いまや日本随一のフィンテックグループといえる楽天 <4755> が9月27日、「RAKUTEN FINTECH CONFERENCE2017」を都内のホテルで開いた。「AIがもたらすFinTechの革新」というセッションでは、東大の柳川範之教授が、AIが経営と組織に与える影響として、「人間同士の最適組織と、人間とAIの最適組織は大きく異なる。AI活用には組織を大きく組み替える必要がある。金融業では今のところ大きな組織改革は起きていないが今後は不可避ではないか」と述べた。(取材:濱田 優 ZUU online編集長/FinTecn online編集部)
データサイエンティストがいればいいわけではない
カード、銀行、証券、生命、投信投資顧問の各社のほか、Edyやポイントサービスなどを展開している楽天によるフィンテックカンファレンスは今年で3回目。キーノートスピーチとして竹中平蔵元総務相・金融担当相が「昨今の日本経済・アベノミクスの課題とFinTech革命」の演題で話した。
「AIがもたらすFinTechの革新」に登壇したのは、IBMでワトソン アンド クラウドプラットフォーム ヴァイスプレジデントを務めるトビー・カッペッロ氏、ブラックロック・ジャパンの株式戦略部長である入山千恵子氏、柳川範之・東京大学大学院経済学研究科教授。モデレーターは、楽天執行役員 AI推進部ジェネラルマネージャーの茶谷公之氏が務めた。
入山氏の説明によれば、ブラックロックにはビッグデータやAIを運用に利用する科学的アクティブ株式運用部門に90人以上のメンバーが在籍しているという。入山氏は同社における定量運用の変遷の歴史を振り返ったうえで、ビッグデータの事例として、「先進国市場における1日あたりの平均的株式取引は5400回×3500銘柄で1890万件」「アナリストレポートも1日あたり4000レポート、3万6000ページ(53言語)が誕生している」と紹介し、AI活用の可能性の大きさを示唆した。
柳川教授は金融業の変化として「金融が一部になり、すべてのリテールサービスを包含する形になるのではないか」との考えを披露。運用についても、AI間競争が進み、「アルファ(超過収益)を得るアクティブ運用に人間に強みああるのかどうか」という点を問題意識として指摘。ほかにも冒頭で挙げたような、AIが経営と組織に与える影響について言及した。