物事において最も重要なことは、適切な計画を立てることだ。著者いわく、PDCAを実行するが、およそ50%の人が、計画段階で失敗しているという。モチベーションに紐づく計画は、どのように作るのだろうか。以下ではその方法論について触れていきたい。

(本記事は、冨田 和成氏の著書『 鬼速PDCA 』クロスメディア・パブリッシング(2016年10月24日)の中から一部を抜粋・編集しています)

PDCAを実践しようとする多くの人が、計画フェーズで失敗している

鬼速PDCA
(画像=Webサイトより)

PDCAサイクルの各フェーズの説明をしていく。最初は計画だ。私の感覚ではPDCAで失敗する人の50%はこの計画フェーズで失敗している。失敗する原因は大きく分けて2つある。慎重になりすぎるか、雑になりすぎるかだ。このあたりは本人の性格や企業文化などで違いがよく出る。

石橋を叩いてなお、ためらってしまうような慎重派なら、計画と聞くだけで体がこわばる。「計画を立てるなら絶対に間違ってはならない」と思うからだ。もしこれが会社で、新規事業を検討している経営者が慎重派だと、おそらく社員たちは延々と市場調査に駆り出されることになるだろう。その間にも市場はどんどん変化するというのにである。そして毎月の会議で議題に取り上げられては「もう少し様子を見よう」というお決まりの文句が発せられることになる。

こうしたリーダーがいる組織はPDCAサイクルが回りにくい。かたや思いつきで動く人がPDCAを回そうとすると、計画が雑なまま動き出してしまって下流工程の実行フェーズで路頭に迷う。それに検証しようと思っても定量的に比較できるものがないので、(とくに物事がうまくいかないときに)その原因の解明がしづらい。両極端ではあるが、両者ともPDCAを理解していないという点では同じだ。

過度の慎重さ、過度の心配はPDCAサイクルを遅くする。過度の思慮不足、過度の日和見主義はPDCAサイクルの精度を落とす。よってPDCAを回す人や組織に必要なのは、慎重さと大胆さの中間あたりなのだ。

もちろんこれは感覚的な話なので厳密な定義はない。だからこそ、自分がいま慎重になりすぎていないか、または大胆になりすぎていないかという自分のメンタルとの対話が重要になる。もし一方に寄りすぎていれば意図的にバランスを取るようにすればいい。

ちなみに、私は日々社内から上がってくる課題に対して判断を下す立場にいるが、不安で寝つけない夜は滅多にない。もちろん、ときには大勝負に出ることもあるし、そのときはいつもより慎重になる。

しかし、社内で下す99%の判断はPDCAを回す前提に行っているので、「現時点で可能な限り精度の高い仮説を立てて間違っても仕方ない」くらいにしか思っていない。あらゆることをPDCAで回していると、メンタル面での負担が軽くなる点も大きなメリットであると言えよう。

目的地のない旅は放浪であり、目的意識のない仕事は惰性だ。あらゆるPDCAは、たどり着きたいゴールを決めることから始まる。PDCAはどのような対象でも回せるのでゴールはなんでも構わないが、その際に注意してほしいポイントが3つだけある。期日を切ること。定量化すること。そして適度に具体的なものにすることだ。

ゴールを意識することでムダなPDCAを回すことがなくなる

ゴールがないとPDCAは始まらないと書いたが、ここに付け加えたい質問が1つだけある。

「そもそも、なぜそのゴールを目指すのか?」

人はときに、長期的な目線を忘れて短期に走り、マクロな視点を忘れてミクロに走り、本質を忘れて形式に走る。とくに日々の業務に忙殺されている人や、昔からの慣習に縛られ思考停止に陥っている組織などに起きやすい。よってPDCAを回し始める前に、あらためてその「背景」、つまり上位に位置するPDCAを意識することが大切になる。

PDCAを変更するのは、例えば次のような場合だ。友人が高級車を買ったのを見て「俺も1年以内にBMWを買おう」とゴールを決めたとする。そこで一度立ち止まって「なぜBMWが欲しいのか?」と自問自答した結果、実は単に「負け惜しみ」というあまり前向きではない欲求がその背景にあったとしよう。

そのときはさらに自問自答するのだ。「自分はいったい何がしたいのか? 将来、どうなりたいのか?」と。その結果はもしかしたら「将来、お金に不自由しない生活を送ること」だということに気づくかもしれない。だとすれば、いま手元にあるなけなしのキャッシュを一時の見栄のために使うのではなく、その分を投資に回して十分に余剰なキャッシュが生まれたら買えばいいという合理的な判断ができるだろう。

するとその時点で「BMW購入」のPDCAが止まるが、同時に「投資でお金を増やす」という別のPDCAが回り始めることになる。組織でありがちなのは、良かれと思って一部の有志が新しいことを始めてみたはいいが、実は経営陣の考える方向性とは真逆であるようなケースだ。

真逆であることを承知で、会社を変革すべく行うのであれば構わない。しかし、単なる浅い思慮のせいで、良かれと思ったことが逆の効果になってしまうこともある、それではもったいない。これは視野の広さの問題だ。

どんな会社も何かしらの目標を立てて動いている。それを実現するために各部署が中PDCAを回し、社員たちが小PDCAを回しているイメージである。

よってPDCAを回すときはその価値があるのかどうかを適宜確認する必要がある。ホウレンソウが大事なのも、上司とPDCAのベクトルをすり合わせるためである。それを怠るとせっかくのPDCAも徒労に終わってしまう可能性がある。

思考のリミッターを外して行動力にドライブをかける

「自分にかけている制限は、ただの記憶だ」

『7つの習慣』を日本に紹介したことで有名な経営コンサルタント、ジェームズ・スキナー氏の言葉である。人は自分の経験や知識(つまり記憶)を基に、「これくらいならできそうだ」「これはさすがにできない」と、自分の可能性に上限を設けようとする。

しかし、有名な「ノミの実験」(本来2mジャンプできるノミが、数日間、高さ50㎝のカバーをかけられるとカバーを外したあとも50㎝以上飛べなくなるという実験結果)のように、限界とは本人の思い込みにすぎないことが多い。せっかくポテンシャルがある若い人やチームが、それを活かし切れていないケースをよく見る。

よってPDCAを回す際も、ときに非常識な計画を考えることが大切だ。例えば次のような問いだ。

「3ヶ月後に会社の売上を5倍にするにはどうしたらいいか?」

いくら向上心のある経営者でも月商1億円の売上を3ヶ月で5億円にすることなど想像すらしないだろう。したとしても5年計画くらいの話かもしれない。

しかし、あえてリミッターを外して5億円を達成することを考えてみると、いままでとは比較にならない次元でのゴールと現状とのギャップ、およびその課題が見えてくる。それは、おそらく小さなPDCAを回すくらいでは対応できないレベルの話になるだろう。

まったく新しいビジネスモデルを生み出す必要があるかもしれないし、既存の商品であってもいままでとはまったく異なる売り方を考える必要があるかもしれない。このとき9割のケースでは「やっぱり無理だ」という結論に至るだろうが、残りの1割では「もしかしたら、あながち無理な話ではないかもしれない」と思えるかもしれない。それがブレイクスルーの入り口になる。

こうした気づきは自分の常識にとらわれすぎているとなかなか見えてこないので、リミッター外しの思考は、人や組織の成長に不可欠である。もっと言えば、起業家たちはこうした一見、絵空事のようなことを実現する人たちのことである。

私は昔からリミッターを外すことが習慣になっている。野村證券に入社したときのゴール設定は、「1年目で3年目までの社員のなかで1位、2年目で7年目までの社員のなかで1位、3年目で全社員のなかで1位になること」だった。

結果的には全社員1位の座は取れなかったが、1年目と2年目はぶっち切りで3年目までの社員のなかで1位になれたし、3年目には7年目までの社員のなかで1位になれた。

その後、私はハーバードのビジネススクールに行くことをゴールに定めた。ろくに英語も話せない状態でのゴール設定だったので、周囲は呆れたはずである。結果的にハーバードなど欧米のビジネススクールを受けるチャンスはもらえなかったが、ゴールから逆算して鬼速でPDCAを回した甲斐あって、念願であった海外でのビジネススクールに会社派遣として行くことができた。こうした経験から言えることがひとつある。とてつもないゴール設定をするとその手前くらいまでは余裕で行けてしまう、ということだ。

冨田和成(とみた・かずまさ)
ZUU 代表取締役社長
一橋大学卒。大学在学中にIT分野にて起業。卒業後、野村證券にて数々の営業記録を樹立し、最年少で本社の超富裕層向けプライベートバンク部門に異動。その後、シンガポールでのビジネススクール留学を経て、タイにてASEAN地域の経営戦略を担当。2013年、株式会社ZUUを設立。著書に『大富豪が実践しているお金の哲学』(クロスメディア・パブリッシング)がある。

【鬼速PDCAシリーズ】
(1)多くの人が抱きがちな「PDCA」6つの誤解
(2)5割の人が失敗している「PDCAの計画」 圧倒的な成果の出し方
(3)「PDCA」の本当の回し方 精度を高める7つのポイント
(4)デキない人にありがちな「計画倒れ」の正体 なぜ、実行できないのか?
(5)仕事で「適度に忙しい」状態をつくり出す3つの原則