お金に振り回されないためにはどうすればよいのか。有名著者によるお金指南。今回は「自分の価値観を持とう」「役に立つことで、能力を磨こう」「上司より、社会へのマナーを優先しよう」「モノより、ヒトにお金をかけよう」「足元を見て稼がない」「円よりも、『自分の通貨』を増やそう」という6つの方法をご紹介します。
(本記事は、中谷彰宏氏の著書『品のある稼ぎ方・使い方 ~人に愛される人が、お金にも愛される。』、ぱる出版、2017年11月1日刊)の中から一部を抜粋・編集しています)
【関連記事 『品のある稼ぎ方・使い方』より】
(1) お金を使って信用を作るコツ
(2) 円やドル、金(きん)よりも「自分の通貨」を増やそう
(3) おごる時は「次回は、ごちそうになります」と言おう
(4) お詫びに行く時に持っていくべきは菓子折りではない
(5) 品がある人は「ウィン・ウィン」とは言わない
自分の価値観を持とう
品のあるお金の使い方は、収入を減らすことではありません。
お金を、自分の価値に交換できることです。
見栄のためにお金を使うと、品がなくなります。
たとえば、人に見せびらかすために時計やクルマを買うのは、見栄です。
そのモノが好きで、たとえ高くても買う人は、自分の価値観で買っています。
他者承認を必要としないものが価値観、他者承認を必要とするものが見栄です。
価値観のない人は、見栄に走るのです。
「価値観」の反対語は「見栄」です。
「見栄」の反対語は、「見栄を張らない」ではなく、「価値観」です。
自分の価値軸を持てば、お金よりも価値軸のほうが大切になります。
お金を価値軸と交換することが、品のあるお金の使い方なのです。
役に立つことで、能力を磨こう
品のあるお金の稼ぎ方は、人の役に立ちながら稼ぐことです。
人の役に立たないで稼ぐのは、品のない稼ぎ方です。
稼ぎ方にも2通りあるのです。
普通は人の役に立つことによって稼げます。
中には、人の役に立たなくても稼げることがあります。
ギャンブルで稼ぐのは、世の中の人のためにはなっていません。それは品のない稼ぎ方です。
「能力を生かして人の役に立ちたいのに、自分の能力がよくわからない」と、悩んでいる人がいます。
言っていることは、一見、正しいように感じます。これは品のない考え方です。
品のある考え方は、人の役に立っているうちに自分の能力が磨かれて、「これが自分の能力だったんだ」と気づくことです。
人の役に立つことをすることが、能力です。
人の役に立ちながら、自分の能力が磨かれていきます。それが品のある稼ぎ方になるのです。
上司より、社会へのマナーを優先しよう
品があるかないかは、その人の意識している範囲の広さで決まります。
誰の役に立とうと思っているかで分かれるのです。
品のない人は、上司がその人の世界のトップにいます。
品のある人は、社会を意識して、社会の役に立とうとしています。
同じように見えますが、まったく逆です。
上司と一緒に新幹線に乗った部下が、上司の荷物を棚に載せようとしていました。その行為は、ほかの乗客が通路を通る邪魔をしています。
よその人に優しくしても、別に給料は上がりません。
自分の収入を2割増しにしたいがゆえに、まわりの人にどんなに迷惑をかけても、上司を優先するのです。これが品のない形になります。
飛行機が遅延した時に、上司に好かれようと思っている人はCAに文句を言いに行きます。そこで文句を言っても始まらないのです。それは上司に気に入られたいがための行為です。
航空会社からすると、きわめてマナーのない行為になります。
乗客はみんなガマンしているのに、1人だけ文句を言っているのです。
機内で「この人を誰だと思っているんだ」という声が聞こえてきます。
それがどんなにみっともないことか、本人はまったく気づかないのです。
上司に気に入られるためには、残業と飲み会はしたほうがいいのです。
しないほうがいいことは、勉強です。
上司より高い能力が身につくと、上司のメンツをつぶすことになるからです。
服装も、上司よりダサい格好をしたほうがいいのです。
上司にどんなに気に入られても、年収が2割以上増えることはありません。
その人は将来が不安なので、頑張って貯金をします。それは勉強代が貯金にまわっているだけです。
一方、品のある人は、上司に気に入られることよりも、社会への貢献を大切にします。
残業と飲み会をしないかわりに、勉強して自分の専門能力を磨いて、世の中の人の52役に立とうとするのです。
これが品のあるお金の使い方になるのです。
モノより、ヒトにお金をかけよう
品のない人は、ゴルフを習う時に、ゴルフクラブにひたすらお金をかけます。
1回使ってダメなら、次のクラブに買いかえます。
品のある人は、コーチ代にお金をかけて、ちゃんとしたレッスンプロに習います。
人間にお金を払うか、モノにお金を払うかで、品のある人とない人とに分かれるのです。
品のない人は、レッスンプロの料金を聞いて、「1時間でこんなにするの?」と思います。
それでいて、モノに関しては、どんなにクラブが高くても平気です。
パターばかり買っていても、あまり高いとは感じないのです。
品のある人は、人間にかけるお金を高いとは感じません。
レッスンプロがその知識と技術を得るために膨大なコストをかけてきたことを、きちんとわかっているからです。
会社においても、人にお金をかけることは大切です。
大きい会社に限らず、従業員が1人しかいない会社でも同じです。
社員を育てるためにお金をかけるか、インテリアにお金をかけるかで分かれるのです。
インテリアにお金をかけているわりに、社員にお金をかけていないお店は、品のないお店になります。
オシャレなインテリアと品のないスタッフの立ち居ふるまいとの落差で、品のなさがきわ立ってしまうのです。
品のあるお店は、中のインテリアにはお金がかかっていませんが、スタッフがキビキビ動いていて、感じのいいお店になります。
社員を1人でも雇ったら、モノよりもヒトにお金をかけていくことです。
ヒトにかけるお金を「高い」と感じない人は、リーダーとしての品があるのです。
人件費は、どうしても高く感じます。
雇われている側は「給料が安い」と考えています。
雇った側は「給料が高い」と思いがちです。それをどう乗り越えるかです。
「土・日休みで1カ月の実質労働が20日間なのに、残り10日間にも給料を払わなければいけないのか」というのは、人を雇う側になって初めて考えます。
この時に「高いな」と感じた時点で、その人は品のないリーダーになってしまうのです。
足元を見て稼がない
稼ぐためには、そのモノがないところに行って売るのが教科書の鉄則です。これは需要と供給の関係です。
みんなが欲しがるので、値段をつり上げられるのです。
経済学の本にも「需要と供給の関係で価格が決まる」と書いてあります。
ここには「品」の発想はありません。
災害の時に、一番ありがたい存在がコンビニでした。
モノがないところでは、1000円のカップラーメンでも売れます。
需要と供給の関係から言うと、正しいのです。ただし、ここには「時間」の発想がありません。
災害の時なら、カップラーメンを1000円で売っても売れます。
ただし、復興したあとに「あそこの店は最低だ」と言われて、誰もそのお店で買わなくなります。
ここで一気に信用をなくすのです。
需要と供給の関係は、足元を見る商売になって、長期的な関係が築けないのです。
品は、長期的なスパンで物事を考えることです。
お店を持たない移動式のセールスマンより、店を構えている人は信用されます。
不義理をすると商売が成り立たないからです。
需要と供給の関係だけで考えていると、「信用」が欠落してしまうのです。
ブランドは、長期的に信頼関係をつくっていくことです。
災害が起こると、物資が足りなくなります。
現金は持っていないし、銀行も使えなくなっています。
この時に、
①定価で売るお店
②「後払いでいいから、持って行ってください」と言うお店
③カップラーメンを1000円で売るお店の3通りに分かれます。
信用されるのは、「後払いでいい」と言ってくれるお店です。
カップラーメンを1000円で売るお店は、長期的に見ると経営が成り立たなくなるのです。
円よりも、「自分の通貨」を増やそう
「お金を貯めるには、円がいいのか、ドルがいいのか、金(きん)がいいのか」という質問があります。
そんなもよりはるかに上なのが、「自分の通貨」を増やすことです。
「自分の通貨」といっても、仮想通貨のようなものではありません。
大昔からある「信用」のことです。
信用度が高ければ、「自分の通貨」は1対1以上の関係になります。
たとえば、「1万中谷円」で2万円を貸してもらえたら、倍強いということです。
逆に、1万円貸してもらうのに、「2万中谷円」を出すとしたら、半分の価値しかないのです。
実際、こういうことは日常でも起きています。
お金を借りるところは銀行だけではありません。
人間関係の中で、「あなたが言うのだから信用しよう」ということで、お金はまわってくるのです。
土地とか預貯金は見える担保です。
見えない担保は、その人を構築してきた実績や人間関係、専門的能力です。
採用するときに、その人の預貯金がいくらあるかは関係ありまえん。
専門的な能力とか、見えない形で持っているものが、その人の自分通貨です。
円よりもドルよりも金(きん)よりも、自分の通貨である「信用」のほうが、はるかに大切です。
これを「品」と言うのです。
国の通貨は、変動します。
株価のレアメタルも、変動します。
唯一、値崩れしないのが、その人の品なのです。
中谷 彰宏(なかたに・あきひろ)
1959年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。博報堂に入社し、8年間のCMプランナーを経て、91年に独立し、株式会社中谷彰宏事務所を設立。人生論、ビジネスから恋愛エッセイ、小説まで、多くのロングセラー、ベストセラーを世に送り出す。「中谷塾」を主宰し、全国でワークショップ、講演活動を行う。