お金に振り回されないためにはどうすればよいのか。有名著者によるお金指南。今回は「売値の5倍の授業料を払おう」「お金と時間と労力をかけよう」「駆け引きしない」「高圧的に出ない」「モノに負けない品を磨こう」の5つの方法をご紹介します。
(本記事は、中谷彰宏氏の著書『品のある稼ぎ方・使い方 ~人に愛される人が、お金にも愛される。』、ぱる出版、2017年11月1日刊)の中から一部を抜粋・編集しています)
【関連記事 『品のある稼ぎ方・使い方』より】
(1) お金を使って信用を作るコツ
(2) 円やドル、金(きん)よりも「自分の通貨」を増やそう
(3) おごる時は「次回は、ごちそうになります」と言おう
(4) お詫びに行く時に持っていくべきは菓子折りではない
(5) 品がある人は「ウィン・ウィン」とは言わない
売値の5倍の授業料を払おう
セミナーに参加して聞いたことを、今度は自分が講師になってそのまま話す人がいます。
この人の頭の中では、仕入れた分をアウトプットして売っているので、採算が合っているように感じるのです。
これは仕入値と利益のバランスがとれていません。
講師ははるかに莫大なお金をかけて勉強して、そのセミナーをしています。
セミナーを受けた人は、そのセミナー代しか払っていません。
自分が講師としての労力を払わないで授業をすることは、中身がスカスカなセミナーになります。
未来食堂は、すべてを1人で運営しているユニークなお店です。
ランチの値段は900円です。
未来食堂の店主の小林せかいさんは、4000円のランチを食べているそうです。
900円のランチを価値のあるものにしようと思っても、ふだん自分が同じ900円のものを食べていたのではムリです。
自分が4000円のランチを食べに行って勉強しているから、900円のランチにクオリティーを出すことができるのです。これが品のあるお金の稼ぎ方です。
いかに自分が授業料を払っているかが大切です。
仕入値と売値を同じにしないことです。
そうしないと、それを買った人は継続してそのモノを買うようにはならないからです。
本を1冊読んで1冊の本が書けるわけではありません。
1冊の本を書くために膨大な労力と費用がかかっていることを考えながら、その1冊の本を読めばいいのです。
ネット社会では、大学の卒論をコピペで書く習慣がついています。
そうすると、仕入値とアウトプットが同じになります。
本を書くための仕入れに、どれだけ莫大な労力をかけているかに気づかないままでは、品は生まれないのです。
お金と時間と労力をかけよう
「好きなことで食べていきたい」と言う人がいます。
ただ好きなだけのことでは、食べていくことはできません。それは趣味です。
趣味と仕事とは違います。
趣味は、お金を払ってすることです。
仕事は、お金をもらってすることです。
これが基本の考え方です。
好きなことは趣味でできます。
仕事は、人の役に立たなければなりません。
人の役に立つための能力を身につけるには、お金・時間・労力をかける必要があります。
「いろいろな本で『好きなことを仕事にしなさい』と書いてあって、私はこれが好きだと思うから仕事にしたんです」と言う人は、うまくいきません。
「好きなことを仕事にしなさい」という言葉の間に省略されている部分を読み切れていないからです。
大切なことは、好きなことにお金・時間・労力をかけて仕事にすることです。
「好きなことにお金・時間・労力をかける」という部分が欠落したままでは、ただの趣味です。
趣味は、お金・時間・労力をかけなくてもいいのです。
「私はサッカーが好きだからサッカー選手になれる」とは誰も思いません。
スポーツならすぐわかるのに、いざ仕事になると「私はこれが好きだから、これを仕事にします」と言う人がいます。
観客とアスリートの区別がまったくついていないということです。
趣味のままの仕事を真剣にしてしまうことが、品のない行為になるのです。
駆け引きしない
企業の取材をして原稿にする時は、その企業のチェックを受ける必要があります。
広報の人から「一応チェックさせてください」と言われるところは安心です。
チェックしてもらえば原稿に間違いがありません。
「あなたを信じています」と言われることが一番厳しいのです。
うかうかしたことを書けなくなるからです。これが、駆け引きしないことが最大の駆け引きになるということです。
「もう少し安くしてもらえませんか」と言うお客様が、一流ホテルでもけっこういます。
自分が紹介した時は、ホテルの人から「中谷さんの紹介で来た人に『負けてくれ』と凄く粘られているんですけど」と言われて、私も「すみません、間違った人を紹介してしまって」と謝ることになります。
紹介者にも迷惑がかかるのです。
「ダメモトで言うだけ言ってみよう。金額は下がらなくてもプラマイゼロだし」と言う人は、自分自身も損をしていることに気づきません。
「あの人は必ず1回『安くなりませんか』と聞いてくる」と、相手の記憶に残ってしまいます。ここで信用を落としてしまうのです。
「安くなりませんか」と聞かないことが信用につながります。
「できるだけいいものを安く提供しよう。この人にはサービスしてあげよう」「値段は安くできないけれども、何かアップグレードしたりするオプションをつけていこう」と考えるのは、ホテル業界だけではなくて、あらゆる業界で共通することです。
「ダメモトで言わないと損じゃないですか。値段が下がらなくてもマイナスはないし」と考えるのは、大きな間違いです。
「安くなりませんか」と聞いてくる人がいると、だんだん初期の値段を上げられるようになります。
気づかないうちに品を落としながら、金銭面でも損をしていく形になります。
「安くして」と言わない人を安くしてあげたい、「安くして」と言ってくる人は高めに取ろうと考えるのが、売り手の考え方です。
駆け引きをして品がなくなると、どんどんコスト高になっていくのです。
高圧的に出ない
海外のIT企業が日本に入ってきて、よく「ウィン・ウィン」と言うようになりました。
「お互いウィン・ウィンの関係にしましょう」と言う人には、品がありません。「ウィン・ウィン」という言葉に、なんとなくうさんくささがつきまといます。
「ウィン・ウィン」という言葉は、高圧的な感じがします。
「ウィン・ウィン」という表現をしないで、むしろ痛みを共有するのが本来の信頼関係です。
「お互いメリットになるように一緒に儲けませんか」という話になるのは、ビジネスでは普通です。
多くの場合、「ウィン・ウィン」と言う時のほうが、後でもめます。
これは、「無料」「ゼロ円」と言われたものが結局は高くつくのと同じです。
たしかに「ウィン・ウィン」で相手を儲けさせていくことは大切です。
そういう時にこそ、「ウィン・ウィン」と言わない人のほうが品があるのです。
モノに負けない品を磨こう
同じジャガーに乗っている人でも、「品のある人」と「品のない人」がいます。
品のある人の条件は、
①自分の稼いだお金で買っている
②ふさわしい紳士的な態度・姿勢・服装・行動
であるという2つです。
親が稼いだお金で買ったジャガーに乗っている人は、品がありません。
ジャガーに乗っているわりには、姿勢が悪い、服装がだらしない、行動がだらしないとなると、ジャガーとの落差で、結局その人は品がないことになってしまいます。
モノのレベルを上げたら、同じぐらい自分の品位を上げる必要があります。
モノのレベルだけ上げて、「ジャガーに乗っていれば品のいい人に見られるだろう」と考えるのは大間違いです。
モノの品を上げれば上げるほど、それを持っている人の品のハードルも上がってしまうのです。
安い軽自動車に乗っているなら、品がなくてもバレません。
高級車に乗っていて品がないと、プラスには見られません。むしろ、軽自動車に乗っているより、もっと品のない人に見られます。
「高級なモノを持てば、少しでも自分に品があるように見えるのではないか」と思うのが、品のない人の勘違いです。
日本は、ブランド消費大国です。
ブランド品を持ったからといって、品がよくなるわけではありません。
日本人も、海外のブランドから爆買いと同じような扱いを受けていることに早く気づかないとみっともないのです。
中谷 彰宏(なかたに・あきひろ)
1959年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。博報堂に入社し、8年間のCMプランナーを経て、91年に独立し、株式会社中谷彰宏事務所を設立。人生論、ビジネスから恋愛エッセイ、小説まで、多くのロングセラー、ベストセラーを世に送り出す。「中谷塾」を主宰し、全国でワークショップ、講演活動を行う。