本年4月に国立社会保障・人口問題研究所による新たな人口予測が公表された。その結果は、前回の予測と比べ、人口減少の速度や高齢化の進行が多少緩和するというものだった。とはいえ、今後人口の減少幅は、2016年(10月1日時点)の前年比▲25万7千人減から、2020年には同▲44万8千人減、2025年は同▲61万7千人減、2030年は同▲72万5千人減へと拡大する。人口減少の加速化は住宅需要の減少など、国内の不動産市場に大きな影響を与えると懸念される。

人口減少の拡大が懸念される一方、実際の2016年10月までの総人口の減少幅は前年比で▲16万2千人減となり(総務省「人口推計」)、上記の予測(同▲25万7千人減)と比べ減少幅が大幅に小さかった。その理由のひとつが、国内に居住する外国人人口の急増だ。予測では一年間の外国人の入国超過数を過去のトレンドから6万9千人と仮定しているが、実際には13万6千人と想定の2倍ほどに達したのだ(1)。

総務省「人口推計」によると、外国人は2013年から増加に転じ、2016年には前年比で13万7千人の増加となった(図表1)。2016年の日本人人口が前年比で▲29万9千人の減少だったため、日本人の人口減少の半分近くを外国人の人口増加が補ったことになる。

--------------------------------
(
1)外国人の入国超過数は、2011 年は前年比-5万1千人減、2012 年は同-5万6千人減、2013 年は同3万7千人増、2014 年は同6万人増、2015 年は同9万5千人増であった(国立社会保障・人口問題研究所)。
--------------------------------

56479_ext_15_0

外国人人口の増加は全国にわたっており、2016年は全ての都道府県で外国人人口が増加した(住民基本台帳に基づく人口)。その一方で、総人口が増加したのは8都県にすぎない。このうち、滋賀県と福岡県の日本人人口は減少しており、この2県では外国人人口の増加が県内総人口の増加をもたらした。なお、2016年に増加した外国人の国籍としては、ベトナム人の増加が顕著で、42道府県で国籍別増加数の第一位に、5都県で第二位となった。ベトナムからの在留資格では技能実習が43.3%を占めており、日本人の少子化による人手不足がベトナムからの技能実習生の需要を高めたと考えられる。

国内の外国人人口の2割弱が居住する東京都区部においても、外国人人口の増加は顕著だ。2016 年の総人口増加数(9万7千人)のうちの32.9%に相当する3万2千人が外国人だった。区別にみると、新宿区では2016 年の人口増加の61.7%が外国人であり、豊島区では68.7%、足立区では70.6%となるなど、人口増加の半分以上が外国人という区は6区に、人口増加の3割以上が外国人という区は12 区を占めた。

外国人の増加の結果、都区部では人口の4.41%が外国人となった(2000 年は2.93%)。全国で最も外国人人口の多い市区町村である新宿区の外国人比率は12.2%で、豊島区は9.5%、荒川区は8.4%となり、この比率は上昇傾向にある。日本に居住する外国人には特に20~30 歳代の若年層が多い。そこで、20~24 歳について外国人の総人口に占める比率をみると、新宿区では37.4%、豊島区で33.3%に達し、この2区では20 歳代前半の人口の1/3 以上が外国人という状況になっている(図表2)。

56479_ext_15_1

外国人人口の増加を反映してか、最近、外国人向けのマンションや寮の需要に関する話題を耳にする機会が増えた。外国人には若年層が多く、賃貸住宅に居住する比率が日本人よりも高いこともあり、外国人の人口増加は賃貸住宅等の需要下支えにつながる可能性が高い。

低金利等を背景に、年金をはじめとする機関投資家による不動産投資が拡大している。不動産投資に対する最大の懸念は国内の人口減少ではないだろうか。外国人人口の増加は日本人の人口減少の影響を緩和するとともに、立地や分野によっては不動産需要の拡大をもたらす可能性も高いと思われる。

竹内一雅(たけうち かずまさ)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部 不動産市場調査室長

【関連記事】
急増する国内外国人人口・世帯数
少子化の中で存在感を増し始めた外国人居住者の住宅需要ー東京都では増加世帯数の3割を占める
東京Aクラスビルの成約賃料が再上昇。~不動産クォータリー・レビュー2017年第2四半期~
若年人口の減少と大都市中心部への人口集中
失業率の低下を後押しする労働力人口の減少