「クレジット・サイクル」を意識すると、投資判断の質を上げることができる。クレジットとは信用のことで、クレジット・サイクルとは信用の循環を分かりやすくステージ分けしたものだ。クレジット・サイクルを理解し、投資行動に活かしていこう。
クレジット・サイクルとは ?
クレジット・サイクルとは、クレジットの浮き沈みを回復・拡大・後退・修復の4ステージに分け、このステージが循環 (場合によっては逆方向に循環) することを表している。クレジットは景気動向と置き換えても良いだろう。なぜなら、経済活動の多くがクレジットによる取引だからだ。
4ステージのうち、回復期と拡大期は経済動向が上向いていく時期だ。企業は、需要拡大に伴い設備投資などを増やすため、金融機関などから借り入れを増やす。景気が良いため、家計も財布の紐を緩め、借金 (クレジットカード含む) をしても消費を増やす。
しかし、いつまでもクレジットを積み上げる (借金し続ける) ことができるわけではない。「借りたお金はいつか返さないといけない」のが経済の大原則だからだ。どこかでクレジットの積み上げが止まり、借金で消費をすることよりも、借金を返済すことを優先する時期が来る。
それが後退期にあたる。後退期は、金融機関などがリスクを回避するため、融資を減らし始める。金利を引き上げ、契約条件や与信基準を厳しくする。企業は資金不足に陥り、債務不履行や倒産などが起こり、景気全体が後退する。景気が悪化しているので、家計も財布の紐を閉めて、消費を抑える。
コストカットを進める企業や家計は、そのうちバランスシートが正常に戻り始める。これが修復期だ。場合によっては、中央銀行が大規模な金融緩和を実施し、そのバランスシート修正を後押しすることもある。正常に近い状態になると経済活動に対する意欲が戻ってくるため、成長や競争、拡大を再開する回復期に戻る。
米国の家計債務はどのような状況 ?
では、現在の経済状況は、クレジット・サイクルでいうとどのような状況なのだろうか。世界最大の経済大国である米国を見てみよう。米国のGDPの約70%が個人消費だ。従って、個人消費の動向が米国経済に、ひいては世界経済に大きな影響を与える。そこで米国の家計 (個人消費) の動向を確認してみよう。
2017年5月には、ニューヨーク連銀が「2017年3月末における米国の家計の債務残高は12兆7,000億ドルを超え、金融危機時の過去最高水準を更新した」と発表している。それを裏付けるように、FRBが毎月発表している「消費者信用残高」を見ると、この5年間、ほとんどの月で前月比100億ドル以上、信用残高が積み上がり続けている。米国の民間調査会社コンファレンス・ボードが毎月発表している「消費者信頼感指数」を見ても、2013年1月は約60だった値が、直近は約120と2倍に上昇している。
今はどのステージ ?
これらのデータを見る限り、米国の家計は、過去最高水準にまでクレジットを積み上げている。この事実から考えると、米国経済のクレジット・サイクルは、少なくとも「拡大期」のどこかに位置するのではないかと言える。
現在が拡大期のどこかだと仮定すれば、まだクレジットは拡大し続けるのか、それともクレジットの積み上がりが頂点に達し、後退期に突入する間近なのかが重要な問題だ。一般的に、リスク資産価格は、クレジットが積み上がる間は上昇し、後退期に突入すると下落する傾向にあるためだ。
特に、経済が好調の米国では、今度も継続的な利上げが見込まれる。利上げ幅や利上げ速度は緩やかになる可能性が高いと言われているが、金利上昇による返済の負担が増え、借金を返せない人が増える可能性があることには注意が必要だ。
投資判断の材料に
クレジット・サイクルを理解することによって、マクロ経済の大きな流れを掴むことができる。マクロ経済の大きな流れを掴むことは、投資行動の有益な材料材料になる。
特に、直近は米国を中心にクレジットが積み上がっている状況だ。経済指標をよく確認したり、専門家の声に耳を傾けたりして、クレジット・サイクルの移り変わりを意識するようにしたい。(提供:大和ネクスト銀行)
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