(本記事は、小池修氏の著書『日本一社員が辞めない会社』ぱる出版、2018年3月10日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

【『日本一社員が辞めない会社』シリーズ】
・(1)「日本一社員が辞めない」会社の社長が教える「本当の退職理由」とは?
・(2)社員のやる気も結果も変わる「山分けインセンティブ」の中身とは
・(3)「信頼されないリーダー」がやりがちなコト 社員が辞めない会社づくり4つのポイント
・(4)「高離職率」の介護業でも社員が辞めなくなる「3つのK」とは?
・(5)なぜ「辞めさせたい社員」を継続雇用した方が良いのか?「強い組織」のつくり方

日本一社員が辞めない会社
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

社員との信頼関係を築く3つのK

「人は誰もがダイヤの原石である」と信じ、「他人と自分は絶望的に違う」という認識に立った上で、では具体的に何をすれば社員との信頼関係を構築しやすくなるのでしょうか?

当社では、次の3つのKが大事だと教えています。

3K(きつい、汚い、危険)ならぬ、「新・敬」です。

(1)関心を持つ
(2)感謝する
(3)共感する

リーダーが普段から「関心」「感謝」「共感」という3つのKを実践することで、社員との信頼関係を構築することができるのです。

では、それぞれどういうことなのか、詳しく説明しましょう。

社員にプラスの「関心」を持ち、社員の価値に気づく(グッドグラス)

日本一社員が辞めない会社
(画像=Monkey Business Images/shutterstock.com)

3Kの1つ目のKは、社員にプラスの「関心」を持つことです。

相手の良いところと、相手と自分との共通点だけが見える「グッドグラス」をかけて過ごしましょうということです。

人は、自分に対して無関心でいられることほど、寂しいものはありません。

逆に、どんな些細なことでもいいので、こまめに声をかけてくれたりする人に好感を抱きます。

物事には表と裏があるように、どんなことでも見方を変えれば、必ず良い面が見えてきます。相手の良いところと、相手と自分との共通点だけが見える「グッドグラス」をかけるつもりで、次のように一見マイナスに思えるようなことでも、見方を変えればプラスになるのです。

・ルーズ→おおらか
・生意気を言う→頭がいい

さらに、いわゆる失態も「視点を変える」と......、

・遅刻した→遅刻してもちゃんと来た、いつもはしっかりと来ている
・何度もクレームをもらう→期待されている、ちゃんと報告できる

などなど、自分の子供だったら、こんなことを言われても、親だったらこう理解するという愛の視点が大切です。甘やかすこととは全く違います。

要は、「味方の視点」かどうかです。それが正しいかどうかではないのです。

社員は自分の価値を認めてくれるリーダー、「自分の味方のリーダー」がいたら、そう簡単に会社を辞めようとは思いません。

だから、リーダーは常に社員にプラスの関心を持つことが大事なのです。

「感謝」が伝わらなければ感謝していないのと同じ(伝わる「感謝」)

3Kの2つ目のKは、社員に対して「感謝」することです。

「感謝」とは、当たり前のことに「ありがとう」を言えること、自分が悪くないことにでも「ごめんなさい」を言えること、さらには、そう言える心の状態です。

そして、私はそもそも「相手に伝わらない感謝は、存在しないのと同じ」だと思っています。いくら心の中で感謝しているといっても、それが相手に伝わらなければ、感謝していないのと同じだということです。

したがって、当社では確実に相手に感謝の気持ちを伝えるために、思っているだけでなく、言葉にして伝えるという意識を持とうと言うだけでもなく、「ありがとうシート」と「イイネBANK」という2つの言語化ツールを使っています。

まず「ありがとうシート」ですが、これは「ありがとう」と思ったことを書いて渡すためのシートです。当社の場合、新入社員には、入社してから2週間以内に、どの社員に対してでもいいので、「ありがとうと思ったこと」「すごいと思ったこと」「印象に残ったこと」を個人名宛で、合計50個書いてもらっています。

このとき同時に、その新入社員に対する「ありがとう」を、チームリーダーを含めて3人の先輩社員がそれぞれ25個ずつ書いて、新入社員に渡すようにしています。こうして新入社員は、「ありがとう」を伝えることと、「ありがとう」を伝えられることを同時に体験することになるのです。

次に「イイネBANK」ですが、こちらは全社員が自由に書き込んだり閲覧したりできるインターネット上の掲示板のようなものです。

書き込みが多いのはやはりリーダーではありますが、全社員が周りの社員の良い行動をここに書き込むことで、全社員に共有しているイメージです。

当然、ここに名指しで書かれた社員は「見ていてくれたんだ!」ということでうれしい気持ちになります。

一方、リーダーにとっては、メンバーにこんな行動をしてほしいと思っている行動を、イイネBANK上で公開してほめることで、チームを良い方向に導くことができるというメリットがあります。

「共感」+「Iメッセージ」で感情を伝える(伝わる)

3Kの3つ目のKは、社員に「共感」することです。

リーダーは「あなたのことはわかっているよ」ということを伝えることが大事なのです。

その上で、社員にメッセージを伝えるときは「Iメッセージ」が有効です。

「Iメッセージ」とは、「私(I)」が主語になったメッセージのことで、「私はあなたのことをこう思った」、「私はあなたのことをこう感じた」といった言い方です。

たとえば、部下が5分遅刻してきたとしましょう。

このとき理由も聞かずに頭ごなしに「おい、今何時だと思ってるんだ!今月はこれで2回目じゃないか!」などと叱責してしまうと、部下は防御反応を示します。

「こちらにも事情がある」「自分のせいだけではない」など、反射的に言い訳をしたり、反発をしたりして、遅刻したことを正当化しようとします。

これに対して、「共感」+「Iメッセージ」で対応するとどうなるか?たとえば、次のようになります。

「事情はわかった。逆に大変だったな。正直、それなら仕方がないなと思うよ」と、まずは、部下の「視座」に立ち、共感します。そして、その上で、次のようなIメッセージを伝えるのです。

「でも、ちょっと悲しかったな」

つまり、部下が遅刻することになってしまった状況に共感した上で、部下を責めることなく、ただ、遅れたという行為に自分が「悲しかった」というそのときの自分の気持ち(感情)を伝えるのです。

このように言われると、部下はどう思うかというと、「自分を信頼してくれている人を裏切ってしまってマズイことをした。信頼を取り戻すために、がんばらなければ......」と思うのです。

小池修(こいけおさむ)
リハプライム株式会社代表取締役。早稲田大学法学部卒業後、不動産会社の営業マンを経て、上場企業(フィットネスクラブ)の役員まで上りつめる。しかし、2010年、両親がほぼ同時に倒れ、介護が必要になったことを機に2011年4月に埼玉県さいたま市にデイサービスの1号店をオープン。その後、デイサービスのFCを全国展開しつつ、訪問看護ステーションや介護タクシー、福祉用具販売などの事業も次々に展開。さらに2018年1月にはシニア向け美容室を併設したカフェ「茶の間」をオープン。同時に、離職率50%が当たり前の介護業界で、定着率96%を達成し、業界の注目を集めている。