(本記事は、水瀬ケンイチ氏の著書『お金は寝かせて増やしなさい』=フォレスト出版、2017年12月18日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

【『お金は寝かせて増やしなさい』シリーズ】
(1)ウォール街の大半のプロを打ち負かす「インデックス投資」3つのポイント
(2)7割のアクティブファンドがインデックスに勝てない「皮肉な現実」
(3)貯めてから投資ではなく「貯めながら投資」で万一にも備えよう
(4)株なら「70万倍」、キャッシュなら「20分の1」──株式がもつ仕組みの力
(5)今後も起こる大暴落 相場が好調なときこそ確認したいコトとは?

お金は寝かせて増やしなさい
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

相場が大暴落したらどうすんのよ!?

あらかじめ申しあげておくと、過去何度も相場の大暴落があったように、今後も大暴落は起こります。たとえ発生確率が1%の大暴落でも、100年に1回だから100年後まで来ないなどという保証はまったくなく、今年にでも発生確率1%の大暴落が起こることはあり得ます。

大暴落をうまく避けることができれば、それに越したことはありません。大暴落の直前まで投資を続けて、大暴落が来る直前に一気に売却して、相場の底で一気に買い戻して……ということができれば最高です。

しかし、適切なタイミングで売買するということは、難しいことです。プロが適切な銘柄を適切なタイミングで売買して、インデックスを上回るリターンを目指すアクティブファンドの70~80%は、インデックスの買い持ち(バイ&ホールド)に勝てないことを、もう皆さんはご存じのはずです((2) のリンク参照)。

残念ながら、インデックス運用であろうと、アクティブ運用であろうと、誰もが大暴落をうまく避けることはできないと腹をくくる必要があります。

大暴落を避けられないとすれば、どうすればよいのか?

ポートフォリオのリスク水準を、自分のリスク許容度の範囲内に抑えた資産配分にしておくことです。

もし大暴落が来たとしても、市場にとどまり続けることができれば、相場の回復をゆっくりと待つことができます。そして、積み立て投資を続けることができれば、暴落中、暴落後は「絶好の買い場」となり得ます。

実際に、2008年のリーマン・ショックのときには、積み立てたそばからそれ以上に値下がりしていくような地獄絵図で、私も心穏やかではありませんでした。

でも、翌2009年3月に底を打ってからは、相場がV字回復したことに驚きましたし、その回復の勢いがあまりに急だったことに、さらに驚きました。

地獄絵図のなかで、アクティブ投資家たちが狙っていた買い時(暴落相場の転換点)は、あっという間に終わってしまったのです。アクティブ投資家の買い時は、早すぎても暴落で損失を被るし、遅すぎても上昇相場に乗り遅れるため、往々にしてインデックスのバイ&ホールドに劣るリターンしか上げられないことになりがちです。

タイミング投資は本当に難しいなと思ったものです。

インデックス投資を継続するにあたって、大暴落が怖くて仕方がないのであれば、それはリスクの取り過ぎかもしれません。株式クラス(国内株式・先進国株式・新興国株式)の比率を下げて、国内債券クラスの比率を上げるとよいと思います。

相場が好調なときにこそ「リスク許容度の確認」をすべし!

お金は寝かせて増やしなさい
(画像=Things/shutterstock.com)

ここで超重要なことをお伝えします。

ポートフォリオのリスクが自分のリスク許容度の範囲内に収まっているかの確認は、株価が好調なときにこそ行うべきです。

暴落してから行うのでは遅いのです。

なぜなら、暴落時にリスクを取り過ぎていたことに気づいても、すでに資産は毀損しており、そこから投資額や資産配分を調整しようとすると、資産価格が下がっているときに損失を確定することになってしまうからです。

おすすめなのは、株価がググッと上がったときに、プラスとマイナスを入れ替えて、同じだけ下がったら耐えられるかと自問自答することです。

たとえば、株価が大幅に上がり、1日で資産が50万円増えた日には、「50万円も儲かった!」と喜ぶだけでなく、「もし、50万円損したら耐えられるだろうか……?」と、逆の場合のことを考えてみるといった具合です。「そ、それはちょっと耐えられないな……」と感じるのであれば、それは運用資産が自分のリスク許容度を超えている可能性があり、前述の対処(資産額や資産配分の調整)が必要になります。

株価が高いときに資産を売ることは利益確定になり、もっと言えば「勝ち逃げ」の形になるので、悪い話ではありません。リスクを取り過ぎていたこと自体はミスですが、美味しい形でミスを修正できて、結果オーライとなります。

だからこそ私はブログで、暴落局面ではなく、相場が好調なときにこそ、繰り返し「リスク許容度の確認を」という記事を投稿しています。

好調相場で世の中が盛り上がっているところに、冷水を浴びせる形になるのであまり評判はよくないのですが、市場から退場してしまわないための「予防」こそ、本当は価値のある情報のはずです。

余談ですが、私はコンビニで売っているアイスの「ガリガリ君」で、買ったガリガリ君が当たり、引き換えでもう1本もらったガリガリ君がさらに当たるという、2回連続の「アタリ」が出たことがあります。

ガリガリ君が当たる確率は、3.2%らしいので、2連続で当たる可能性は3.2%×3.2%で、わずか0.1024%になります。

何十本、何百本と買っているわけではないのに、それでも当たるときには当たるのです。発生確率が極めて低くても、起きるときには起きるものだなと実感しました。

水瀬ケンイチ(みなせ・けんいち)
1973年、東京都生まれ。都内IT企業会社員にして下町の個人投資家。2005年より投資ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー」を執筆、現在ではインデックス投資家のバイブル的ブログに。日本経済新聞やマネー誌などに数多く取り上げられる。著書『全面改訂 ほったらかし投資術』(朝日新書・山崎元氏との共著)。