(本記事は、水瀬ケンイチ氏の著書『お金は寝かせて増やしなさい』=フォレスト出版、2017年12月18日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

【『お金は寝かせて増やしなさい』シリーズ】
(1)ウォール街の大半のプロを打ち負かす「インデックス投資」3つのポイント
(2)7割のアクティブファンドがインデックスに勝てない「皮肉な現実」
(3)貯めてから投資ではなく「貯めながら投資」で万一にも備えよう
(4)株なら「70万倍」、キャッシュなら「20分の1」──株式がもつ仕組みの力
(5)今後も起こる大暴落 相場が好調なときこそ確認したいコトとは?

お金は寝かせて増やしなさい
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

投資信託の99%は不要!

投資信託は少額からたくさんの銘柄に分散投資できて、制度的にも手厚く守られている初心者向きの金融商品ですが、手数料がかかるので、できるだけ低コストなものを選ぶ必要があります。

現在、日本には、なんと約6000本もの投資信託があります。

この数、なんと日本の上場企業数よりも多いのです。

たくさんの銘柄をまとめて分散投資できることが特徴の投資信託の数が、投資対象である上場企業数よりも多いのですから、普通に考えたら、これはある種の異常事態です。

これは、過去、数十年にわたって金融業界が似たような新規設定投資信託(しかも、大半がロクでもないもの)を粗製乱造してて、個人投資家に新商品として乗り換えをすすめ「回転売買」をさせて、購入時手数料の手数料稼ぎをしてきた名残です。

まったくなげかわしい過去の黒歴史なのですが、これからは実際に6000本もあるなかから自分に必要な投資信託を選ばなくてはいけません。

「そんなにたくさんあるなかから、どれかを選ぶなんてできない!」

ところが、実はインデックス投資においては、これがすごくカンタンです。

結論から言うと、買うのは「インデックスファンド」だけです。

投資信託には大きく分けて、「インデックスファンド」と「アクティブファンド」の2種類があります。

インデックスファンドとは、各種指数(インデックス)に連動する運用成果を目指す投資信託です。各種指数には、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)など株式市場の動向を表すインデックスや、野村BPIなど債券市場の動向を表すインデックスなどがあります。

多くの場合、「市場平均」を表しています。国内外の株式・債券・不動産など主要な各資産クラスには、それぞれインデックスがあります。

インデックスファンドは、これらインデックスの動きにぴったり連動するように運用されます。たとえば、国内株式のインデックスであるTOPIXが1日で3%上昇すれば、インデックスファンド(TOPIX連動)も3%値上がりし、逆にTOPIXが1日で1%下落すれば、インデックスファンド(TOPIX連動)も1%値下がりします。

一方、アクティブファンドとは、インデックスを上回る運用成果が得られるように、専門家が投資先や売買のタイミングを判断して運用を行う投資信託です。

アクティブファンドのほとんどがインデックスに勝てない皮肉な現実

お金は寝かせて増やしなさい
(画像=Rawpixel.com/shutterstock.com)

アクティブファンドはインデックスを上回ることを目指すのだから、アクティブファンドの方がインデックスファンドよりも儲かる気がしませんか。

ところが、実際はインデックスファンドの方が圧倒的によい運用成果を上げているのです。

日本の大手投信評価会社であるモーニングスターの2015年の調査では、国内株式クラスのアクティブファンドのインデックスファンドに対する勝率は、1年で26%、3年で33%、5年で39%、10年でも32%しかなく、全期間をとおして20~30%台の勝率しかありません。

つまり、アクティブファンドの70~80%はインデックスファンドに負けているということになります。

インデックスが市場の平均だとすると、アクティブファンドの勝率は50%程度になると思いませんか。だって平均なのですから。しかし、実際は70~80%のアクティブファンドがインデックスに負けてしまうのです!

この傾向は日本だけではありません。世界的に同じ結果が出ています。

世界最大の指数提供会社であるS&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズの2016年の調査によると、米国株式クラスのアクティブファンドのインデックスに対する勝率は、1年で15%、5年で8%、10年で15%しかなく、全期間をとおして10〜15%の勝率しかありません(日本経済新聞2016年9月16日号記事より)。

私たちはインデックスの「市場平均」という語感から、インデックスファンドをついリターンも平均的なしょぼいものと思ってしまいますが、実際はアクティブファンドのほうがしょぼいものが多いのです。

アクティブファンドがインデックスに負けてしまういちばんの理由は、手数料(コスト)が高いことだと言われています。

しかも、日本の投資信託のコストは、米国に比べて割高にあります。

金融庁が公表している「金融レポート(2016年9月)」の「規模の大きい投資信託の日米比較(純資産額上位5銘柄)」によると、まず日本は上位5銘柄すべてがアクティブファンドです。

それに対して米国は上位5銘柄のほとんどがインデックスファンドです。

購入時手数料については、日本が平均3.20%に対して米国では平均0.59%。

運用管理費用(信託報酬)については、日本が平均年率1.53%に対して米国では平均年率0.28%となっており、日本で売れている投資信託がいかに高コストであるかがわかります。

日本の投資信託のなかでも、インデックスファンドは低コストです。

具体的に見てみると、たとえば、国内株式インデックスファンドの「eMAXISSlim 国内株式インデックス」(運用会社:三菱UFJ国際投信)の運用管理費用(信託報酬)は年率0.18%です。

上記にあるように、日本の規模の大きな投資信託(アクティブファンド)は平均運用管理費用(信託報酬)が年率1.53%です。

単純計算するだけで8.5倍もの手数料(!)が毎日投資信託の信託財産のなかから抜き取られているのです。

また、インデックスを上回るアクティブファンドの顔ぶれは毎年変わる(かつ激しく入れ替わる)ため、毎年インデックスを上回り続けるアクティブファンドを探すことは、労力に見合わない徒労に終わることになります。

運用の専門家の大半が市場平均を上回れないのであれば、そんなものは専門家とはいえませんし、そんな成果しか出せない商品群ならば、まるごと見送ってしまってさしつかえないと思います。

水瀬ケンイチ(みなせ・けんいち)
1973年、東京都生まれ。都内IT企業会社員にして下町の個人投資家。2005年より投資ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー」を執筆、現在ではインデックス投資家のバイブル的ブログに。日本経済新聞やマネー誌などに数多く取り上げられる。著書『全面改訂 ほったらかし投資術』(朝日新書・山崎元氏との共著)。