利益率は高いが、連邦税を払わない米国企業のアドバンテージ

米国連邦税は、米国に事業所を持つ企業全てにかかる税金であり、税率は15%から35%までの4段階に分かれています。その他には州税も別にありますが、固定資産に敷地内の電柱を含む州もあれば、州税そのものの項目が少ないところもあります。連邦税は控除項目が多く、営業費用や役員報酬、給料、年金プランへの拠出金、広告費、支払い利子等があります。

そのため、2008年から2012年の5年間、ボーイングやGEといった巨大企業が連邦所得税を未払いである、という民間調査結果が発表(2014年2月)されましたが、複雑な控除項目のため、多くの企業が会計士を雇い、税金の支払いを抑える努力をしているのです。これは、企業に対して有益といえる方法ですが、逆にいえば、雇用されている人々の収入はしっかりと捕捉されており、彼らが脱税する余地はなかなかありません。

また、ここ数年海外に住む米国人が米国籍を理由に連邦住民税を支払うよう告発されており、その基準も銀行口座5万ドル以上の米国籍市民の情報開示が、2013年1月から施行された「外国口座税務コンプライアンス法」を根拠としています。スイスのプライベートバンクをはじめ、ドイツ銀行やクレディスイスなどは、アメリカ人顧客情報を開示しなければならず、その手続きの煩雑さに手を焼いているのです。

財政収支の健全化のため、アメリカ政府は企業税制を有利に計らい、雇用促進をうたいながら、個人への税収を確実にする政策を今後も続ける見通しです。企業はアドバンテージがあったとしても、個人にはあまりメリットのない「海外在住アメリカ国籍」から離脱する人も毎年1500人を超えているのが実情です。


オバマケアが支持されなかった、米国という労働文化

米国ベビーブーマーといえば、1946年から59年までに生まれた世代を指します。1943年以降生まれの人たちは年金受給が66歳に繰り下がり(それ以前は65歳から)、この世代は65歳で退職して余生を楽しむ「ハッピーリタイヤメント」を享受できなくなっています。そして、新世紀世代(ミレニアム世代、1980年以降誕生)は、教育費用の上昇や家庭環境の格差の拡大によって、安定した正社員で居続ける可能性が低くなってしまいました。

失業保険制度は月々平均支給額が300ドル程度、99週の最長失業保険を受けることで、雇用にはマイナスにはたらくなど、雇用準備機関などが全くない労働文化は、国民医療制度(通称オバマケア)が是認されない事実から垣間みる事ができるでしょう。


景気回復と労働参加率の低下、米国経済の定着化の影響は

米国の月例雇用統計を重視するのは誰でしょうか?おそらく金融マーケットのトレーダーだけかも知れません。そこには、アメリカ経済の真の理想である一般雇用者の所得増が全く欠け落ちています。ジャネット・イエレンが日々警告する利上げ通告は、市場関係者から完全に無視されていますが、金融市場の投資マネーからいかに実体経済へドルを還流させるか、という至上命題は常に金融関係者から阻止されています。

バラク・オバマでさえ、完全にコントロールできない経済動向。中間選挙以降レイムダックに陥るのかどうかで、経済界は次の大統領選に話題を移すだけかも知れません。

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