「世界同時株高」が鮮明となってきた。ダウ工業株30種平均が最高値を更新、日経平均株価も約26年ぶりの高値となる中、新興国の株式市場でも過去最高値の更新が相次いでいる。特に新興国のパフォーマンスは先進国を大きく上回っており、今後さらなる注目を集めそうな情勢だ。

今回は新興国の株高の背景を探ってみよう。

世界経済の「けん引役」は先進国から新興国へ

新興国,株価
(写真=Thinkstock/Getty Images)

10月10日、IMF(国際通貨基金)が公表した最新の「世界経済見通し」によると、世界経済の成長率は2017年が3.6%、2018年が3.7%と前回の見通し(7月)からそれぞれ0.1ポイントの上方修正となった。2016年の3.2%から成長を加速させ、その勢いを来年も維持する見通しである。

こうした世界経済の好調が先進国および新興国の株価上昇の要因の一つとなっていることに疑いの余地はない。

ちなみに、先進23カ国の株価で構成する「MSCIワールド・インデックス」の年初来の上昇率は11月6日現在で+16.9%と好調だ。しかし、それをさらに上回っているのが新興国の株価である。新興24カ国で構成する「MSCIエマージング・マーケット・インデックス」の上昇率は+31.2%で先進国の2倍近いスピードで上昇しているのだ。

もっとも2018年以降の世界経済の成長率については3.7%で横ばいが予想されている。先進国については2017年の2.2%から2018年は2.0%、2019年1.8%、2020年1.7%と伸びが鈍化する見通しだ。その一方で、新興国の成長率は2017年の4.6%から2018年は4.9%、2019年と2020年は5.0%と加速する見通しである。

世界経済のけん引役は成長が鈍化する先進国から「成長が加速する新興国へ」のバトンタッチが期待されており、そうした期待が株価のパフォーマンスにも反映されている様子だ。

低インフレがもたらす「好循環」で成長を加速

ところで、金融政策の正常化を目指す主要先進国では「インフレの鈍化」が悩みの種となっているが、新興国ではむしろ「成長加速の原動力」として歓迎されている。

IMFは新興国のインフレ率について、2017年は4.2%と昨年の4.3%から低下する見通しを示している。この数字は2008年の9.2%の半分以下であり、とりわけ2011年の7.1%から低下傾向が顕著となっている。

一般にインフレ率が高いと個人消費は萎縮する傾向にあるとされている。逆にインフレ率の低下は「購買意欲を高め、消費を押し上げる効果がある」との考え方もある。低インフレは政策金利の引き下げを可能にすることから金融緩和による景気の下支えも容易となり、新興国では消費活動と企業活動の活発化という相乗効果をもたらしている。

資源価格の高騰も追い風

また、新興国の多くが「資源国」であることも見逃せない要因だ。すなわち、最近の資源価格の高騰も新興国の株価を後押ししている側面もある。11月6日のニューヨーク市場では原油価格が2年4カ月ぶりの高値を付けており、原油を中心とした「鉱物資源」の価格が好調だ。

原油価格は米国でのシェールオイル増産によって需給が崩れたことから、2016年の年初には12年ぶりの安値を付けたが、昨年12月に主要産油国が15年ぶりに減産で合意したことで持ち直している。

今月30日にはOPEC(石油輸出国機構)総会が予定されているが、減産延長が見込まれており、供給過剰解消への期待感が相場を押し上げている。

また、EV(電気自動車)の普及に伴いリチウム価格が高騰しているほか、銅やアルミニウムといった非鉄金属の価格も大きく上昇している。

金融政策の正常化がリスク要因に?

このように新興国の株式市場は、低インフレによる好循環のほか、資源高やドル安も追い風となって活況を呈している。来年以降も低インフレと成長の加速が見込まれており、新興国市場の見通しは明るい。ただし、投資である以上リスクが全くないわけではない。

IMFは景気見通しに対するリスクとして、主要先進国での「金融政策正常化」の動きを挙げている。米国では10月からバランスシート(資産残高)の縮小が開始され、12月には追加利上げが実施される見通しだ。また、欧州でも事実上のテーパリング(量的緩和の縮小)が開始されたほか、日本でも目標を「量」から「金利」へと切り替えたことで、資産の購入額は目標を大きく下回っている。

IMFはこうした主要国での「金融政策正常化」の動きから、ドルなどの先進国通貨の金利が上昇することで、世界的な資金の流れが新興国から先進国へと向かい、新興国の金融市場が不安定になる恐れがあるとも指摘している。

また、資源価格の高騰は「諸刃の剣」であり、インフレリスクが高まるようであれば先進国で金融正常化の動きを一段と加速し、新興国の消費を抑制する恐れがある。

新興国特有の「感染リスク」にも注意

最後に新興国市場の特性として国境を越えた「感染リスク」にも注意が必要だ。IMFは中国で国有企業を中心に債務が膨らんでいることを引き続き警戒しており、成長が「急速に」鈍化するリスクがあるとして懸念を表明している。

中国で債務問題が表面化した場合など、特定の国の問題が他の新興国へも飛び火する可能性がある点には留意すべきであろう。(NY在住ジャーナリスト スーザン・グリーン)

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