佐賀県唐津市と、その西隣にある玄海町が協力して取り組んでいる「唐津コスメティック構想」。佐賀の持つ農業ポテンシャルを生かし、化粧品の原料調達から製造・販売までを、この二つの市と町で完結することで地域経済の活性化を目指す目的で生まれました。

2013年11月11日に「ジャパン・コスメティックセンター」を設立・始動した同構想は、4年の歳月を経て、その理想を実現させ始めています。唐津市と玄海町が「唐津コスメティック構想」にかける思いと取り組みを紹介します。

(写真=PIXTA)
(写真=PIXTA)

唐津でなぜコスメなのか


唐津市と玄海町が取り組むコスメティック構想の手本となっているのは、「フランス・コスメティックバレー」です。フランス・コスメティックバレーは、フランスのシャルトル市を中心に広がるコスメ産業の集積地です。ここには化粧品の原料を作る農業地、生産工場、研究施設、さらに世界的に有名なブランドのルイ・ヴィトンやシャネルといった企業が産業クラスターを形成し、成功を収めています。

同構想を立てる以前より、唐津では輸入化粧品の成分分析や輸入代行を行う企業がミニクラスターを形成していました。さらには化粧品の原料栽培に活用できる農地や豊かな水源もあり、フランス・コスメティックバレー協会の関係者が同市を訪れた際、「シャルトル市とよく似ている」ことに着目します。

「唐津をフランスコスメのアジア拠点に」と考えたフランス・コスメティックバレーと、これを好機と捉えた唐津市はすぐに動き始めました。ここから「唐津コスメティック構想」が生まれたのです。

現在、コスメティック構想の主軸となっているのは、会員制産学官連携組織である「ジャパン・コスメティックセンター」です。同組織は、コスメティック構想に関わる企業、組織、農林水産業などを集約し、国際取引の拡大やコスメ環境の整備などを進めています。この先は雇用の創出、経営資源の集積、そこから唐津コスメに新たな価値を付加させ地域経済を活性化し、ビジネスサイクルをさらに促進させる計画です。

アジアに羽ばたく唐津コスメ


ジャパン・コスメティックセンターの設立から4年、コスメティック構想は実益を生むための新たな段階に入りました。

2016年、耕作放棄地に自生するミカンの花水を原料とする化粧品を全国販売しました。その他地元の化粧品原料のPR活動も積極的に行い、珍しい白イチゴや椿油、トウキなどの植物を「生産者の顔が見える化粧品原料」として化粧品産業技術展にて紹介したところ、反響を呼びます。

2017年4月3日には、ジャパン・コスメティックセンターの協力で待望の地域商社「KaratsuStyle」が設立しました。同社では地元コスメの海外販売だけではなく、地元産原料を使用したコスメ開発の企画にも携わっています。

同社はさらに唐津産の柑橘である「げんこう」を利用したドリンク酢なども開発し、国内にて販売中です。このドリンク酢は、国内の美容健康商材を集めた「ジャパンメイド・ビューティアワード2017」優秀賞を受賞しています。

そしてKaratsuStyleは設立から間もない同年6月、地元産原料である白きくらげを使用した美白石鹸「白美の雫」を韓国で販売開始しました。経済成長著しいアジア圏を中心に、今後さらに唐津・玄海生まれのコスメをグローバルに広めていくでしょう。

佐賀全体に広がるコスメの輪


唐津市と玄海町から始まったコスメティック構想は、現在佐賀全体に広がりつつあります。2017年8月23日、佐賀市は、佐賀県、唐津市、玄海町と、「美と健康」をテーマに連携協定を締結しました。この4者の連携で行うのは、「藻類」の活用です。藻類を原料とする化粧品や健康食品を展示会やセミナーで情報発信を進めていきます。

元より佐賀の農林水産業の底上げも視野に入れていたコスメティック構想は、徐々に、しかし確実に成果を上げ、その輪を広げています。国だけに頼らず地方主導で行う「本当の地方創生」に向けた佐賀の取り組みは、低迷の続く佐賀の農林水産業に新たな風を吹き込んでいくでしょう。

(提供:JIMOTOZINE)