お金に振り回されないためにはどうすればよいのか。有名著者によるお金指南。今回は「たまに使うものより、毎日使うものにかける」「キャンセル代を払おう」「話ながら買おう」「商品力・価格力より、人間力で買おう」「「安いほう」より、「お手ごろなほう」と言おう」「おごる時は、「次回は、ごちそうになります」と言おう」の6つの方法をご紹介します。
(本記事は、中谷彰宏氏の著書『品のある稼ぎ方・使い方 ~人に愛される人が、お金にも愛される。』、ぱる出版、2017年11月1日刊)の中から一部を抜粋・編集しています)
【関連記事 『品のある稼ぎ方・使い方』より】
(1) お金を使って信用を作るコツ
(2) 円やドル、金(きん)よりも「自分の通貨」を増やそう
(3) おごる時は「次回は、ごちそうになります」と言おう
(4) お詫びに行く時に持っていくべきは菓子折りではない
(5) 品がある人は「ウィン・ウィン」とは言わない
たまに使うものより、毎日使うものにかける
最近、自分が何に贅沢をしたか、思い浮かべてください。
それは毎日使うモノですか。
たまに使うモノですか。
品のないお金の使い方は、めったに使わないモノにお金をかけることです。
品のあるお金の使い方は、毎日使うものにお金をかけることです。
小山薫堂さんは、漆塗りのお箸を使っているそうです。
お箸は毎日使うものです。
さすが小山薫堂さんは品があります。
宝石や貴金属ではなく、毎日使うお箸に贅沢をしているのです。
品のない人は、もっと高額で、めったに使わないモノにお金をかけます。
たとえば、豪華な別荘を買っても、行くのは年1回です。
ほぼ掃除にしに行くだけです。
そんなものにお金をかけるよりは、毎日使うお箸にお金をかけるほうが、よほど品があるのです。
小山薫堂さんは、漆のお箸をメンテに出しています。
「お箸にメンテなんかあるんですか」と、みんなビックリします。
包丁も、研ぎに出すと生き返ります。
品のない人は、包丁が切れなくなったら、捨てて新しい包丁を買います。
品のある人は、研いで使い続けます。
私の実家の包丁は、長年研いで使っているので、どんどん小さくなっています。
これが品のある使い方なのです。
年に1回しか行かない別荘にお金をかけるよりは、ホテル代にお金をかけるほうが、品のある使い方です。
ほとんど乗る機会のない高級車を持つよりは、タクシー代やレンタカー代にかけたほうが、品のある使い方です。
めったに使わない応接間にお金をかけるよりは、家族が一番過ごす時間が長いリビング・ダイニングにお金をかけるのが、品のある使い方なのです。
キャンセル代を払おう
ネット社会でレストランが一番困っているのは、キャンセル率が上がったことです。
データ上では、キャンセル率は0.6%です。
一見たいしたことはないようですが、お店からすると100分の100です。
食材はムダになるし、その分の席は売れなくなります。
キャンセルが多いのは、20人予約という切れのいい数字の時です。
しかも、キャンセルの連絡もないのです。
そんなことが平気でできるのは、ネット予約で、お店の人と直接話していないからです。
ネット予約のなかった時代は、「すみません、今日は行けなくなりました」と、一々キャンセルの電話をしていました。
ネットで簡単に予約できるようになると、簡単にキャンセルするようになります。
とりあえず何軒か予約しておいて、そのうちのどれか1つに行けばいいと、イージーに考えてしまうのです。
キャンセル保険を扱う会社まで生まれています。
一度キャンセルしたところには行かなくなります。
その人の行動半径は、どんどん狭まっていきます。
今はキャンセルする人のブラックリストもでき上がっています。
キャンセル代を踏み倒すことで、「損をするのを防げた」と思っていても、自分の中で自己肯定感はどんどん下がっていきます。
そのマイナスを考えたら、キャンセル代を払ったほうが、はるかに心穏やかに生きていけます。
キャンセル代を払うのは痛いですが、それを払うことで、自分の時間管理と健康管理ができるのです。
ある新入社員歓迎会で、部のメンバー15人で予約をしました。
当日、その新入社員が「今日は体調が悪いので休みます」と言って、休んだのです。
この新人は、キャンセルに対して、なんら抵抗感がありません。
15人分の予約に穴をあけたら、お店にも申しわけないので、親睦会はしました。
たとえば、2人でごはんを食べに行く約束をしました。
相手が仕事で都合が悪くなった時は、キャンセルではなく、誰かかわりに行ける人を見つけて行きます。
究極は、1人でも行ったほうがいいのです。
キャンセルをしない人は、お店からの信頼が圧倒的に強くなります。
キャンセルを一度もしたことのない人と、キャンセルばかりしている人とに、くっきり分かれるのです。
それは、その人の人間関係につながります。
品は、その人自身にあるのではなく、人間と人間の間にあるものなのです。
話ながら買おう
お金の稼ぎ方に品のある人は、長く稼げるようになります。
品のない人は、一時的に稼げても、長く稼げるようになりません。
品は、その人の付加価値です。
世の中の商品は、付加価値のあるモノとないモノとに二極化しています。
付加価値のあるモノとないモノとでは、売り方がまったく違います。
付加価値のないモノは、安いことが唯一の価値なので、ただお店に並べておけばいいのです。
究極は、ネット上で、お店の人とやりとりがまったくなしでも買えます。
ネット通販は安いのです。店舗を構えないし、人を雇わないので、その分のコストを抑えることができるからです。
一方で、お店を構えて、人が説明をしながら売っていると、値段は高くなります。
その時は、その人の説明を買っているので、付加価値の高い商品になるのです。
若い時はお金がないので、たいていの人は安いモノを買います。
これで一生を終わる人が多いのです。
お金が手に入ると、人が説明してくれるお店に行くようになります。
Yシャツも通販で売っています。
お店でも、手に取ってレジへ持って行くだけのところもあります。
いつもそういうところで買っている人は、オーダーメイドでシャツをつくる時に、つい同じ買い方をしてしまうのです。
商品力・価格力より、人間力で買おう
付加価値の高い商品を買う時は、会話が必要です。
できるだけ人と話さない買い物に慣れてしまった人は、会話を楽しめないのです。
フルオーダーのスーツをつくるお店を「ビスポーク」と言います。
ビスポークは、「会話する」という意味です。
モノを買う時に、会話してお金を使う人と会話なしでお金を使う人とに、くっきり分かれます。
自分が売る側にまわる時も、会話なしで売る人と会話をしながら売る人とに分かれます。
これからAIの時代になっていくと、会話なしで商品を売る人はAIに負けてしまいます。
AIに勝てるのは、「生の会話」です。
モノの売り買いでは、会話を楽しめる人と楽しめない人とに分かれるのです。
「品がある」のは、丁寧な物の言い方をすることではありません。
売り手になっても、買い手になっても、そこで会話を楽しめることが、その人の品を生み出します。
「価格力がある」というのは、値段が安いということです。そこに品がないと、ひたすら安いモノの勝ちになります。
品のある人は、値段が高くても買います。しかも、値段や機能で買う人と、「あの人から買う」という人とに分かれるのです。
「安いほう」より、「お手ごろなほう」と言おう
お金に関することは、一歩間違うと、人に恥をかかせます。
お客様に商品を勧める時に「こちらのほうがお安くなっています」と言うと、お客様は「貧乏な人に見られた」ということになってしまいます。
「お安くなっています」は、「お手ごろな価格になっています」とか「お求めやすい価格になっています」と言いかえたほうがいいのです。
それよりもっと上が、「これはお値打ち品です」という言い方です。
「安い」というのは、値段のわりに価値があることです。
「高い」というのは、値段のわりに価値がないことです。
「安い」は、単に金額的に安いという意味ではなく、「十分価値がある」という表現をしたほうがいいのです。
購入する相手に、お金のことで恥をかかせないのが、品のある売り方です。
お金とどう関わるかではありません。
お金を通して、人とどう関わるかで、品が生まれるのです。
その人に品があるかないかが如実にわかるのは、お金が絡む時です。
お茶会では、品があるかどうかの差は、あまりつきません。
支払いが絡む時に、初めてその人の素の品が出てきます。
恥をかかないために、品のあるお金の使い方について勉強しておくことが大切なのです。
おごる時は、「次回は、ごちそうになります」と言おう
お金でむずかしいのは、おごられる時よりも、おごる時です。
自分がおごると、相手にとっては負担になります。
レジの前で、「ここは私が」「いや、ここは私が」と言って、勘定書の引っぱり合いが起こるのは、そのためです。
レシートの奪い合いは品がないのです。
お金の品のある人は、おごられ方も、おごり方も上手です。
おごられる時は、気持ちよくおごってもらって、その人に感謝します。
頭の中では、「この埋め合わせは、あそこでしよう」という作戦が浮かんでいます。
相手にも「おごってあげてよかった」と思ってもらえます。
品のあるおごり方は、相手に負担を感じさせないのです。
品のある人は、「ここは私が払います」と言われたら、「じゃ、ここはごちそうになりまして、次回は私が払います」という形にできるのです。
たとえば、京都でごちそうになった時は、「そのかわり東京ではごちそうさせてもらいます」と言えば、バランスがとれます。
必ずしも1回ごとに交代でおごる必要はないのです。
ワリカンも品のない行為です。
品のある人は、相手に負担を感じさせないおごり方・おごられ方ができるのです。
中谷 彰宏(なかたに・あきひろ)
1959年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。博報堂に入社し、8年間のCMプランナーを経て、91年に独立し、株式会社中谷彰宏事務所を設立。人生論、ビジネスから恋愛エッセイ、小説まで、多くのロングセラー、ベストセラーを世に送り出す。「中谷塾」を主宰し、全国でワークショップ、講演活動を行う。