お金に振り回されないためにはどうすればよいのか。有名著者によるお金指南。今回は「一番先に払おう」「飛行機代より、ホテル代にかけよう」「『高い』と言わない」「教養と金銭感覚を鍛えよう」「改良しながら、買おう」など6つの方法をご紹介します。
(本記事は、中谷彰宏氏の著書『品のある稼ぎ方・使い方 ~人に愛される人が、お金にも愛される。』、ぱる出版、2017年11月1日刊)の中から一部を抜粋・編集しています)
【関連記事 『品のある稼ぎ方・使い方』より】
(1) お金を使って信用を作るコツ
(2) 円やドル、金(きん)よりも「自分の通貨」を増やそう
(3) おごる時は「次回は、ごちそうになります」と言おう
(4) お詫びに行く時に持っていくべきは菓子折りではない
(5) 品がある人は「ウィン・ウィン」とは言わない
一番先に払おう
品とは、恥ずかしさに気づけることです。
お金に関して品のないことができるのは、その人がその行為を恥ずかしいと感じていないからです。
飲み会のワリカンでは、誰が払って誰が払ってないか、わかりづらいのです。
なんとなく店を出るタイミングで自分が払っていなければ、その分は幹事が立てかえています。
黙っていてもバレないとしたら。
この状況で「儲けた」と感じる人と、「ここで黙っていたら恥ずかしい」と感じる人とに分かれます。
私の実家はスナックです。
支払いの時に、必ずトイレに行く任がいました。
お店の側からすると、「この人は、支払いの時に必ずトイレに行く」というのはバレています。
みんなが払っている時にトイレに行っていると、紛れやすいのです。
支払いが終わった後に一応財布を出すフリはしますが、結局、払わないのです。
それは、お店の人から見られています。
その人は、そこそこのお金持ちです。
みんあにも「ああしないと、お金は残らないのかな:と言われていました。
それに気づかないのは、この人が恥ずかしさを知らないからです。
支払いをする時に、すぐに払う人と、ギリギリいっぱいまで引っぱってから払う人とに分かれます。
別にいつ払ってもいいのです。
品のある人は、いつ払ってもいいものを、とにかく真っ先に払います。
品のない人も、払わないわけではありません。
ただ最後に払っているだけです。
払わないことが品がないのではありません。
早く払えばいいことをギリギリまで引っぱるのが、品のない人なのです。
菓子折りより、次の企画を持って行こう
仕事をしていると、お詫びをしなければならない状況になることがあります。
お詫びで、品のある人とない人とに分かれます。
品のない人は、「大変申しわけありませんでした。なぜ今回のこの事態が起こったか、理由を説明させてください」と言います。
本人の中では、それで理屈が成り立っています。
お詫びをされる側からすると、そんなことを聞いても、なんの生産性もありません。
品のある人は、「大変申しわけありませんでした」と言った後に、なぜこうなったかという説明は、いっさいしません。
そのかわり、次の企画の相談をします。
品のない人は、菓子折だけ持って来ます。
品のある人は、菓子折を持って来ないで、次の企画を持って来ます。
次の企画が生産性です。
品のある人は、お詫びのかわりに生産性のあることを提示できるのです。
お詫びを受ける側としては、次の企画を期待していたのに、ただの菓子折と理由の説明だったらガッカリします。
お詫びの仕方をしくじることで、次のチャンスをどんどん失ってしまうのです。
飛行機代より、ホテル代にかけよう
品のない人は、優先順位がブレています。
「海外旅行は高い」と言いながら、エア代にお金をかけて、ホテル代をケチっているのです。
エア代よりホテル代にお金をかけたほうが、多くの体験ができます。
飛行機のエコノミー・ビジネス・ファーストの差のつけ方は、まだ試行錯誤の途中です。それに対して、ホテルは、かけた値段でサービスのクオリティーがはっきり変わります。
どのホテルに泊まるかで、あらゆる面において差がつくのです。
エア代にお金をかけるよりは、現地のホテル代にお金をかけるほうが、はるかに得るものが大きくなります。これが優先順位です。
優先順位を明快に持っていることで、品が生まれます。
品のある人は、旅行に限らず、あらゆることにおいて自分の優先順位に迷いがないのです。
「高い」と言わない
品のない人は、よく「○○は高い」と言っています。
「本は高いよね」と言う人に「最近、何を読んだの?」と聞くと、読んでいないのです。
買っていないのに、「高い」と言っているのです。
一方で、本をムチャクチャ読んでいる人は、「本は安いよね」と言っています。
実際にその行為をしている人は、それに対して「高い」とは言いません。
「高い」と言っている人は、その行為を実体験していない人です。
実体験している人は、その価値を見出して、「安い」と言うのです。
品とは、そのモノの価値を見出すことです。
価値を見出せる人は、「高い」とは言いません。
「高い」と言うのは、価値がわからないだけのことです。
「価値がわからない」と言うなら、まだわかります。
「高いよね」と言う人は、それにどれだけ価値がないかも理解していないのです。
教養と金銭感覚を鍛えよう
女子学生の就職先の人気1位は、あらゆる企業を押さえて、「専業主婦」です。
専業主婦という選択肢は、ひと昔前は下のほうの順位でした。
今は専業主婦になって子どもを学校に行かせようと思ったら、夫の年収は1200万円必要です。
年収1200万円の人は、都市部でも6%です。ということは、専業主婦は6%の人しかなれないのです。
大学で高等教育を受けた女性ですら、「セレブと結婚したい」と、少女マンガのようなことを言っています。
大富豪が結婚相手に求める要素は、教養と金銭感覚です。
「セレブと結婚したい」という希望を持つことは、決して悪いことではありません。
ただし、それに見合う金銭感覚と教養が身についているかどうかです。そんなものはまったく身につけていないのに、身につける努力もしないで、「どこに行けばセレブと出会えますかね」と言う人が多いのです。
そういう人がセレブに出会っても、相手に選んでもらえません。
品のあるお金持ちは、正しい金銭感覚と教養があります。
自分の子どもにも、教養と金銭感覚を教育で身につけさせます。
教養がなければ、バカにされます。
金銭感覚がなければ、親が苦労して一代で稼いだお金が水のアワになってしまうのです。
富裕層の家庭の子どもはアルバイトをしています。
100円を稼ぐためにどれだけ大変かを体験させているのです。そういうところに縁のない人は、セレブと結婚したら、なんとなく「お金を無尽蔵に使える」と思い込んでいます。
品のない人は、品のない人と出会うことになるのです。
改良しながら、買おう
子ども時代は、100円玉を握りしめて駄菓子屋に行き、1つ1つ丁寧に買いました。
1回100円のゲームでも慎重にしたりしていました。
大人になると、いわゆる「大人買い」ができるようになります。
大人買いは、品がなくなることがあります。
実際はそれだけでなく、楽しくなくなるのです。
大人のむずかしさは、そこそこお金があることです。
「オーダーシャツをつくってごらん」とお店を紹介してあげると、いきなり「10着つくってきました」と言う人がいます。
お金があることで焦りが生まれるからです。
本来は、1着つくって成長して、勉強して、次の1着をつくるのが品のあるお金の使い方です。
オーダーシャツは、でき上がりまで3週間かかります。
でき上がったらすぐに次をつくるのではありません。
でき上がったシャツを着て、クリーニングに出し、繰り返し着ていく中で「もっとこうしよう」ということが見つかって、次の段階に進むのです。
1段ずつ階段を上がっていくように、モノをつくればいいのです。
いきなり1段目で10着つくってしまうと、後が続かなくなって、その人は成長しなくなります。
通販でモノを買っているような買い方です。
そこにあるモノをただ黙って手に取ってポッと買い物かごに入れるようなやり方をしていると、1つずつ改良しながら買うということができなくなります。これが、品のないお金の使い方です。
本人としては一生懸命ですが、焦りすぎです。
1個ずつ買っていくことが大切です。
品のあるお金持ちは、家に置かれている調度品が、時間差で買われています。
「これは何年前に買って、それは何年前に買って、あれは何年前に買って……」と、みんなバラバラで、1品1品違うのです。
品のないお金持ちは一度にまとめてドンと買ったモノが置かれています。それはひと目でわかります。
時間経過が感じられないからです。
品は、時間経過で生まれてくるものです。
品のあるお金持ちの場合、「このサイドテーブルを買った時はこういうことがあって」と、必ず物語がついています。
品のない人が買っているモノは、「これはまとめて買ったので」と言います。
自分ではなく、誰かが適当に見繕って買ったモノもあります。
1個1個のモノに対して物語や思い入れがまったくないというのが、品のない人のモノのそろえ方になるのです。
中谷 彰宏(なかたに・あきひろ)
1959年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。博報堂に入社し、8年間のCMプランナーを経て、91年に独立し、株式会社中谷彰宏事務所を設立。人生論、ビジネスから恋愛エッセイ、小説まで、多くのロングセラー、ベストセラーを世に送り出す。「中谷塾」を主宰し、全国でワークショップ、講演活動を行う。