(本記事は、小池修氏の著書『日本一社員が辞めない会社』ぱる出版、2018年3月10日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

【『日本一社員が辞めない会社』シリーズ】
・(1)「日本一社員が辞めない」会社の社長が教える「本当の退職理由」とは?
・(2)社員のやる気も結果も変わる「山分けインセンティブ」の中身とは
・(3)「信頼されないリーダー」がやりがちなコト 社員が辞めない会社づくり4つのポイント
・(4)「高離職率」の介護業でも社員が辞めなくなる「3つのK」とは?
・(5)なぜ「辞めさせたい社員」を継続雇用した方が良いのか?「強い組織」のつくり方

日本一社員が辞めない会社
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

「2:6:2の法則」は上の2割から辞めていく不思議

社員のやる気「支援」ということについて説明していきたいと思います。

突然ですが、「2:6:2の法則」をご存知でしょうか?

これは動物が集団やグループを形成した場合、自然発生的に「上位2割の優秀なグループ」と「上位にも下位にも属さない6割の平均的なグループ」と「下位2割のパッとしないグループ」に分かれるという法則です。

なるほど、起業して分かったのは、何も手を打たないと、まだパフォーマンスを引き出せていないなと感じる2割の社員が存在し、よしよし期待通りという社員が6割、期待を大きく超えて能力を発揮している2割の社員が出てきます。

そして、能力を発揮している2割の社員が、何も手を打たないと将来を憂えて退職を考えるという傾向が見てとれました。

よく相談に来られる社長さんから聞くのが多いのも、(1)優秀な社員にすべて任せていたのにその社員が辞めてしまうんだ、(2)辞めさせたい社員がいる......といったことです。

しかし、これはアリの実験で実証されていることなのですが、下位2割の怠け者のアリを集団から排除したところ、全員が怠けずに働くのかと思いきや、しばらくすると残ったアリの中から2割程度のアリがさぼり始め、再び2:6:2のグループに分かれるのだそうです。

つまり、下位の2割のアリを排除しても、あまり意味がない、辞めさせたい社員を辞めさせても、その辞めさせたい社員の役割を担った社員が現れて、辞めさせた意味がなくなるということです。仮に、感情的に辞めてもらってもいいかなと思う社員がいたとしても、全力で、信頼関係の構築をして継続雇用したいものです。

人が一人辞めると結局、求人・採用・教育と大きく時間と労力、もちろん、お金もかかります。教育に関しては、特に、人が足りなくなっているのにベテランが新人を教育する時間をきちんととると、さらに、現場がきびしくなります。

逆のことも言えます。上位2割がマネジメント業務に移行して、現場から抜けたとしても、現場からその上位2割の役割を担うエースが育つ可能性が高まります。特に、私の経験からすると、何もせずに任せきって放置しておくと、圧倒的に上位2割の優秀な社員がやる気をなくして、会社を辞めていくことが多いのが現実です。

であれば、このレベルの高い社員たちをフル活用して(退屈から解放してあげて)、重要な役割にシフトさせ、待遇とともに現場から昇格させてマネジメント業務につかせ、6割の平均的なグループから上位2割のグループに入ってくる人が育ってくるというイメージを目指したほうが、会社のレベルが圧倒的に上がります。

優秀な社員は特に、成長を感じられないと辞めていく確率が高くなります。

外部からマネージャーをスカウトしてくるよりも、せっかく内部に優秀な社員がいるのですから、迷いなく現場からマネジメント業務に昇格させて成長を支援し、その役割を担う社員を育てましょう。

優秀な社員の成長を支援し続けることで、組織が強くなり、社員が定着していきます。

支援とは本人がやりたくなる「気づき」を創ること~目的設定~

日本一社員が辞めない会社
(画像=Pressmaster/shutterstock.com)

「支援」というと、社員が成長するように手取り足取り指導するようなイメージがありますが、私は支援というのは、本人がやりたくなる「気づき」を創ってあげることこそが、「やる気支援」であると考えています。

中国のことわざに「子供を一生生きていけるようにするには、魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ」というのがあります。

これは「人に魚を与えると1日で食べてしまうけれども、人に魚の釣り方を教えれば生涯食べていくことできる」という意味です。

確かに、これは一見すると、一生食いっぱぐれがなくなるので、その人にとっては良いことのように思えます。

しかし、これだけだとその人が魚嫌いだったとしたら、目的・結果につながりません。

そこで、当社では社員に魚を与えるのでも釣り方を教えるのでもなく、魚を取る「目的」を共有し、「手段」は社員に考えさせるようにしています。

たとえば、魚を取る目的が「空腹を満たすこと」だったとしたら、魚嫌いの人の発想としては、魚をもらうことでも釣り方を教わることでもなく、ヤシの実の取り方を考えたほうがいいかもしれないのです。

「子供は親の進化形」というように、いつの時代も、時代の最先端に対する対応力は、親よりも子供たちのほうが優れています。会社も同じで、若い人たちのほうが対応力は優れていることを認めて受け入れましょう。

したがって、目的さえきちんと共有できていれば、手段は若い人たちに任せたほうがうまくいく可能性が高いのです。

実際、当社では何から何まで社長である私が決めてしまうのではなく、私は社員に目的だけを伝えて、手段は社員に考えてもらうようにしています。

先日、当社ではシニア向け美容室を併設したカフェをオープンしたばかりなのですが、このとき私は「シニアや歩行困難な方が社会参加し続けるために、どうしても来たくなるような全世代のコミュニティを創る」という目的を伝え、実際にカフェで提供するメニュー開発も、お店の名前もすべて若いスタッフたちに任せました。

他社の社長にこう言うと、必ず聞かれるのが「任せてしまって、本当に大丈夫なのですか?」、「失敗したらどうするんですか?」という質問です。

しかし、これについては、私は「私があれこれ細かなところまで決めるよりも、任せたほうがうまくいく」と確信しています。

もちろん、経営者として回復不可能なダメージを負うことは避けなければいけませんので、そうならないように見守りますが、原則、手段は任せて口を出さないのが、社員のやる気アップ、ひらめきを生むことにもつながりますし、成長を応援することにもなるのです。

小池修(こいけおさむ)
リハプライム株式会社代表取締役。早稲田大学法学部卒業後、不動産会社の営業マンを経て、上場企業(フィットネスクラブ)の役員まで上りつめる。しかし、2010年、両親がほぼ同時に倒れ、介護が必要になったことを機に2011年4月に埼玉県さいたま市にデイサービスの1号店をオープン。その後、デイサービスのFCを全国展開しつつ、訪問看護ステーションや介護タクシー、福祉用具販売などの事業も次々に展開。さらに2018年1月にはシニア向け美容室を併設したカフェ「茶の間」をオープン。同時に、離職率50%が当たり前の介護業界で、定着率96%を達成し、業界の注目を集めている。