最近、新しい不動産投資の手法として、不動産小口化商品の知名度が高まりつつある。不動産小口化商品とは、不動産の所有権を小口に分けて保有する運用手法のことで、不動産を流動化する手法の一つとして活用されて始めている。今回は、不動産小口化商品の歴史、メリット、デメリットなどを説明する。

不動産小口化商品はバブル期に始まった

Fluidization
(写真=PIXTA)

不動産小口化商品は、日本経済が絶好調だったいわゆる平成バブル期に登場した共有持分権による運用方法が始まりと言われている。当時は好景気だったこともあり、一口1億円という単位で小口化された商品が投資家に販売された。例えば、100億円のビルを100名の投資家で保有するといったイメージだ。しかし、バブル崩壊で不動産価格が急落し、多くの投資家が損失を被ることになった。

バブル期の反省もあり、その後、1995年に投資家を保護することを目的とした「不動産特定共同事業法」が施行され、不動産小口化商品の販売は許可制となり、事業内容の情報公開も義務づけられた。以降、何度か法改正がなされ、現在は、大手不動産会社などを中心に不動産流動化の一つの方法として活用されている。

不動産小口化商品は大きく分けて2タイプ

代表的な不動産小口化商品のタイプとして「匿名組合型」と「任意組合型」の二つがある。

匿名組合型は、投資家と事業者の間で商法に定められた匿名組合契約を結び、事業を行うものである。 事業を営む人 (組合) に対して投資家が出資して、その事業から得た収益を分配し、受け取る契約になっている。

事業者が不動産を持つため、不動産の所有権は投資家ではなく事業者にある。事業者が所有者として登記されるため、出資者 (投資家) の名前が登記簿に載ることはなく、匿名性があり、登記にかかる費用もかからない。

任意組合型では、民法に基づき任意組合をつくる。複数の当事者が任意組合に出資して任意組合契約を結び、共同事業を展開するのだ。投資家は、不動産の共有持分を購入し、任意組合に現物で出資する。事業者は、組合の代表として不動産の管理・運営し、運用で得た収益を投資家に分配する。不動産の所有権は投資家にあり、登記を行う必要もある。

不動産小口化商品のメリットとデメリット

スケールは異なるものの、基本的には現物不動産投資と同じような特徴を持つという認識でいいだろう。では、不動産小口化商品であるがゆえのメリットとデメリットについて見ていこう。

不動産小口化商品のメリットは、現物不動産に少額から投資できることだ。物件の規模や立地にもよるが、収益不動産1棟を1人で購入するには多額の資金が必要だ。一般的には低くても数千万円、都内であれば億単位であることも少なくない。不動産小口化商品であれば、それを複数の投資家で購入するため、1人あたりの購入金額はおのずと低くなる。

同じように、現物不動産に少額から投資できる手法としてREIT (不動産投資信託) があるが、REITの場合はある程度のテーマ (運用方針) に則って複数の物件を保有することが一般的であり、特定の地域や特定の不動産にのみ投資したい場合は、不動産小口化商品の方がよりニーズに適していると言える。

ただし、不動産小口化商品はまだまだ市場が発展途中のため、意中の不動産が小口化されているとは限らない。また、市場規模が小さいがゆえに、現物不動産投資やREITに比べて、売却したいときに希望の価格で売却できない可能性が高いこともデメリットと言えるだろう。

不動産小口化商品の基本は中長期目線のインカムゲイン

不動産小口化商品は、現物不動産投資やREITと同じように、基本的には定期的な賃料収入というインカムゲインを目的とした運用手法と言われている。売却時にキャピタルゲイン (売買益) を得ることができる可能性はあるものの、購入を検討するときは目先の利回りだけではなく、中長期の目線を持って検討することが重要だ。

特定の不動産にピンポイントで少額投資ができるというのは、今までの不動産投資にない特徴だ。メリットとデメリットをよく理解して、自身の資産運用に活かしていこう。(提供:大和ネクスト銀行

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