資産運用の大原則は「分散投資」だ。以前は株式と債券に分散することが重要と言われていたが、株式と債券の相関が高まっている昨今において、新たな分散先として活用されているのがオルタナティブである。
オルタナティブ投資のひとつとしてヘッジファンドが挙げられるが、ヘッジファンドはさまざまな理由から、個人投資家が簡単に投資できる先ではなかった。しかし、近年、米国では流動性や透明性が高いヘッジファンド (オルタナティブ) である「リキッド・オルタナティブ (Liquid Alternatives) 」が急成長を見せ、注目されている。
リキッド・オルタナティブは日本では、まだあまり知られていないようだ。そこで今回は、リキッド・オルタナティブとは何か、そしてどのような特徴があるのかを紹介したい。
リキッド・オルタナティブとは何か
「リキッド・オルタナティブとは何か」を理解するためには、まず「オルタナティブとは何か」を理解する必要がある。オルタナティブは「代替的」という意味で、大きく分けて2つの代替がある。ひとつは「伝統的な運用資産の代替」、もうひとつは「伝統的な運用方法の代替」だ。
前者は不動産、商品、貴金属、穀物、インフラなどを指す。株式や債券といった伝統的な資産以外に分散するための資産群である。後者は、株式や債券といった伝統的な資産を運用するものの、運用の仕方が伝統的手法 (基本的には「買った後は価格が上昇するのを待つ」という手法) ではない資産群のことだ。その代表格が、どんなマーケット状況でもプラスのリターンを目指すヘッジファンドである。一般的には、どちらも流動性は低い。
ここからがリキッド・オルタナティブの説明となる。リキッドは日本語に訳すと「流動性の」「動きやすい」という意味であり、リキッド・オルタナティブは「流動性の高いオルタナティブ」となる。加えて、リキッド・オルタナティブは、前述の「伝統的な運用方法の代替」であるヘッジファンドに流動性を加えた資産として捉えられることが多い。
リキッド・オルタナティブのメリット・デメリット
リキッド・オルタナティブをポートフォリオに加えるメリット、デメリットにはどのようなものがあるのだろうか。
個人投資家がリキッド・オルタナティブを保有する方法は、投資信託やETFが一般的だ。したがって、まずメリットとして挙げられるのは、本来は流動性が低いヘッジファンドを、流動性が保たれている市場の中で売買できることだ。また、今までは、ある程度まとまったロット (場合によっては億単位になることもある) でないと売買できなかったヘッジファンドに、比較的少額から投資できるようになったこともメリットと言えるだろう。
その一方、流動性が高いために、流動性が低い本来のヘッジファンドに比べると、パフォーマンスが劣後しやすいと言える。一般的に、投資対象が同じであれば、流動性が低い場合 (長期目線の案件) は、流動性が高い場合 (短期目線の案件) より、投資家にとって有利な条件が設定されやすい。
投資家としては、資金が必要なときに換金できないリスクを負うので、流動性が高い場合よりイロをつけてもらわないと割に合わない。これを「流動性プレミアム」と呼ぶ。また、リキッド・オルタナティブは流動性が高いがゆえに、ヘッジファンドがもつすべての運用戦略を再現できるわけではないこともデメリットと言えるだろう。
日本でも市場拡大が期待されるリキッド・オルタナティブ
リキッド・オルタナティブは、まだ日本ではあまり知られていないが、海外では米国を中心に急成長している。大手金融機関が発表した調査によると、2017年には市場規模が1.3兆ドルに達すると予測されている。また、別の大手金融機関系シンクタンクのレポートによると、やや古いデータではあるが2004年から2013年の10年間で約7.5倍になったという。
資産運用の世界において、米国で主流になるものは、いくらかの時間を置いて、日本でも主流になる傾向が強い。リキッド・オルタナティブがこのまま米国で拡大を続けていけば、日本でも市場が拡大していくことが期待される。(提供:大和ネクスト銀行)
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