株式市場は「時代の変化」に敏感だ。たとえば最近ではAIやIoT、電気自動車など「新時代の到来」を予感させる銘柄が注目される傾向にある。一方で、時代遅れの産業は急速な衰退を余儀なくされる。写真フイルムはその代表と言えるだろう。

もっとも、そんな「時代の変化」をいち早く感じ、経営改革に取り組むことで危機を乗り越え、さらなる成長ステージを切り拓く企業も少なくない。富士フイルムホールディングス <4901> はそんな企業の一つだ。

コダックと富士フイルム「明暗分けた」要因とは?

いまの若い世代にとって「カメラ」といえば当然デジタルカメラ(デジカメ)であり、写真フイルムの存在すら知らない人が多いかも知れない。

少なくとも1990年代までは、カメラといえば写真フイルムが主流だった。写真フイルムで世界最大の企業は米国のコダック、日本では富士フイルムが最大手であった。しかし、そんな写真フイルムも2000年をピークに激減を余儀なくされる。背景にはデジカメの普及があった。

富士フイルムの「フイルム部門の売上」は2000年に2500億円を越えていたが、2010年には約200億円まで縮小。一方の米コダックも2012年に上場廃止となるなど大きな打撃を受けたのである。

M&A、事業の多角化で増収増益を実現

もっとも、同じ写真フイルム大手でありながら、米コダックと富士フイルムの「その後」は対照的だ。富士フイルムの「その後」の存続・成長はM&A戦略を推進し、事業の多角化に積極的に取り組んだ結果といえる。

2001年、同社は米ゼロックスとの合弁事業であった複合機の富士ゼロックスを完全子会社化したのを皮切りに各方面でM&A戦略を展開、内視鏡などの医療機器、液晶フィルムなどの電子素材、化粧品、医薬品、再生医療などの分野で多角的な経営を推し進めた。その中でも、液晶関連の電子材料や化粧品の成長が業績回復に寄与している。

特に高機能性化粧水で人気となった「アスタリフト」は、富士フイルムの代名詞と呼べるヒット商品として、いまでは広く浸透している。筆者も発売当初は「写真フィルム会社が化粧品?」と違和感を抱いたものであるが、時代の変化を敏感に察知し、生き残りをかけた富士フイルムの経営戦略の一つだったのだろう。

株価は年初来高値を更新

8月14日、富士フイルムは2018年3月期の第1四半期(4〜6月)の決算を発表した。それによると売上が5%増の5715億円、本業の利益を示す営業利益は22%増の358億円といずれも好調だった。

ちなみに、2018年3月期の会社予想については売上2兆4600億円(6.0%増)、営業利益1850億円(7.4%増)と据え置いたままであるが、先に発表した第1四半期の営業利益はアナリストコンセンサスを40億円程度上回っていたためポジティブ・サプライズととらえられ、翌15日の株価は303円高の4245円と急騰している。

また、8月30日には2020年3月期の売上目標を2兆6000億円、営業利益を2300億円とする中期経営計画も発表。2017年3月期の実績比で売上は12%増、営業利益で33%増となる計算だ。この中期経営計画を達成すると、営業利益ベースで2008年3月期の2073億円を上回り過去最高益となる見通しである。

計画では主力となるイメージング部門、インフォメーション部門、ドキュメント部門の収益向上を図りつつも、M&Aにも今後3年間で5000億円を投資、海外・ヘルスケア・新規高機能製品などの開発を加速する方針だ。

株主還元にも積極的に取り組む

同時に富士フイルムは1600万株(発行済み株数の3.7%)、500億円を上限とする自社株買いも発表している。自社株買いは株主還元の一つで、発行済み株数が減り一株当たりのEPSを増やす効果がある。中期経営計画でも今後3年間で3000億円の株主還元を掲げ、配当で1000億円、自社株買いで2000億円を想定している。

中期経営計画と自社株買いを好感して、8月30日の富士フイルム株は4322円と95円上昇した。その後も継続的な買いを集めており、先週10月25日には4622円と年初来高値を更新している。逆風を乗り越え、成長を目指す富士フイルムの今後に注目したい。(ZUU online 編集部)