地元の消費促進の切り札として「地域通貨」の存在が、電子マネーなどの活用によって再び注目を集めつつある。過去には、維持管理の煩雑さやコストの問題から今一つ盛り上がりに欠ける面もあった。今回は、地域通貨の特徴のみならず、電子化による変化や将来性について解説する。

あなたの地元にもあるかもしれない ? 地域通貨とは何か

Japan
(写真=PIXTA)

地域通貨はその名の通り、特定の地域においてのみ通用するお金のことで、主に地域経済活性化を目的として各地で導入されてきた。これまでに全国で500以上の地域通貨が誕生しているという (すでに運用停止済みのものも含む) 。

滋賀県草津市を中心に流通する「おうみ」など、全国区の知名度を持つものも存在するが、地元の人にさえあまり存在を知られていない地域通貨も数多い。もしかしたら、あなたの地元でも地域通貨がひっそりと運用されているかもしれない。

地域通貨が浸透しなかった一因として、紙幣やカードもしくは通帳などを財布に入れて持ち歩くのが面倒という点があった。そもそも財布が、地域通貨ではなく日本円のお札や小銭、クレジットカード、ポイントカード、会員証などでいっぱいという人も多いだろう。さらに地域通貨も入れるとなると大変だ。

ところが、近年普及しているスマートフォンや電子マネーなどの力を借りて、地域通貨の利便性が大きく改善されようとしている。電子化には、利用者のみならず、地域通貨の発行者にもメリットがある。紙の通貨の印刷や保管の必要もなくなり、管理も効率的に行えるようになるからだ。

地域通貨の広がりがもたらす可能性

電子化によって期待できるのは輸送や管理の効率化だけではない。スマホなどのデバイスが活用されるようになれば、地域外の住民や海外の観光客も利用しやすくなる。従来の地域通貨は地元の人が地元で使う、いわば「地産地消型」の性格を持つものが多かったが、この点も変わるかもしれない。

たとえば北海道苫小牧市の「とまチョップポイントカード」。とまチョップポイントと連携したご当地WAONの「とまチョップWAON」を使えば、苫小牧市だけでなく全国のどこで使っても、利用金額の一部が「ふるさと創生」に生かされる。たとえば就職などで離れた地元、ふるさとの活性化に一役買うことができるのだ。

電子化で、紙幣がなくなったりスタンプカードに判を押すことがなくなったりすれば便利なように思えるが、地方在住の高齢者の中には、電子化に抵抗を感じる人たちもいるかもしれない。その対策として、長崎県の壱岐市、五島市などで流通している「しまとく通貨」では、四角い「電子スタンプ」を採用した。スマホ画面に本物のスタンプと同じように電子スタンプを押すことで、画面に陰影が現れて同時に決済完了となる仕組みだという。こうした工夫で、高齢の店主も簡単に使いこなしているそうだ。

地域活性化の切り札となるか、一過性ブームに終わるか

このように地域通貨は、スマホや電子マネーと組み合わされることで使い道や利用者層を広げつつある。

しかし、ご存じのとおり電子マネーは既に多数存在している。いくら地域通貨が便利になっても、電子マネーとしてのライバルは少なくない。そもそも決済できる場所の多さ、サービスの便利さなどでは大手企業には勝てないだろう。

地域通貨はあくまで、その地域ならでは、その地域通貨ならではの特徴を打ち出さなければいけない。電子化によって地域外にどれだけ利用者を獲得しても、その地域に根ざしたサービスを忘れてはいけない。今後は、地域の住民にこそ支持される、その地域の特性を生かしたサービスを追求することで、一過性のブームに終わらせることなく、その地域の活性化にもつなげられるのではないだろうか。(提供:大和ネクスト銀行

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