(本記事は、小池修氏の著書『日本一社員が辞めない会社』ぱる出版、2018年3月10日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
【『日本一社員が辞めない会社』シリーズ】
・(1)「日本一社員が辞めない」会社の社長が教える「本当の退職理由」とは?
・(2)社員のやる気も結果も変わる「山分けインセンティブ」の中身とは
・(3)「信頼されないリーダー」がやりがちなコト 社員が辞めない会社づくり4つのポイント
・(4)「高離職率」の介護業でも社員が辞めなくなる「3つのK」とは?
・(5)なぜ「辞めさせたい社員」を継続雇用した方が良いのか?「強い組織」のつくり方
社員の定着率を上げるには4つのステップがある
社員の定着率を上げ、100%に近づけていくためには、待遇以外の面でもいろいろと改善していかなければいけません。
では、具体的に何をすればいいのか?
それは次の4つのことが、重要ポイントで「オセロの4隅」と言えます。
(1)会社の「理念」を確立する(会社の「存在目的」の共有)
(2)社長やリーダーが理念を「体現」する
(3)社員の味方となり、「信頼」関係を構築する
(4)社員の「(やる気)支援」をする
以上が、社員が辞めない会社づくりの4つのステップです。
「理念」が自立自走の社員を創る
1つ目のステップは、会社の「理念」の確立です。
「理念」というのは、ご存知のとおり、その会社の活動方針の元になる基本的な考え方のことです。もっと別の言い方をすると、会社が望む「社員の働く目的」です。
全社員が同じ方向を向いて仕事をするといっても、どちらの方向を向いていいかわからないのが、「理念」のない会社です。向いてほしい方向を示すのが「理念」です。
おそらく、あなたの会社にも経営理念があると思います。言語化していない場合でも、創業したときに考えた「こんな会社にしたい」という想いはあることでしょう。
そういう、いわゆる「理念」「目的」がはっきりしない場合、日々の業務(手段)だけ決まっている会社の中で、社員が言われたこと以外のことをひらめくことは少ないです。なぜなら、日々の業務が「目的」になっていき、ルーチンの「作業」になるからです。
経営理念を重視していない腕っぷしの強い社長もいるかもしれませんが、もし、社長の力だけに頼らない自立自走の力強い組織を創るのなら、経営理念が不可欠です。
社長の顔色ではなく、経営理念が判断基準で、手段が社員に任されると、社員はやる気とひらめきを発揮してくれるようになります。
経営理念のない会社の社長は、想いを言語化して理念を創り、自立自走の組織を創るほうがいいでしょう。
また、経営理念はあるけれど、額に入れて社長室に飾ってあるだけというような会社は、飾っておくだけでなく、いかに社員の間に経営理念を浸透させるかを考えましょう。
経営理念は社長の頭の中にあるだけでは不十分で、全社員に説明し、理解・共感してもらうことが大事なのです。
理念は言っているだけで「体現」しないと逆効果
2つ目のステップは、社長やリーダーが理念を「体現」することです。
経営理念があって、それが社員の間に浸透していることが重要です。
しかし、それだけでは十分とは言えません。経営理念を社長やリーダー自らが率先して体現することが理念浸透には「不可欠」なのです。
社員は社長やリーダーが会議で発言している意見より、社長やリーダーが現実に「やっている行動」を見習います。その行動が会社の理念と一貫性があると、理念が浸透しやすくなります。
この一貫性がないと、逆に社員は社長やリーダーを信頼しなくなります。
当社の場合であれば、社長である私が「敬護」という経営理念に則った行動をすることであり、逆に「敬護」に反するような行動はしないことです。
当たり前ですが、どんなに親しくしていて頂いても、「そうだよね」といった友だち言葉は使わず、「そうですよね」という丁寧語を必ず使うようにしていることも、理念の体現の一つといえるでしょう。
このようなことを社長である私自身が率先して行うことで、社員もやってくれるようになるのです。自分はやらずに社員にやれと言っても、社員はやりません。
「嫌いな上司がいる」というのは社員が辞める大きな要因です。
したがって、社員の定着率を上げるためには、社長(リーダー)が経営理念を体現することがとても重要なのです。
社員は「信頼」できない社長やリーダーの言うことは聞かない
3つ目のステップは、社員との「信頼」関係を構築することです。
「信用」ではなく、「信頼」です。「信用」とはある一定条件のもとで信じることで、「信頼」とは無条件に信じられることです。
社長やリーダーが経営理念を体現していなければ、社員はその社長・リーダーを信頼しなくなりますし、社長・リーダーの本音は「理念」ではないと悟ります。
リーダーがいくら経営理念に則った正しいことを言ったとしても、実際にやっていることが違えば、一貫性を欠いて信頼されず、社員はそのリーダーの言うことを聞かなくなるのです。
部下に言うことが伝わるチームを創りたかったら、社長・リーダー自身が部下から信頼される関係性を創る必要があるといえるでしょう。
部下との信頼関係を構築するには、経営理念を体現することもそうですが、ほかにも部下をほめる(部下にプラスの関心を寄せる、感謝する、共感する)といった方法もあります。
社員と「信頼関係」を構築すること、社員が正しいかどうかを判定するのではなく、「味方になる」ことが、社員の定着率アップにつながることを覚えておいてください。
社長やリーダーによる「(やる気)支援」
4つ目のステップは、社員を「(やる気)支援」することです。
私の経験からすると、優秀でやる気のある社員ほど、スキルアップしたいといった成長欲求が強い傾向にあります。
ですから、このような社員の成長欲求に応えられないと、優秀な社員から辞めていくことになります。
そうなると、会社にとっては大きな損失です。
したがって、そんなことにならないためにも、社員の成長を応援すること、やる気を支援することが非常に大事なのです。
そのためには、社員一人ひとりがこの会社で「どうなりたいと思っているのか」を知る必要があります。それがわからなければ、応援・助言のしようがないからです。
そこで当社では、全社員を対象に、3カ月に一度のペースで、約30分間社長と社員が一対一で話をする「SNS(社長と何でも相談会)」、いわゆる社長面談を実施しています。
SNSが社員の定着率アップに大きく貢献していることは間違いないと実感しています。
小池修(こいけおさむ)
リハプライム株式会社代表取締役。早稲田大学法学部卒業後、不動産会社の営業マンを経て、上場企業(フィットネスクラブ)の役員まで上りつめる。しかし、2010年、両親がほぼ同時に倒れ、介護が必要になったことを機に2011年4月に埼玉県さいたま市にデイサービスの1号店をオープン。その後、デイサービスのFCを全国展開しつつ、訪問看護ステーションや介護タクシー、福祉用具販売などの事業も次々に展開。さらに2018年1月にはシニア向け美容室を併設したカフェ「茶の間」をオープン。同時に、離職率50%が当たり前の介護業界で、定着率96%を達成し、業界の注目を集めている。