再雇用制度とは、定年に達した雇用者をいったん退職させ、再び雇用する制度である。65歳未満で定年としている場合、再雇用を希望した者を65歳まで継続雇用することが企業の義務となっている。

高齢化社会の進展によって、年金制度の持続性を保つため年金受給年齢を引きあげられた。それに伴い、企業の定年から年金受給年齢までの収入を確保させることが目的として法整備されたわけだ。

そのような背景のなか、企業は再雇用の年齢上限を引き上げたり、さらには廃止したりといった動きが出てきている。人手不足に悩まされる企業にとって、経験豊富な高齢者社員はきわめて貴重な存在だ。今回は、そんな再雇用制度撤廃に動く企業の動向や、人生90年時代のライフプランニングについて見ていこう。

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(写真=PIXTA)

再雇用の年齢制限撤廃に動く企業が出てきた

国をあげて高齢化社会への対応が急務となるなか、大企業でも再雇用の年齢制限を撤廃し、高齢者が生き生きと働き続けられる環境を整備する動きが広まっている。

例えば、大和証券グループ本社では2017年6月、「意欲・能力が高い大和証券の本支店営業員の雇用上限年齢を廃止する」と発表した。同社はもともと、本支店営業員の再雇用について国で定める雇用義務年齢を超えて最長70歳まで継続可能であったり、45 歳以上を対象とした研修プログラムを充実させていたりとベテラン社員の活用を推進していたが、今回さらに一歩進めた形となる。

他にも、化粧品大手のファンケルでは「アクティブシニア社員」という雇用区分を2017年4月より新設した。勤務日数や時間については本人の希望を考慮して決定するため、それぞれのペースで柔軟に働くことが可能だ。また、定年年齢はなく、原則として本人の元気とやる気が続く限り働くことができるという。

このような「働き方改革」は、少子高齢化による労働力確保の難しさや、高いスキルとノウハウを持つシニア層への雇用機会の提供が目的となっている。

資産形成層こそ考えたい人生90年のライフプランニング

少子高齢化に歯止めがかかるという見込がない以上、再雇用制度における年齢制限撤廃の動きはこれからも広まっていくはずだ。そうだとすると、私たちは60歳や65歳で勤めが終わるという従来の考え方を改める必要がある。

これまで、「老後の備え」というと貯金や節約、資産運用によって金融資産を蓄積することが主な方法論であった。しかし、90年や100年といったロングスパンの人生を前提とすると、そもそも「老後」そのものを短縮、あるいはなくすことが有効となってくる。つまり、身体が動く限り生涯現役で働き続けることである。

そもそも「定年」というのは、収入源と社内外の人間関係を一度に失うことだった。豊かな人生とは、お金にも人とのつながりにも不自由することなく生きられることに他ならないだろう。金融資産が1億円あればいい、年金が月30万円あれば生きられる、という問題ではないのだ。

そうした点を踏まえると、60代以降に再雇用で会社に勤め続けることが重要と言える。また、人脈とスキル・ノウハウを生かして起業し、社会に価値を提供し続ける戦略もあるだろう。インターネットが普及した今日では、事業内容によっては比較的にコストをかけずに起業することも可能である。

30~40代は、収入を増やして老後のために貯蓄し、資産を形成することが必要とよく言われる。もちろん、資産を形成しておくことは非常に重要だ。しかし、そのような「守り」のライフプランニングだけではなく、シニアになってからもアクティブかつ幸福に生きるための働き方も考えるべきだろう。

「定年」の後も収入を得られる手立てを持っておくべき

人間が90年、100年と生きることが当たり前になるかもしれないこれからの時代において、「65歳で仕事を辞めて、あとは退職金と年金で悠々自適」というのは難しいだろう。年金だけでは生活をまかないきれなくなる可能性も高く、蓄積した金融資産だけで20年以上不自由なく暮らすというのも現実的ではない。

もちろん、貯蓄や資産運用を通じて金融資産を増やすことも重要だ。しかし、実際は「定年」の後も収入を得られる手立てを持っておくべきだろう。会社の後ろ盾が無くても、個人レベルで顧客に価値を提供できるだけのスキルを身につけることが必要である。資産形成層のときから、そのことを意識して行動すれば、人生90年時代に適合した人生が歩めるのではないだろうか。(提供:大和ネクスト銀行


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