「外国人の別荘需要が強いニセコや、リゾート地として名高い軽井沢、熱海、石垣島などでは、団塊世代や富裕層を中心に別荘需要が高まっており、つれて土地の取引価格も大幅上昇している」
これは日本銀行が2007年1月の「地域経済報告」で指摘したものだ。それから10年、2017年9月に「基準地価(都道府県基準地価格)」が公表され、ニセコ地域の住宅地が2年連続して地価上昇率全国1位に輝いた。
ニセコが支持される理由は何なのだろうか。また今後も成長が見込めるのだろうか。
オーストラリア人が見出した世界水準リゾートのニセコ
札幌から車で約2時間、およそ100キロメートル離れたところにあるニセコ地域。ニセコアンヌプリを頂点とするニセコ連峰を囲む5つの町(岩内・倶知安・共和・蘭越・ニセコ)からなる山岳丘陵地帯であり、観光の中心は倶知安町(くっちゃんちょう)とニセコ町だ。
日本に急速にスキーが普及した1960年代、ニセコ地域は国体のスキー会場となって全国的なスキー場としての地位を確立し、第二次スキーブームの1980年代後半に大きく拡張したが、バブル期の終えんとともに停滞を余儀なくされた。
ところが2000年以降、ニセコ地域には良質なパウダースノーを求めるオーストラリア人が頻繁に訪れるようになり、オーストラリア資本をはじめとする開発が急速に進んだのである。
マンションやコンドミニアムなどの不動産開発は、ニセコひらふ地区からはじまった。2005年、同エリアの住宅地・山田の基準地価は1平方メートルあたり1万2,000円に過ぎなかった。しかし、2006年には1万6,000円、2007年には2万2,000円、2008年にはついに3万1,000円となった。
最近になって、山田の南西に位置する住宅地・樺山の基準地価も、2015年1万6,500円、2016年2万1,000円、2017年2万7,000円と上昇している。
外国人富裕層と外国人労働者を歓迎するニセコの地元民
ニセコ地域の魅力はいくつもある。まず「Japan」と「PowderSnow」を組み合わせた「Japow」という造語まで作られた良質な雪質だ。さらに安全と滑走の自由を両立させた「ニセコルール」による世界有数のスキー場としての地位、インターナショナルスクールまで開校されるほどの町中に徹底された外国語対応も特筆すべき点だろう。
これらに魅かれて、オーストラリアに限らず欧米やアジアからスキー客が訪れる。高級ホテルや別荘、コンドミニアムが建ち並び、スキーシーズンはお客さまもスタッフも外国人であふれるインターナショナル・リゾートだ。
外国人は観光あるいは労働に限らず、長期滞在するには住民登録が必要だ。倶知安町役場の統計資料によると、2003年9月は全世帯7,306、人口1万6,165人のうち、外国人は60世帯64人と1%に満たなかった。しかし、2017年9月は全世帯7,986、人口15,343人のところ、外国人419世帯(5.2%)547人(3.5%)と飛躍的に増えている。人口減少の自治体が多い北海道にあって、倶知安町とニセコ町の人口が横ばいである理由は、スキーを長期滞在で楽しむ外国人富裕層と、そこで仕事を求める外国人を地域が歓迎しているからに他ならない。ただしスキーリゾートのため、4月から10月までの外国人居住者は半分以下に激減する。
外国人・外国資本と地元民の協業がニセコ発展のカギ
国土交通省は2018年度予算に、ニセコ地域と札幌圏をつなぐ倶知安余市道路の整備を計上した。完成時期は未定だが、開通すれば新千歳空港からニセコ地域への所要時間が40分も短くなる見込みだ。米国高級ホテルのザ・リッツ・カールトンとハイアットホテルアンドリゾーツは、2020年までにニセコ地域にホテルを建設することを表明している。
注目されるニセコ地域では、もともとニセコをリゾート地として開発・発展させてきたオーストラリア人が所有していた別荘やコンドミニアムを、中国や東南アジア系の富裕層が投資を目的として高値で購入している。外国資本の不動産会社が外国人向けに特化した市場を作り、不動産価格が上昇しているのだ。
一方、ニセコ地域が外国資本とうまく協業ができれば、ブランド価値をさらに上げることが可能だ。その一つの取り組みとして、2017年9月に地元事業者らが発展する街づくりを目指して、「一般社団法人ニセコひらふエリアマネジメント」を設立した。外国人など不在地主から分担金を徴収して地域振興に生かす仕組み作りを進める。
2030年度に予定される北海道新幹線の延伸や招致を目指す冬季オリンピックに向けた街づくりを進められるのか、ニセコ地域の地元住民の動きから目が離せない。
(提供:The Watch)
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