北九州市は2011年に九州で唯一の「環境未来都市」に、2016年には「国家戦略特区」に指定され、同市が抱える高齢化をはじめとした多くの問題を解決するための取り組みを行っています。特に力を注いでいるのが、2013年に策定した「北九州市新成長戦略」の一環として開始された、ベンチャー企業の支援活動です。

以前から「ものづくり」が盛んであった北九州市は、市だけではなく民間企業なども連携しながら多くの起業家を輩出してきました。さらなる雇用創出のため、今後は女性起業家も増やしていきたいという同市の取り組みと、実際に起業した人のその後の活躍について紹介します。

北九州市全体が起業を支援

(写真=PIXTA)
(写真=PIXTA)

「日本一起業しやすい街」を目指している北九州市は、民間企業、大学が連携し、あらゆる角度から起業支援を行っています。

・ 北九州市の取り組み
北九州市では、起業に向けた資金貸付を日本政策金融公庫と連携しています。さらに北九州テレワークセンターをはじめとする新事業創出の支援施設も市内に4つ設置し、起業とベンチャーの成長を促しています。

2016年5月には、女性のキャリアアップや起業を応援するウーマンワークカフェを設立、キッズコーナーも併設された施設内には創業相談窓口があり、すでに多くの女性が起業相談に訪れています。

・ 民間企業の取り組み
民間企業では、3Dプリンターを配備したコワーキングスペース「fabbit」が中心となり、「ものづくり」に力を注ぐ起業家を支援しています。さらに同施設では、スタートアップの拠点として「スタートアップラウンジ」を毎月開催し、起業したい人と支援したい人や企業を繋ぎます。

・ 大学の取り組み
2017年6月、西日本工業大学と北九州市がデザインに関する連携協定を締結、デザインに特化したベンチャーを支援する取り組みを開始しました。

先進的な北九州市の支援活動

このように多くの団体や企業と手を取り合い、スタートアップが抱える問題を資金面だけではなく多角的に支援する北九州市は、常に先進的な支援活動をしてきました。

2016年からはインターネット上で資金調達ができる「クラウドファンディング」を活用、女性向けフリーペーパーを手掛ける株式会社アヴァンティと連携し、女性起業家を支援する取り組みを開始しています。クラウドファンディングのセミナーをはじめ、企画のブラッシュアップから資金集めが終了するまでを北九州市とアヴァンティがサポートしていきます。

さらに北九州市が得意とする「ものづくり」を未来に向ける仕掛けとして、「IoTメイカーズ創出プロジェクト」が2017年8月より実施されています。「あらゆるモノをインターネットに接続する」IoT製品の開発について、デザイン面を西日本工業大学が、試作品づくりを北九州工業高等専門学校のものづくりセンターが、それぞれサポートしていきます。

支援で生まれたベンチャーの現在

実際にこれらの取り組みを利用して起業したベンチャーは、起業後も北九州市の支援施設などを利用し企業規模を拡大しています。

女性起業家としては、社会生活でのコミュニケーション法や話し方講座、企業研修などを行う「株式会社SCAi」を渡邉由規代表取締役が2013年に設立しました。渡邉氏は、北九州市テクノセンターを利用して事業を成功させた1人です。

コミュニケーションの基本である「話し方」にクローズアップした事業を展開し、同施設内の貸しオフィスで職員のサポートを受けながら成長を続けました。貸しオフィスを出た現在は、東京や福岡市などにスクールを4校開校し、活躍の幅を広げています。

ショールームを持たない家具の通信販売会社として、2014年に法人化した「株式会社若戸物産」を成功させた休場政博代表も、さまざまな支援や施設を利用した起業家です。

休場氏は経営拠点を自宅としながらも、商談や打ち合わせは小倉のシェアオフィスを利用し、経営コストを抑えました。開業前には、起業を支援するセンターや団体主催の勉強会にも積極的に参加し、経営の起業・実践に役立てたと言います。

元々は輸入家具の通販サイトであった運営サイト「デザイン家具ドットコム」は、現在国内でオーダーメイド家具を製造・販売し、内装業者や工務店などを顧客として事業を拡大しています。

このように起業家支援の取り組みは確実な成果を上げており、北九州市はこれからさらに起業家たちから熱視線を注がれるでしょう。


(提供:JIMOTOZINE )