具体的に、どのようにすれば「任せ上手」になることが出来るのでしょうか。ポイントは、「任せる仕事を切り出す」「誰に任せるか部下を見極める」「事実・データと部下への想いを区別する「仕事の状況と頑張り、言い訳などを区別する「任せることの終了を宣言する」などがあります。

(本記事は、麻野進氏の著書『最高のリーダーが実践している「任せる技術」』 ぱる出版、2017年11月16日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

最高のリーダーの任せる技術
(画像=Webサイトより)



【関連記事 『最高のリーダーが実践している「任せる技術」』より】
・(1) 「その仕事、やる意味あるんですか?」「パワハラじゃないですか?」にどう対応するか
・(2) なぜあなたは仕事を部下や後輩に任せられないのか 任せ上手かチェックする3つの質問

常設の組織とプロジェクトでは任せ方が異なる

組織図に名前が掲載されている責任者であるリーダーには、部下育成責任がある。

当たり前だが、常設の組織は今期だけでなく来期も、再来期も続いていくことを前提にして、「前期よりも今期、今期よりも来期……」とより高い組織目標の達成に向けたマネジメントを経営から求められてる。

経営からの期待が大きいことは理解しているが、容易に人員を増やしてもらえない状況で、より困難な課題に挑んでいかねばならないリーダーは、組織全体の労働生産性を上げ続けなければならない。

つまり、リーダーを含めた組織の構成員である部下たちが成長してくれないと組織存続の危機、またはリーダーの更迭を余儀なくされる。

放置しておいても勝手に育ってくれる部下が揃っていればいいが、年々指示待ち度が増している若い世代を率いているのが現状ではなかろうか。

だが、プロジェクト・チームのリーダーには、配下のプロジェクト・メンバーの育成責任はない。

プロジェクトは、ある目的を果たすために臨時に編成された期間限定組織のことを言うが、プロジェクト期間が終了すると解散する。

プロジェクトのオーナーまたはリーダーは、そのプロジェクトを遂行するために必要な知識やスキル、経験のあるメンバーを選定するので、「まだ経験不足だけど、彼の将来性を考えてメンバーに入ってもらおう」という発想は基本的にない。

「使える奴かどうか」という観点で選ばれる。

常設組織でもプロジェクト・チームでも、リーダーがメンバーに「仕事を任せる」という点では同じだが、任せ方は異なる。

常設組織では、基本的には確立された役割や手続きの中で業務を行い、上司は業務内容のレベルまでフォローする。

新しい仕事が入ってきたら、上司は部下の業務量などを見ながら配分することになる。

だが、プロジェクト・チームでは、リーダーがメンバーの目標や役割は決めるが、個別の業務遂行についてはメンバーに任せるのが一般的だ。

すでに出来上がっている81人材がアサインされているはずだから、事前にすり合わせた業務内容を一定のレベル82で納期までに仕上げてくれればよい。

仮に、リーダーが「こいつ使えねえ!」と判断すれば送り出し組織に文句を言って交代してもらうという選択肢もある。

いったん配属されれば、どんなレベルであっても簡単にダメ出しすることが許されない定常組織とは全く違う。

組織の形態によって、仕事を任せるということについては基本の型がある。まずは次の5つのステップで任せる技術の基本をマスターしていただきたい。

【STEP1】任せる仕事を切り出す

担当タスクの業務遂行力の高いリーダーの中には、任せるための仕事の切り出しを面倒がる人が多い。

自分より能力の劣る部下に任せる仕事の塊や範囲などを、部下の能力や特性などをアレコレと考えている時間があれば自分でやったほうが断然早いのは間違いない。

とりわけ多い理由が「うちの部下達には難しすぎるのではないか」、「まだ情報・状況があいまいで上手く指示や説明ができないのではないか」などと考え過ぎてしまうことだ。

だがそんなことを言っていたら永遠に他人に仕事を任せることはできない。

このステップでは、次の4つのポイントがある程度見えていれば切り出して任せてしまう。

丸投げや唐突にならなければ、このステップではあまり考え込まないほうが良い。

考えれば考えるほど任せるのが面倒になってくる。

(1)目標や成果のイメージがある程度見えている

丸投げ上司だと、仕事を任せる際の目標や成果イメージがあいまいのまま部下に投げてしまうので、たちが悪いが、どんな状態を実現したいのかがある程度見えているのであれば、思い切って任せたい。

入社3年目くらいまでの部下であれば、リーダーは少なくとも完成形のイメージがあるレベルの仕事を任せるはずだ。

このレベルの仕事で部下のアウトプットがいまひとつになってしまうのは、任せた仕事の意味を理解していないことがほとんどだ。

まずは仕事の目的・目標・全体像をキチンと理解させ、担当する仕事の重要性を明示し、責任感、使命感を持たせるような働きかけをすることだ。

特に最終形のイメージを持たせることができれば、そのために今やっていることがどう影響するのか、ゴールまでどれくらいあるのかといったことを本人がイメージすることができれば、取り組み方はかなり違ってくる。

以前自動車ディーラーのクライアントで社員の評価基準を作成していたとき、若手にどのような指導をしているのかを、優秀なリーダー格の営業担当者にインタビューした際にこういう話があった。

「後輩に指導する際、〝契約を取ること〟を最終ゴールにしてしまうと、とにかく今売れればいいと考えて、商談に全力を注ぐのはいいのですが、後のことを考えずに適当なことを顧客に言ってしまうことがあります。

でも、次の車検や買い換えのときに、また声を掛けてもらうことをゴールにすれば、契約してからも定期的にアフターケアやフォローを考えるようになります」

今この1回の商談だけでなく、取引に2年、3年という時間軸を設定することで、その1回の商談の質も変わる。

中堅・ベテラン社員に任せる仕事は、難易度の高い仕事が中心になると考えられるが、明確な目標や成果イメージが描きにくいかもしれないが、ある程度目標が見えているのであれば、思い切って任せたほうがいい。

任せられないリーダーがその理由を「部下のスキル不足」や「失敗のリスクがある」にしているのは、部下の仕事に責任を負うという「覚悟」が足りないからだ。そういうリーダーに限って、部下のスキルレベルが上がってもなかなか任せない。

そこには任せられない部下がいるのではなく、任せないリーダーがいるだけだ。

(2)仕事の量がある程度見えている

仕事の量が分かっていれば、たとえ部下がギブアップしてもリカバリーがしやすいので、一定の安心感が得られる。

ただ、仕事量が分かっていても任せた部下の能力や持ち時間によって状況が変わってくるので、任せる仕事の塊をブレイク・ダウンすることが重要となる。

集中しても丸1日以上かかるような業務を任せる場合であれば、まず「業務の目的」「業務内容」「成果・ゴールイメージ」を明確にし、すべきことをリストアップして、ToDoリストを作る。このリストは次の7つの視点で考えれば網羅的に列挙できる。

①「誰に聞くのがいいのか」
②「誰かに報告・連絡・相談する必要はないか」
③「誰かに依頼することはないか」
④「作業することはないか」
⑤「調査することはないか」
⑥「検討することはないか」
⑦「誰かと交渉することはないか」

このToDoリスト化したタスクに必要工数(時間)を設定し、それぞれを合計し全体としてどれほどのボリュームになるのかを算出する。

複雑な仕事であればあるほどこういう視点でブレイク・ダウンしていけば一つひとつのタスクの難易度は下がってくる。

また、必要工数はリーダーがやる場合の見積もりであれば、これを標準時間とし、部下に伝えることで、単にタスクを割り振られただけでなく、処理時間を意識することになるので部下の生産性の向上も期待できる。

仮にブレイク・ダウンしたタスクの難易度が高い、あるいはボリュームが多いものになったとしても、それを更に前述した同じ手順でブレイク・ダウンしてリスト化すればいい。

複数のメンバーに分担させるのであれば、そのまま分割されたタスクごとに割り振ればよい。

(3)難しそうな点や失敗リスクがある程度見えている

任せる側が最も恐れるのは「この部下にはできないのではないか」という不安だ。その理由はスキルが未熟なのか、知識が不足しているのか、経験が足りないのか、時間の問題か、いずれもなのか。

部下の能力などの見極め方は次項や次章で述べるが、ここで押さえておきたいポイントが3つある。

ひとつ目は、その仕事を遂行するために必要なスキルと任せる部下が持っているスキルが合っているのかということだ。

必要なスキルと言っても「コミュニケーション力」といった漠然としたものではなくて、実務的に考えなければならない。

例えば、営業担当者であれば、次のようなスキルがコミュニケーションスキルに含まれる。

◆プレゼンテーション力……自社製品だけでなく、他社との違いなどを論理的に、分かりやすく伝えるスキル
◆交渉力……自社商品の売り込みだけでなく、顧客の状況を理解し、対等に商談を進めるスキル
◆傾聴力……相手の言い分をよく聴き、一定の信頼感を持たせるスキル
◆質問力……相手のニーズを引き出したり、気づいていないことに気付かせるスキル
◆説得力……一定の商談が進んだ後のクロージングに向けて、顧客の納得度を高めるスキル

これらすべてに長けた部下はそういない。

傾聴力があって顧客に信頼されており、事前に作り込まれたパワーポイント資料をスクリーンに投影してプレゼンテーションするスキルが高くても、迷っている顧客にクロージングするのが苦手だったりする。

少なくともこのくらいのレベルにスキルをブレイク・ダウンして、マッチングを考えないと、任せた後のリスクが見えない。

2つ目は、任せる部下の能力・時間には限界があるということだ。

ブラック呼ばわりされる厳しい会社であれば、「できるまで帰るな!」と叱責して、無理やり成果を出させることもあったが、「働き方改革」が叫ばれるようになってからは部下の能力だけでなく、労働時間も意識せざるを得なくなった。

先日ある企業の人事担当者からこういう話を聞いた。

営業所のリーダーがこれまで部下の営業担当者に「売れるまで帰ってくるんじゃない!」と指導していたが、経営トップが全社方針として「働き方改革」を打ち出してから、「売れないんだったら、早く帰ってこい!」という対応に変えたら、商品は売れていないが、残業代が削減され、営業所の利益が改善したという笑えない話だった。

スキルのマッチングという話をしたが、足りない苦手なスキルは急に伸びないという現実と、厳しく問われる労働時間マネジメントを考えると能力も時間も限られていることを、リーダーは意識しないと任せるリスクマネジメントにならない。

3つ目は、任せ過ぎて、部下が潰れるリスクだ。

リーダー研修で、自分を育ててくれた上司について受講者に尋ねてみると「上司の指導が懇切丁寧で、任された後もしっかりフォローしてくれて、安心して新しい仕事にチャレンジできました」という人は皆無だ。

むしろ多くのリーダーは、わざとかどうかの真偽は定かではないが、「無茶ぶりな仕事の振られ方、丸投げで結構大変な思いをしましたが、今となってはそういう上司についたから自分は成長したと思います」という。

新しくリーダーになったハイパフォーマーを対象にした研修なので、当たり前の回答なのだが、立場が変わって、自分の部下にそういう仕打ちで育てようものなら、部下が潰れてしまうか、周囲にパワハラ呼ばわりされて自分が窮地に追い込まれるかのどちらかだ。

無茶ぶりが良いかどうかはさておき、人は任されて育ち、人に任して自分が育つと91いう人材育成不変の原則がある。

育成を主眼におくと「任せる」「任される」という行為は、双方にとって中長期的には労働生産性が向上する最良の手法だが、部下を促成栽培しようとして任せ過ぎて潰れることはままある。

かく言う私も、取締役に就任し(報酬も大幅アップ)、経営と組織マネジメントと担当クライアントのコンサルティングと処理能力の限界を超えた役割を社長から任されたのだが、それに応えなければならないと頑張り過ぎて「鬱」状態に陥ったことがある。

結局それが元で会社を退職することになったが、本人のキャパを遥かに超える質・量の仕事は任せるべきでないと思う。

乗り越えることができれば大きな飛躍となるが、潰れて退職や再起不能になるリスクも同様にある。

特にこれから実務の主流になるゆとり・サトリ世代は総じてメンタルの強い人が少ない。

大したことでなくても「無理!」という言葉を簡単に使う傾向がある。

自分が育った経験が今どきの部下にも当てはまるのか否か、見極める力が必要だ。

(4)進め方や、進める際の相談相手・助けになる情報がある程度見えている

これは仕事を任せる際の体制のことだ。

任せる側のリーダーにとって勝手知った業務であれば、うまくいかなかったとしても想定内のはずだからリカバリーも可能だからさほど問題はない。

経験値が足りない若手に仕事を任せる際は、数年先を歩んでいる先輩が近くにいるなら進め方や進める際の相談相手になるだろうし、リーダーが持っている頼りになる社内外の人脈があれば、リーダーも余裕を持って任せることができるだろう。

若い人の情報収集力の高さの主なものは、ネット検索能力だが、使える生きた情報は人を介したものでないと机上の空論に終わることが多い。

社会人経験が浅いと「人脈」と呼ばれるノウハウ・メリットを等価交換できる間柄の人がいない。いたとしても自分と同程度のスキル・経験値の同僚ぐらいだからそれほど役に立たない(ただ、将来的には先に出世した同期がいれば役立つが)。

任せる立場のリーダーだけでなく、任せた部下の先輩や同僚、知恵袋になってくれる他部門の社員、更に任せて安心な協力業者の社員、実務サポートをしてくれる派遣社員等々バックアップ体制がある程度見えていれば、任せるのに躊躇はいらない。

【STEP2】誰に任せるか部下を見極める

ここでの一番のポイントは、部下の「能力・経験」と「やる気」を分けて考えることだ。

この2つは混同されることが多く、能力・経験レベルが低いのに「やる気があるから」と部下にとっては難し過ぎる仕事を任せてしまって失敗に繋がったり、能力・経験レベルは高いのにやる気があまり見られず、部下にとっては簡単すぎる仕事を任せてしまい、さらなるやる気の低下を引き起こして、失敗に繋がるケースはよくある。

人に仕事を任せるとは、その仕事に必要な能力・経験に合った部下に任せることだという大原則を忘れてはならない。

もちろん、任せるという行為には、これまでも述べてきているように人材育成、中長期的な組織の労働生産性の向上という重要な側面があるのは確かだが、リーダーに求められているのは組織の成果を上げることがミッションだ。

人材育成はこのミッションを果たすために、果たし続けるための手段であり、人材育成そのものが目的ではない。

そのためにはできる人に任せることが基本であることを改めて認識することが重要だ。

だから部下の「やる気」はそのあとの微調整の要素でしかないことを確認しておきたい。

特に、リーダーにフォローする時間的な余裕がない場合は、この基本を絶対に外してはならない。

部下にやる気があるときは、チャレンジ精神が旺盛な状態であるため、任せた仕事に求められるスキルとマッチしていないと、全く見当違いな頑張りを見せ、失敗し、燃え尽きてしまうことになりかねない。

(1)部下の状況に対応して任せ方を変える

SL理論(SituationalLeadership)という著名な理論がある。

1977年にハーシィ(P.Hersey)とブランチャード(K.H.Blanchard)が提唱したリーダーシップ条件適応理論と訳されている。

この理論はリーダーのリーダーシップスタイルではなくて、部下の状況に応じて関わり方を変えるべきとする考え方だ。

「リーダーシップ」という単語がついているが、要は仕事の任せ方の基本は、部下の成熟度によって決まるという理論だ。

(2)部下の状況は「成熟度」(力量と意欲)で査定する

SL理論はいろいろと変遷はあるが、基本的に部下の成熟度には4段階あるとしている。

最もレベルの低い成熟度1の部下は力量、意欲ともに低い状態「いまいちな新卒初心者」だ。

新入社員は力量が低い(というか無い)のが当然だが、たまに意欲までもが低い新人もいる。

両方低い新人を配属された組織のリーダーにとっては、「採用ミスじゃないか!」と言いたいところだが、プロジェクト組織ではないので「使えないからチェンジしてくれ」というわけにはいかない。

成熟度2は、力量はまだ低いが、意欲が高い状態「熱心な初級者」だ。

自身のスキルの低さ、経験の浅さを意欲で何とか埋めようとするマインドの社員のイメージだ。

新卒・中途を問わず、通常は組織や仕事に慣れるまではしばらくこの状態が続くことになる。

成熟度3では、力量は高いが、意欲が低い(ムラがある)状態「迷える中級者」だ。

スキルのレベルは業務遂行に十分に達しているのだが、経験値が不足していたり、まだ自信がない(任されるのが不安な)のか、慣れ過ぎて飽きてきたのかなど、原因はそれぞれだが意欲が低く、自発的・積極的な行動が取りにくい状態と言える。

成熟度4になると、力量が高く、意欲も高い「上級者」と言える。

このレベルまできている部下は、次のリーダーになりうる候補者と目されているかもしれない。

単独の業務遂行力に懸念がないだけでなく、リーダーへの昇格が近づいている自覚もあることから、仕事全般に対して意欲も高い状態にある。

恐らく仕事を任せるに際しても、丸投げでなければ多くは本人に任せて問題ないはずだ。

(3)部下の「成熟度」に対応した「仕事の与え方」

成熟度1の「いまいち新卒初心者」には、スタイル1「指示型」の任せ方をする。

仕事の進め方やゴールのレベルをはっきり伝え、その進捗を管理することが重要なポイントとなる。

・問題を決める
・目標を決める
・役割を決める
・仕事のやり方を決める
・仕事のやり方を細かく指示する
・リーダーが意思決定をする

成熟度2の「熱心な初級者」には、スタイル2「指導型」の任せ方をする。

リーダーの考え方を説明し、部下からの疑問に応えるスタイルになるので次のような指導になるはずだ。

・問題を決める
・目標を決める
・作業計画を作成し部下に伝える
・決定事項に対し意見を求める
・部下の主体性を重んじる
・部下にアイデアや意見を求め、意思決定はリーダーが行う
・仕事のやり方を指示する

成熟度3「迷える中級者」に対しては、スタイル3「支援型」の任せ方をする。

多少のムラがあっても、一定のスキルがあるのだから、部下を認めて意見を聞き、部下が問題解決や意思決定できるよう取り計らうことが求められる。

・目標を部下と一緒に決める
・仕事の進め方を一緒に決める
・部下から求められたら支持、支援する
・リソースやアイデアを提供する
・部下の問題解決にあたっては、話をよく聴き支援する

成熟度4「上級者」に対しては、スタイル4「委任型」の任せ方をする。

次のリーダーを担う存在なので、実務的にはむしろリーダーより詳しいかもしれない。もはやこの部下には安心して仕事を任せられるレベルになっているだけでなく、リーダーとは円滑なコミュニケーションが取れるようになっているはずだ。

・部下にも責任を持たせる
 ただし、あくまで委任であって丸投げになってはいけない。安心して任せられてもきちんと報告・連絡・相談を求めることを忘れてはならない。
・目標を一緒に決める
・仕事の進め方を一緒に決める
・部下に行動計画を作成させ、問題解決も自ら行わせる

このレベルまで来ると部下は、自分が頼りにされていることで責任感が高まり、仕事に対する充実感も増し、承認欲求も強くなる。

結果として、質の高い成果を残し、組織全体の労働生産性も向上するはずだ。

少し補足しておくと、上記の解説では部下の成熟度としているが、社会人歴や社歴が長くても、全く新しい仕事を任せる場合は、成熟度1、2あたりから始まるので、与える人ごと、与える仕事ごとに部下の成熟度を査定しなければならない。

最後にもう一言、これは西洋の研究者が発表した理論だが、日本海軍連合艦隊総司令官だった山本五十六が次のようにまとめている。

「やってみせ言って聞かせてさせて見せほめてやらねば人は動かじ」「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず」「やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」

(4)過度な「期待」が任せる判断を狂わせる

「年齢的にそろそろだな」「最近頑張っているからな」「ここ数年の全体のパフォーマンスが上がってきたぞ」……。

人事評価権を握っている部下の働きぶりについて、このように考えるようになると昇格させたいと思うのは、上司であれば当然の考えだ。

麻野 進(あさの・すすむ)
組織・人事戦略コンサルタント。大阪府生まれ。株式会社パルトネール代表取締役。組織・人事専門コンサルティングファーム取締役、大手シンクタンクでのシニアマネージャーを経て、現職。全日本能率連盟認定マスターマネジメントコンサルタント、特定社会保険労務士、早稲田大学大学院非常勤講師「人的資源管理」担当。規模、業種を問わず、組織・人材マネジメントに関するコンサルティングを展開し、人事制度構築の実績は100社を超え、年間1,000人を超える管理職に対し、組織マネジメントの方法論を指導。入社6年でスピード出世を果たし、取締役に就任するも、ほどなく退職に追い込まれた経験などから「出世」「リストラ」「管理職」「中高年」「労働時間マネジメント」を主なテーマとした執筆・講演活動をおこなっている。主な著書に『部下に残業をさせない課長が密かにやっていること』(ぱる出版)、『ポジティブな人生を送るために50歳からやっておきたい51のこと』(かんき出版)、『部下なし管理職が生き残る51の方法』(東洋経済新報社)、『役員の登用・評価・養成のすべて』(政経研究所、共著)などがある。

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