「嫁をもらうのであれば名古屋から」「名古屋で3人の娘がいる家庭は家が傾く」などの言葉があるほど、結婚=派手だと思われている愛知。現代の実情はどうなのか、結婚に関するさまざまな観点から他の地域と比較しながら見ていきましょう。

イメージと違う?愛知の結婚式と結納

Nagoya
(写真=Kanuman/Shutterstock.com)

愛知の披露宴には、会場の豪華絢爛な装飾をはじめ、招待する人数が多めでお色直しを2~3回行うなどの特徴が見られます。ゆえに盛大かつ豪華な印象を持たれがちですが、結婚式・披露宴にかける金額の平均は約300万円前後で全国平均とほぼ同等のようです。派手婚のイメージから想像できない結果の要因としては、披露宴全体にお金をかけて豪華にするのではなく、特に煌びやかに見せたい部分に費用をかけるという、メリハリを意識したカップルが増えてきていることがあげられます。

引き出物に関しても、以前はサイズが大きく持ち運びに苦労するような重いものが好まれていました。しかし、近年では持ち帰りやすさと相手が喜ぶかどうかを基準として選ぶ傾向にあり、時には引き出物を郵送することもあるようです。

また、結納で取り交わされる結納品も独特です。愛知では反物を切断することなく宝船・鯛・樽などの縁起物をモチーフにした豪華な呉服細工を贈ります。加えて、ご先祖様に対して線香を贈る風習も残っているそうです。

さらに派手だといわれてきた愛知でも、現在では結納自体をしない、または略式結納を行うといったカップルが増加傾向にあります。呉服細工を贈る人も年々減少しており、若い人々の間ではあまり浸透していないそうです。

愛知では花嫁道具をお披露目する!?

次に紹介するのは輿入れの際に必要となる花嫁道具です。愛知には、この花嫁道具にまつわる少し変わった伝統があります。

まずは花嫁道具の運搬方法です。一般的なトラックではなく、紅白幕で飾り付けた通称「嫁入りトラック」に載せて運びます。外からでも花嫁道具が見えるようガラス張りにしたトラックや、松竹・鶴と亀など縁起物をあしらったトラックを用いることもあるそうです。なお、バックは出戻りを連想させることから、花嫁道具の運搬時はバック禁止なのだとか。もし狭い道路を走行中に対向車が来てしまった場合には、相手にご祝儀を手渡して道を譲ってもらうこともあるようです。

さらに、花嫁道具が最初に運び込まれるのは夫婦の新居ではなく新婦方の実家です。運んだ花嫁道具を実家の中に飾り、近所や親戚にお披露目するためです。これには、豪華で立派な家具を用意したことを周囲に自慢するという意味が込められています。

現代でも嫁入りトラックの風習は残っていますがその数は減少傾向にあり、トラック自体を使わない人も年々増えてきています。ガラス張りトラックにいたっては、残念ながらほとんど見かけることがなくなってしまいました。

今日まで続く愛知の風習

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(写真=PIXTA)

徐々に行われなくなってきている風習がある一方、現在でも変わらず実施されている愛知のしきたりも存在します。

1つめは、「菓子撒き」です。新婦の実家周辺に集まった近所の人々などに対して、親族が屋根の上または2階などからお菓子を撒く伝統行事です。現在は、披露宴や結婚式の演出として実施する夫婦も増え、親族ではなく新郎新婦が撒く場合も。投げるお菓子は駄菓子が主流で、名古屋市内には嫁入り用お菓子の販売・受注を請け負う菓子問屋もあります。撒くお菓子の量は多く、なかには100個もの袋詰めお菓子をまいた人もいるようです。

菓子撒きの起源は諸説ありますが、なかでも有力なのは江戸時代の慣習です。このころは、村の女性が嫁入りで出ていくのを防ぐため、村人は石を投げて抵抗するのがならわしでした。その妨害行為をやめさせるために用いたのが、当時貴重だったお菓子だったようです。ご祝儀として村人に渡すことで、嫁入りを認めてもらっていたのです。

今も続く風習の2つめは、引き出物に関する「名披露目(なびろめ)」「名披露(なびろう/なひろう)」です。新郎新婦2人の名前を記入した熨斗を添えて渡す引き出物のことを指します。

このほかにも、きしめん・ひつまぶしといった名古屋グルメを結婚式で振る舞うなど、ユニークな独自文化があるようです。

愛知の結婚式に今後も注目を

かつてはその派手さが目立っていた愛知の結婚ですが、時代の流れとともに費用を抑えた実用的な結婚へと変化してきました。徐々に消えゆくならわしもあれば、菓子撒きなど受け継がれてきたものもあります。以前よりは地味になったものの、自分たちがこだわりたい部分を華やかなものにする、という傾向は今後も続いていくのではないでしょうか。(提供:JIMOTOZINE)