お金に振り回されないためにはどうすればよいのか。有名著者によるお金指南。今回は「お金を信用に変えよう」「お金を使って、信用をつくろう」「モノを通して、教わろう」「担当者の名前を覚えよう」「人間関係も、メンテしよう」購入代より、メンテ代にかけよう」「買い直すより、メンテしよう」の7つの方法をご紹介します。
(本記事は、中谷彰宏氏の著書『品のある稼ぎ方・使い方 ~人に愛される人が、お金にも愛される。』、ぱる出版、2017年11月1日刊)の中から一部を抜粋・編集しています)
【関連記事 『品のある稼ぎ方・使い方』より】
(1) お金を使って信用を作るコツ
(2) 円やドル、金(きん)よりも「自分の通貨」を増やそう
(3) おごる時は「次回は、ごちそうになります」と言おう
(4) お詫びに行く時に持っていくべきは菓子折りではない
(5) 品がある人は「ウィン・ウィン」とは言わない
お金を信用に変えよう
なぜお金は、とりあえず持っておきたいのでしょう。
お金さえあれば、いろいろなものに交換できるからです。
一見、お金は交換性が高いのです。
「お金」と「信用」を考える時に、信用があれば、お金に変わります。
担保がなくても、信用があれば、「給料を払って採用しよう」とか、「お金を貸してあげよう」とか、「お金の支払いを待ってあげよう」と言われます。
お金があれば信用が買えるかというと、買えません。
「あの人はいくら持っているから信用できる」というのは、ないのです。
その人に何か専門的能力があるとしたら、転職しても次の会社に採用されます。
いくら銀行に預金があっても、それだけでは採用されません。
お金から信用は生まれないからです。
ここで「銀行に預金があったら、お金を貸してもらえる。これは信用ではないか」と反論する人がいます。
それは「信用」ではありません。
お金からお金を生んでいるだけです。
銀行が信用しているのは、お金です。その人を信用しているわけではありません。
土地やお金を担保にとる時点で、その人は信用されていないのです。
信用は人間につくものです。
いかに今あるお金を信用に変えていくかです。
信用のほうが、お金よりはるかに交換性が高いのです。
品のある稼ぎ方とは、お金からお金を生むことではなく、信用からお金を生むことです。
品のあるお金の使い方とは、お金を勉強・体験・人脈に使うことなのです。
お金を使って、信用をつくろう
お金から時間を生み出せば、その時間を使って勉強できます。
勉強で専門的な能力を身につけたら、それは信用になります。
お金を使って何かを体験することで、その体験から能力がついて信用につながります。
交際費を使って人脈をつくることで、信用につながることもあります。
依頼の電話1本で採用してもらえるのは、親が偉い人だからではありません。
お金を使っていろいろなところへ顔を出し、コツコツ人脈をつくってきたから、人に頼みごとができるようになったのです。
これも能力の1つです。その人の付加価値としての信用を生み出せるのです。
最も交換性が悪いのは、お金をお金のまま持っておくことです。
お金を何かに置きかえて、信用をつくることが大切です。
お金を使って勉強して、品格を身につけたら、それが信用になります。
人間は、
①お金で貯めている人
②信用で貯めている人の2通りに分かれます。
お金だけあって信用のない人は、品がありません。
お金はなくても信用のある人は、品があるのです。
モノを通して、教わろう
ブランド品を買いに行くのにも、「品のある行為」と「品のない行為」とに分かれます。
「私は○○のブランドが好きなんです」と言う人がいました。
だからといって、その人に品があるとは言い切れません。
お金の使い方に品がある人は、モノを買いに行った時に、お店の人に教わっているのです。
オーダーメイドの大和屋シャツ店にシャツをつくりに行きます。
シャツを買いに行くのではありません。
シャツをオーダーメイドでつくる過程で、菱沼店長からシャツについての考え方と美学を教わりに行くのです。
「そのオマケとして、シャツがもらえる」ぐらいの感覚です。
品のある人は、たとえ安いモノでも、それを買う行為を通して何かを学びます。
「品」とは、学ぼうとする姿勢です。
「オレがカネを出しているんだから、オレにモノをくれ」というのは、お金をモノと交換しているだけです。そういう人は、品がなくなります。
お金を知識と交換することで、品に変わるのです。
担当者の名前を覚えよう
「私はこのブランドが好きで、たくさん持っています」と言う人がいました。
「いつも誰から買っていますか?」と聞くと、「知りません」と言うのです。
これは「品のない買い方」です。
本当にそのブランドが好きなら、買ったお店の人のことも覚えています。
夢のない人は、そのブランドのモノが好きなだけで、お店の人にはまったく興味がないのです。
お店の人は、商品を買ってほしいのはもちろんですが、それ以上に、そのブランドの哲学を買ってほしいのです。
お店の人がブランドの哲学を語る時は、買いに来た人の先生になっています。
誰から買っているかまったく覚えていないのは、品のない買い方です。
1つのモノを買ったら、そのお店の人と学ぶべき友達になるのが品のある買い方です。
品は関係から生まれます。
人とモノが関係を結ぶことはできません。
関係を結ぶのは、人と人です。
商品を買うことで人間関係ができたら、品のあるお金の使い方です。
なんの人間関係も生まれなければ、品のある買い方にはなっていないのです。
人間関係も、メンテしよう
品のない人は、モノにお金をかけて、メンテにお金をかけません。
「私は財布が好きで、財布にはこだわっています」と言う人がいました。
財布を見せてもらうと、たしかにブランド品ですが、すり切れています。
「これ、メンテしないの」と聞くと、「エッ、財布のメンテなんかするんですか」と、驚いていました。
「こだわる」とは、メンテしながら大切に使うことです。
すり切れても平気でいたり、すり切れるたびに買いかえるのは、「こだわっている」とは言わないのです。
スーツを買う時にお店の人にメンテについて聞く人は、品のある買い方のできる人です。
メンテの方法を聞かない人は、メンテに興味のない人です。
メンテの仕方は、聞かないとわからないのです。
帽子を買う時も、帽子を買うこと自体が品のある行為なのではありません。
その帽子のメンテについて聞く時に、品が生まれます。
Yシャツを買った時に、メンテについて聞かないで格安のクリーニング屋さんに出してしまう人は、品のあるお金の使い方にはなっていないのです。
モノとの関係性は、人間との関係性とまったく同じです。
モノのメンテを怠る人は、人づきあいのメンテも怠るのです。
異業種交流会やパーティーで名刺をたくさん集めても、後はほったらかしです。
人間関係も、ベストな状態にメンテをすることが大切です。出会ったら終わりということではありません。
人間関係を大切に育てて、壊れそうになったら補修するところに品が生まれるのです。
購入代より、メンテ代にかけよう。
いいYシャツは、当然、いいクリーニング屋さんに出したほうがいいのです。
もちろんクリーニング代は高くつきます。
つい「エッ、そんなにクリーニング代がかかるの?」と、言う人がいます。
品のない人は、いいモノを買った分、メンテ代をケチることによって帳尻を合わせようとします。
品のある人は、いいモノを買ったら、それをきちんとメンテすることによって、長く使ってコスパを良くします。
品のある人とない人とで、帳尻の合わせ方がまったく違うのです。
品のない人は、任との出会いに関しても、とりあえずたくさんあって、切れたらまた新しく会えばいいと考えます。
品のある人は、たとえ会っている人が少なくても、その人間関係を常にメンテしていくことで長いつきあいをします。
品のない人は、値段の話をする時に、「これってメンテ代がかかるんですよね」と言います。
その時点で、メンテに興味がないことがわかるのです。
買い直すより、メンテしよう。
いろいろな商品が安くなっています。
故障した時にサービスセンターに問い合わせると、「買い直したほうがお得です」と言われます。
その時に「愛着があるので直してください」と言う人が、品のある人です。
きちんとしたブランド店では、「買い直したほうがお得です」とは言いません。
それは決してメンテ代で稼いでいるからではありません。
直して使うことが、そのモノを愛するということです。
たとえ新しい商品を買うより高くついたとしても、1つのバッグを何度も直して使うことが、その人の品になります。
ヨーロッパのイタリアなどでは、相続税がありません。
そのかわり、相続した家財装具すべてを目録にします。
椅子1脚まで目録に載っているのです。
目録を見ると、何百年も前から同じ椅子を直しながら使っていることがわかります。
品のない人は、せっかく高いYシャツを買っても、安いクリーニングに出してボロボロにしてしまいます。
「クリーニングに出したら、すぐ傷んだ」と、シャツ屋さんに文句を言うのは間違っています。
その人、メンテに対する意識が低いのです。
イチロー選手は、グラブやバットを大切にしています。
それがイチロー選手のメンテに対する意識の高さです。
自分が扱っているモノをメンテして使っていくという意識がどれだけあるかで、品のあるなしが分かれるのです。
中谷 彰宏(なかたに・あきひろ)
1959年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。博報堂に入社し、8年間のCMプランナーを経て、91年に独立し、株式会社中谷彰宏事務所を設立。人生論、ビジネスから恋愛エッセイ、小説まで、多くのロングセラー、ベストセラーを世に送り出す。「中谷塾」を主宰し、全国でワークショップ、講演活動を行う。