フォーブスが「2017年ヘッジファンド・マネージャー報酬ランキング」を発表し、20億ドルのブルークレスト・キャピタル・マネージャーのマイケル・プラット氏が首位に輝いた。
2位はルネサンス・テクノロジーズのジェームズ・シモンズ氏、3位はアパルーサ・マネージメントのデヴィッド・テッパーという結果だ。トップ3の報酬総額は55億ドルにおよぶ。
2017年はヘッジファンド市場にとって、株式市場と比較すると今ひとつ勢いの欠ける1年となったが、トップ25入りしたマネージャーやトレーダーは、2013年以来、最大の報酬—総額168億ドルを手にした。
2017年最も稼いだヘッジファンド・マネージャーおよびトレーダー10人
9位 クリストファー・ホーン(ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド・マネージメント) 6億ドル
9位 アンドレス・ハルヴォルセン(ヴァイキング・グローバル・インベスターズ) 6億ドル
8位 スティーブ・コーエン(ポイント72アセット・マネージメント) 7億ドル
7位 ダニエル・ローブ(サード・ポイント) 7.5億ドル
5位 イスラエル・イングランド(ミレニアル・マネージメント) 9億ドル
5位 レイ・ダリオ(ブリッジウォーター・アソシエイツ) 9億ドル
4位 ケネス・グリフィン(シタデル) 14億ドル
3位 デビッド・テッパー(アパルーサ・マネージメント) 15億ドル
2位 ジェームズ・シモンズ(ルネサンス・テクノロジーズ) 18億ドル
1位 マイケル・プラット(ブルークレスト・キャピタル・マネージャー) 20億ドル
手数料を差し引いた2017年の平均リターンは8.5%
フォーブスはランキング作成にあたり、各ヘッジファンドの2017年のリターンを調査し、幅広い資産運用会社の報酬と所有構造を考察。各マネージャーの報酬を見積もった。
一般的なヘッジファンドの管理報酬手数料は2%、成功報酬手数料は20%だが、形態は様々だ。また各マネージャーの業績が報酬に反映される。ランキングに掲載されている報酬は、会社の経費や利益分配契約を考慮した税引き前のもので、自社の所有権から、あるいは自ら運用している以外の投資から生じた利益・損失は含まれていない。
ウォール街で最大の富を生み出すといわれたヘッジファンド・マネージャーだが、近年は強気の株式相場に押され気味で、手数料を差し引いた2017年の平均リターンは8.5%。21.8%の平均リターンを叩き出したスタンダード・アンド・プアーズの500インデックスとは比較にならないものの、トップ25入りしたマネージャーやトレーダーにとっては、それほど悪い年ではなかっただろう。
ファミリーオフィスへの転身が吉と出たプラット氏
1位のマイケル・プラット氏率いるブルークレスト・キャピタル・マネージャーは、2015年、当時の運用資産総額80億ドルのうち70億ドルを外部投資家に全額返金すると発表。その後親族や従業員の個人資産のみを運用するファミリーオフィスに転じた(ブルームバーグ2018年1月4日付記事) 。2016年は50%、2017年は54% と2年連続で好調な業績を上げ、ランキングで首位の座に就いた。
ジェームズ・シモンズ氏のルネサンス・テクノロジーズは、クオンツトレード(高度な数学的技術、あるいはコンピューターを用いて市場を分析・予測する計量分析)で有名だ。2017年は自社の「エクイティ・ファンド」が14.5%のリターンを記録するなど、総体的に好調だった。シモンズ氏の報酬の大部分は自身が担当・運用する、「メダリオン・ファンド」によるものだ。
デビッド・テッパー氏はゴールドマン・サックスのジャンク債トレーダーとしてキャリアを積み、1993年にアパルーサ・マネージメントを設立した(Investopediaより)。経営が苦しい会社の株式や社債を買い上げる戦略で知られる。2017年のリターンは10〜14% で、テッパー氏は3位となった。
シタデルの主要ファンドの手数料を差し引いたリターンは13.1% 。「シタデル・タクティカル・トレーディング」や「グローバル・フィックスド・インカム」は12〜3%と、概ね好調で、ケネス・グリフィン氏は4位に。
世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエイツは、ビッゲスト・ピュア・アルファ・ファンド」の手数料を差し引いたリターンが1.2%と不調。しかし13.1%を記録した「オール・ウェザー・ファンド」が助け船となり、レイ・ダリオ氏は5位となった。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)