アパレル卸・小売企業の2016年度の売上高は前年度比1.42%となり、2期連続でのマイナスとなった。帝国データバンクが10月31日に発表した「アパレル関連企業の経営実態調査」によるもの。2017年度上期の倒産件数も148件と、前年同期比でほぼ横ばいの水準にある。アパレル小売業界は中小企業を中心に厳しい状況にあることがわかった。

2期連続の売上減 「小売」の不振が鮮明に

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(写真=PIXTA)

調査はアパレル卸・小売を主業とする1万7492社を対象としており、かばんや靴、アセサリー等の服飾雑貨を扱い企業は含まれていない。

アパレル卸・小売企業の2016年度売上高は平均で前年度比1.42%減となった。同0.39%減であった2015年度から2期連続での売上高減少となり、マイナス幅も拡大している。業態別に見ると、「卸」の同1.02%減に対し、「小売」は同1.61%減となっており、「小売」分野の不振が鮮明だ。「小売」の売上高減少は3期連続となる。

「小売」は「ユニクロ」を参加に持つファーストリテイリング <9983> や「しまむら」を経営するしまむら <8227> といった大手の売上高は増加傾向にある。一方で、そうしたファストファッション企業等との競争を余儀なくされている中小企業は苦境に立たされている。セールの増加等により、「小売」が「卸」よりマイナス幅が大きくなっている状況が生まれていると見られる。一方で、「卸」も2015年度の前年度比1.47%増からマイナス転落となった2014年度には同4.02%増を記録していた事を考えれば、売上高減少のペースは「小売」以上に大きなものとなっている。

2割以上が最終赤字 中小企業では経常利益も赤字に

アパレル卸・小売企業では損益状況も非常に厳しいものとなっている。売上高50億円以上の247社を対象に、2016年度の当期純損益の状況を調べたところ、22.3%にあたる55社が最終赤字となっている。赤字企業の割合は前年度の19.4%から2期ぶりに2割超えとなった。業態別に赤字企業の割合を見ると、「卸」の17.6%に対し、「小売」では27.9%に上る。2015年末頃まで続いた円安の影響で、仕入れ価格が高騰した事に加え、不採算店舗の閉鎖等影響で特別損失を計上する企業が目立った事も、最終損益に影響を与えた。

売上高経常利益を見ても、業績悪化の傾向は見られる。2016年度の売上高経常利益率は全体の平均で1.24%となっており、前年度比の1.54%から0.3ポイント悪化した。業態別に見ると、「卸」の1.48%に対し、「小売」は0.64%となっており、こちらでも「小売」の苦戦が見られた。企業規模別に見ると、売上高50億円以上の企業では3.93%であるのに対し、10億円未満の企業ではマイナス0.39%とマイナスに沈んだ。中小企業では、減収により、損益分岐点を下回るケースや、セールの増加が大きく影響したと見られる。アパレル卸・小売業界は苦境が続くが、中小企業の状況は更に厳しいものとなっている。

回復の兆しが見えないアパレル業界

低迷の続くアパレル卸・小売業界であるが、今後も厳しい状況は続きそうだ。近年では消費者がインターネットでの購入を行うケースも多い。「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイ <3902> は業績を大きく伸ばしているが、一方でそうしたサービスに顧客を奪われている企業も中小を中心に多くある。10月にはアマゾンジャパンが国内アパレル市場へ本格参入するとも報じられており、今後も競争激化は避けられない。

また、消費の減少傾向も継続の兆しを見せている。矢野新経済研究所の「繊維白書」によると、国内衣料品市場の市場規模は1991年の15.3兆円から2013年には10.3兆円にまで減少している。少子高齢化により、アパレルに関心のある層が減少している事も原因であろう。冒頭の調査では、地域別の売上高伸び率も分析されているが、四国や北陸で大きな減少幅を記録する一方、関東や九州等、人口流入を記録する都道府県を抱える地域では、減少幅は小幅に留まる。人口動態も市場に与える影響は大きい。今後人口減少が進む日本では、市場の急回復は見込みづらい。

更に、アパレル業界は海外で生産するケースも多く、輸入比率が高いという特徴がある。円安が進行した2015年度下期は、これまで半期ベースで概ね150社程度で推移してきたアパレル卸・小売企業の倒産件数が175社へと増加している。10月22日の総選挙で自民党が圧勝した事を受け、これまでの金融政策が継続されれば、為替が円安へ振れる可能性もあり、厳しい状況は続く可能性がある。

アパレル卸・小売企業の2017年度上期の倒産件数は前年同期から1社増え、148件となっている。現在の倒産件数は概ね例年並みとなっているものの、今後も状況の回復が見込みづらい事を考えれば、倒産同行にも注意を払う必要がありそうだ。比較的業績堅調な大手でも、ファーストリテイリングは国内ユニクロ事業で2期連続の営業赤字を記録する等、海外で稼ぐケースも含まれており、中小企業の経営環境は更に厳しいものであると見られる。アパレル冬の時代は長引きそうだ。(ZUU online編集部)