCAとは、運転で例えれば「だろう運転」に近い。「安全運転」がゴールの現実の運転ではNGだが、「最速運転」がゴールのPDCAでは、高い仮説精度で大きな事故を避けながら、アクセルベタ踏みで「だろう運転」をしたほうが当然早く着く。よって鬼速PDCAには仮説精度の向上が欠かせないわけである。そしてその仮説精度を支えるのが『因数分解能力』である。

数学で使う言葉になぞらえているが、要するに、「ゴール」と「現状」を構成する因子をどんどんリストアップしていく考え方だ。因数分解というくらいなので私がいつも使うのは「式」である。

こうした数学的なアプローチでもいいが、文系の方でもわかりやすいのはロジカルシンキングでよく使われる「ロジックツリー」であろう。やることは同じなのでここではロジックツリーで説明したいと思う。

最上端にくるのが因数分解の対象である。一例としてここでは「いい上司」にしてある。もしいい上司になることが課題であれば、「どうやったらいい上司になれるか?」といきなり悩み始めるのではなく、まずは「いい上司とは何か」と因数分解していけばいい。おそらく「いい上司」といっても、「人間的に魅力がある」か、「ビジネス的に魅力がある」かで大きく分けられるはずだ。そして「人間的な魅力」といってもさまざまな要素がある。

こうやって物事を分解することによって、より具体的に、より個別の事象にフォーカスを当てながら課題をリストアップし、それぞれのギャップを把握し、解決案を立てられる。もちろん、課題を比較することによって、より最速かつ現実的なルート設定もできる。

ゴールが比較的シンプルであれば因数分解を意識しなくてもそれなりに成果は出せるが(だから初級編では踏み込んでいないのだが)、ゴール設定が高いもの、より大PDCAに近いもの、または外的要因が複雑に絡み合っている難易度の高いゴールなどを成功させるには、どうしても因数分解(ロジックツリー思考)が不可欠になる。

PDCAの精度を高める因数分解 5つのメリット

PDCA
(画像=PIXTA)

因数分解をするメリットには、次の5つがある。

1. 課題の見落としを防ぐ

PDCAを回しているのになかなか成果が出ず、その原因もわからないときは、いまの自分にはない視点から切り込む必要があるわけだ。しかし、因数分解をせずに頭でひたすら課題や要因を考えても、せいぜい4、5個の視点しか持てないだろう。しかし、あるテーマを20個の因子に分解したら、それは「20個の視点を持った状態」と同じである。よって因数分解能力を鍛えると課題の見落としが劇的に減る。仮説精度を高めていくにはこの効用はきわめて大きい。

2. ボトルネックの発見がしやすい

因数分解を何回かしていけば、現状とのギャップが大きくて、なおかつそれを是正したときのインパクトが大きいいわゆるボトルネックが、ピンポイントで浮かび上がってくる。ぼんやりと課題に取り組むよりは、そのピンポイントに手間と時間と金を注力したほうが、アウトプットが増大するのは当然だ。

3. KPI化しやすい

課題が具体的になればその定量化もたやすい。例えば営業成績のアップを目指すときに因数分解が甘くて自分の課題が明確になっていないと、定量化できる指標は「契約件数」や「売上」「利益率」などしかなくなる。しかしそれでは総合的な結果の検証しかできないので、本当に課題が解決できているのか不明瞭である。

そこで因数分解をした結果、自分のボトルネックが「メールでのポテンシャル先へのアプローチの返信率が、平均値よりかなり低いこと」だと判明すれば、メール返信率を最重要KPIとして設定し、同僚の文面を参考にさせてもらったり、本でピンポイントなことが書かれている箇所を勉強したりと、解決案もフォーカスできる。

4. どんなゴールでも実現可能に思えてくる

仮に「幸せになる」というテーマで因数分解を進めたとしよう。それを本気で完成させたら因子の数は、軽く1000個は超えるはずだ。確かにものすごい数ではあるが、それはすなわち「この1000段の階段を上っていけば幸せになれる」という意味でもある。「幸せになるにはあと何段の階段を登り続ける必要があるのだろうか?」と先の見えない状態で前進するよりも、一歩踏み出す際の気持ちは強くなるはずだ。

ゴールと現状の途方もないギャップだけを見せつけられたら、断念する人がいても仕方ない。しかし、それを分解してしまえば、ギャップの正体は上(のぼ)りやすい階段の積み重ねにすぎないことに気づける。因数分解は、目の前の壁を細かいパーツに砕くためのツールなのである。

5. PDCAが速く深く回る

課題の漏れが減り、ボトルネックが見え、KPIが正確になり、解決案も絞ることができる。このように最初の段階でギャップを「深く」因数分解をすることで計画フェーズのすべてのステップの精度が高まることになる。精度が高ければ検証と調整フェーズでの軌道修正も小さくなるので、PDCAは「速く」回るようになる。

「PDCAは速く、深く回せ」とはそういう意味である。それにゴールやKPIと解決案との因果関係が明確になると、それまで「やりたくない」と思っていたことでも「成果が出るならぜひやりたい」と向き合い方が変わる。これは実行フェーズのスピードに大きく影響するので、PDCAのスピードはさらに速く回るのである。

因数分解をするときの7つのポイント

ここからは因数分解をするときの7つのポイントを挙げる。

ポイント① 抽象度を上げてから分解する

ロジックツリーの上部に置くものを専門書などでは「論点」や「イシュー」と呼ぶ。イシューとは英語で「課題」のことだが、本来はギャップに潜む課題発見のための因数分解なのに「最初に課題を置け」と言われても混乱すると思うので、ここでは「テーマ」としておく。「テーマ」にはPDCAにおける「ゴール」をそのまま置くとは限らない。

例えば経営者が「経常利益10億円を目指す」とゴールを立てたら、因数分解をするときのテーマは「利益構造」にするといいだろう。するとロジックツリーの2段目は「売上」と「コスト」に分解されるはずだ。

もちろん「経常利益10億円」をロジックツリーに置いてもいい。ただ、その場合は2段目の段階から「売上は50億円で、コストは40億円かな」といった具合に、いきなりスケールの大きな仮説設定が求められる。経営者にとって会社の数字は見慣れたテーマなのでこうしたアプローチも可能だろうし、そのほうが因数分解も速いが、テーマによっては混乱する。

もっとも的確なのはやはり「利益構造」といった一般的なテーマにして、まずはそれをいかに細かく分解するかにフォーカスし、あとから数字を当てはめたほうが結果的に早いことが多い。

こうやってテーマを分解していく過程で、明らかにここは大きな課題だと思われる要素が浮き彫りになったら、今度はその課題をテーマにして、新たなにロジックツリーを作ってみるのも手だ。これはPDCAサイクルをあまり大きなテーマのまま扱わず、分解された大きな課題それ自体を、中PDCA、小PDCAとして独立させたほうがいいことと同じ意味である。

ポイント② 5段目まで深掘りする

ロジックツリーを見ればすぐにわかるが、因数分解はやりだすとキリがないように感じることもある。あきらかにそれ以上分解しても意味がないと思ったら、それ以上、無理に分解する必要はない。ただ、現実問題として多くの人は因数分解の深度が浅い。

当社でも、いくらメンバーに「なるべく細かく因数分解しよう」といっても、ロジックツリーの3段目くらいまでで終わるパターンが多かった。例えば「チームのアウトプットを2倍にアップする方法」を考えてもらっても、「コミュニケーションが課題です!」と真顔で報告してこられることもあった。または「新規サービスの営業手法」を考えてもらっても「やはりSNS広告がいいと思います」というなど、一筋縄ではいかなかった頃もあった。

コミュニケーションの何が課題なのか、どのSNS広告をどうやって使えばいいのかまで考えていない。そうした甘々の因数分解では課題は見えづらいし、PDCAも回しづらい。私の経験上、深掘りをするときの深さの基準は5段目だ。そこまでいくとかなり課題が具体化しているので解決案も具体的なものを思いつきやすくなり、さらに次の実行フェーズでも迷いが出にくい。

繰り返すが、ロジックツリーをすべて5段目まで埋める必要はない。課題となりそうな箇所だけを5段目以上をメドに深掘りすればいい。また、これもロジカルシンキングの基本だが、因数分解の階層を深めるときは「WHY」を繰り返すWHYツリーか、「HOW」を繰り返すHOWツリーの2通りしかない。

要因を見つけるときは「なぜ(できないのか?/できたのか?)」を繰り返し、課題や解決策を見つけるときは「どうやって(構成されているのか?/達成するのか?)」の問いをすればいい。この2つの質問はPDCAにおける魔法の質問である。

ポイント③ 1段目だけはMECEを徹底する

ロジカルシンキングをかじったことがある方ならMECEについてはご存知だろう。初見の方のために簡単に説明すれば「漏れなく、重複なく分類すること」で、ミーシーと読む。因数分解(ロジックツリー)においてMECEはワンセットで考えられているくらい重要な概念である。

というのも、ロジックツリーを広げていくときの分類の仕方はひとつではない。というより正解はない。しかし、最終的な課題やボトルネックはそうした分解を進めていった枝葉のどこかに潜んでいるはずであり、分類の過程で「抜け」があるとその課題を見落とすことになる。逆にMECEを徹底していれば、どんな分類の仕方をしても、最終的には課題に行きつくことができるのだ。例えば、時間の効率活用を目指して、一日の行動を洗い出すとする。分類の仕方はいろいろ考えられる。「午前」と「午後」から分けてもいいし、「3時間単位」で分けてもいい。

では「職場」と「自宅」と分けたらどうか?これでは自宅にも職場にも該当しない「移動中の時間の使い方」や「飲み会に参加するときの時間の使い方」などが抜け落ちる。ただ、階層が深くなるにつれ毎回MECEを意識することはあまりに時間がかかる。それが心理的な負担になって因数分解が甘くなってしまっては意味がない。

よって私は、最上端のテーマを分解する1段目だけは、MECEを徹底することを奨励している。さすがにこの段階で「抜け」が発生すると、その下位にくるすべての課題が検討対象から外れてしまうので、最初の計画段階での精度がガタッと落ちるからだ。

それ以降についてはできるだけ知恵を絞ることは当然だが、あまり厳格になる必要もないだろう。仮に抜けがあったとしても、それに検証フェーズで気づくことができれば修正は可能だ。

ポイント④ 切り方に悩んだら「プロセス」で切る

問題解決の方法を説く本などではロジックツリーの最初の切り方が重要だと言われる。しかし、そう難しく考える必要はない。もっとも確実で、もっとも簡単な方法は、プロセスで分解することだ。

例えばメールアプローチで営業をかけている担当者が売上を伸ばしたいとすると、ロジックツリーにおけるテーマは「メールアプローチ」になる。それをプロセスで切れば次のような順番になるだろう。

「リスト準備 → 送信 → アポ取り → ニーズ喚起 → 提案 → 検討 → 成約 → リピート」

これぞ「漏れなく、重複なく」メールアプローチを分解したものである。あとはプロセスごとにさらに因子を分解していけばいい。

仮にプロセスの分解で「コンタクト → 交渉 → フォロー」と大雑把に切ったとしても、それがMECEである限り、次の3段目で分解するときに「リスト → 送信……」といった粒度に落ち着くはずで、行き着くところは同じである。こうやってプロセスで切ると、課題だと思っていたことが大した課題ではなかったことに気づくこともある。

例えば「声が小さいこと」が自分の課題だと思っていた営業マンが、営業プロセスを分解していった結果、「そういえば声以前の問題で、自分は事前準備が全然できてないよな」と気づくかもしれない。

または「美味しい料理を出しているのに客が増えない」と悩んでいる飲食店経営者が、飲食店利用者の行動プロセスを分解してみた結果、実は「料理の質」は課題のひとつにすぎず、それ以外にも「接客の質」や「価格設定」や「マーケティング」といったさまざまな課題(未達のギャップ)があることに気づくかもしれない。

他にも、当社のように、ウェブサービスを運営している企業であれば、「ユーザー数が増えない」と悩んでいるチームがあるのであれば、ユーザー数が増える経路を分解し、「SEO対策により検索順位上昇」「SNSでのシェア・拡散」「メディアやブログでの紹介」などに分解することで、課題を適切に考えることができるようになるだろう。

こうした気づきを得ることができるのがプロセスで分解する強みだ。よって、もしあなたが課題抽出や解決案で悩んだとき、または部下が悩んでいるときは、「普段どういうプロセスでその仕事をやっているか?」という問いから始めるといい。

それが毎日やっていることであればその問いに答えられないわけがない。だから簡単、かつ確実なのだ。仮に自分の知らないことにチャレンジする場合や、どういったプロセスがあるのかわからない場合は、「切り方」にフォーカスして経験者に聞いたり、本を読んでみたりすればいい。

例えば管理職になりたてでチームマネジメントで重要なことがわからなければ、管理職の先輩を5人くらい捕まえて聞くことだ。すると、やれ「ゴール設定だ」「アメとムチだ」「日々の対話だ」とさまざまな意見が出てくるはずだが、それらはすべて因子であり、収斂(しゅうれん)する先はいくつかのパターンしかない。ということは、それらは少なくとも「筋のいい仮説」であるといえる。

本の目次から切り方を学ぶ

切り方が分からない場合におすすめするのは本の目次だ。例えばある日、社長の思いつきで突如あなたが自社のコンテンツマーケティング担当に任命されたとする。コンテンツマーケティングが何なのかも知らない状態だ。そんなときは関連書をいくつか買ってくればいい。綺麗にプロセスごとによって分解されている。あとは他の著者の本も何冊か見て、漏れがないかだけを確かめればいいだろう。

基本的に実用書の章立てはプロセスごとに切ってあることが多い。テーマによってはシーン別であったり、ターゲットごとであったりもするが、それらも立派なMECEなのでそこから始める手もありだ。

ちなみに私は20代に数え切れないほどのPDCAを回してきたが、例えば睡眠の質を改善しようとPDCAを回したときも真っ先に本屋にいって関連本を20冊近く買ったものだ。そして目次を比較して筋のいい仮説が見えたら、その仮説にのっとった本のなかで一番わかりやすそうな本だけを読んだ。こうすることで、1週間前まで睡眠の素人だった自分でも、ボトルネックの発見は簡単になる。

ポイント⑤ 簡単な課題は「質 × 量」で切る

因数分解はプロセスで切ることが簡単で確実だと書いたが、2段目、3段目もプロセスで切れるとは限らない。そこから先をMECEで分類するコツは「質 × 量」で切ることだ。

私は昔からどんな成果も「質 × 量」で成り立つという考え方をしている。物理の初歩である「距離 = 速度 × 時間」の式も、結局は「走る能力(質)」と「走った時間(量)」の積が、「走った距離(成果)」である。よって「営業力」「生産性」「収入」「新規採用」といった大きなテーマも、「質 × 量」で切ればMECEは成り立つ。

ただ、プロセスで切っても結局は「質 × 量」に行き着くはずだ。そして「質」とはかならず「率」で考えることができる。「質 × 量」で物事を切る習慣が身につくと、目標を達成するときの解決案の偏りを防ぐことができる。

よくあるのはボトルネックと聞くと「やり方」や「スキル」といった「質」の分解ばかりをして、「量」については「時間をかければいいんだよね」といった次元で因数分解が終わりやすいことだ。しかし、先ほどの私の因数分解の例のように「時間」は「タイムマネジメント」「モチベーション」「ツール」によって構成されていることに気づく。

つまり、接触件数を増やしたいなら、タイムマネジメント力をアップさせたり、モチベーション維持の工夫をしたり、積極的に同僚の手助けを得たり、各種ビジネス補助アプリを使ったりすることで、ようやく時間は増やせるということだ。

しかも、ここで挙げた「時間」を構成する因子はたいていどんな仕事にも当てはまる汎用的な課題である。個人レベルでも組織レベルでもそうだ。だとすれば中長期で見たときに優先順位が高いのはこれらではないのか、という考え方もできる。

私の場合、昔から因数分解をするたびにこの「モチベーション」「タイムマネジメント」「ツール」の3つの因子に行き当たっていたので、いまの私は自他ともに認めるタイムマネジメントマニアで、モチベーション維持マニアで、ツールマニアである。というよりもPDCAを回す習慣がある人はこうした汎用スキルは必然的に身につけている。一例を挙げよう。

営業マン時代、私は新規開拓のツールのひとつとして潜在顧客に対して、名刺を添えた業界資料を一方的に郵送していた。広告は捨てられるが有益な情報は捨てられにくいとわかっていたからだ。

しかし、飛び込み営業で忙しかった私にはその余力がないときもあった。おそらく時効なので白状するが、そんなときは支店長に内緒で派遣スタッフさんにこっそり資料と名刺と郵送リストを渡して、代わりに送ってもらっていた。これはツール(外部補助)とタイムマネジメントを考え、行き着いた策である(派遣スタッフさんと日頃から仲良くしておく課題も含まれる)。

ポイント⑥ とにかく文字化する

いまの私が社内の課題解決にあたるとき、わざわざ因数分解を細かくやらなくても高い精度で課題が潜むエリアを特定できる。ただこれも過去に散々因数分解をしてきたベースがあるおかげである。

ではどうやったら因数分解が上達するのか? 基本はとにかく紙に書き出すことだ。形にこだわらず、とにかく思いつくことを箇条書きにするだけでも効果はある。メモ書きは思考プロセスのどこかで無限ループにはまっている状態を抜け出すことが目的だからだ。

私もよく課題抽出や課題解決で浅い分解しかできないときは、すぐさま手帳を取り出してアイデアを書き出す作業を日常的にやっていた。すぐに手帳が取り出せるようにスーツのポケットに入る小型サイズを選んでいたくらいである(当時はフランクリン・プランナーの手帳を使用していた)。これは私の流儀にすぎないが、私は紙に書くときは常に4色ボールペンを使って、最初に思いつきたことは黒で書き、そのあとに追加したものは赤、青、緑と色を変えている。

何も思考の階層ごとに色分けをする目的ではなく、単にそうしたほうが書き足すたびに自分の思考が深掘りされていくことが実感できるので、考えることが楽しくなるのだ。新しい因子や切り方を思いついたときは一人でほくそ笑んでいたくらいである。また、色分けをすることで「そういえば前回もここを最後まで見落としていたな」といった自分の思考のクセに気づくきっかけにもなる。

ポイント⑦ マインドマップで鍛える

メモ書きを眺めてもまだ混乱しているときは、私は必ずマインドマップを使っていた。ご存知の通り、マインドマップはロジックツリーの集合体のようなものである。メモ書きはアイデア出しのため、マインドマップはアイデア出しプラス、思考の整理のため、という使い分けである。

仕事のことでもプライベートなことでも、頭がモヤモヤしてきたら「早くマインドマップでスッキリさせなければ」と若干の焦燥感を覚えるほど習慣となっていたし、いまの私が鬼速PDCAを身につけられたのもマインドマップであらゆることを分解してきたおかげである。20代半ば当時の懐かしいデータがあったので、恥ずかしながら一部を紹介させてもらいたい。

マインドマップのテーマは大小さまざまなものを扱ってきたが、次のページで紹介するのは比較的大きなくくりとなる「四半期の振り返り」だ。PDCAでいえば中PDCAくらいのものである。これらの枝の構成要素すべてで、PDCAを積み重ねていた。本書では基本的に小PDCAを回すことをすすめているが、慣れてくるとこれくらいのボリュームでも回せるようになる。

ここでマインドマップを使っていく上で、ポイントになりそうなことをいくつか解説しておこう。マインドマップはA3の紙に書き出す人もいるが、私はデジタル派である。思考に集中したいときに枝葉を追加するスペースがなくなると集中力が切れるからだ。

冨田和成(とみた・かずまさ)
神奈川県出身。一橋大学在学中にIT分野で起業。2006年大学卒業後、野村證券株式会社に入社。本社の富裕層向けプライベートバンキング業務、ASEAN地域の経営戦略担当等に従事。2013年3月に野村證券を退職。同年4月に株式会社ZUUを設立し代表取締役に就任。

【鬼速PDCAシリーズ】
(1)多くの人が抱きがちな「PDCA」6つの誤解
(2)5割の人が失敗している「PDCAの計画」 圧倒的な成果の出し方
(3)「PDCA」の本当の回し方 精度を高める7つのポイント
(4)デキない人にありがちな「計画倒れ」の正体 なぜ、実行できないのか?
(5)仕事で「適度に忙しい」状態をつくり出す3つの原則