(本記事は、佐藤将之氏の著書『アマゾンのすごいルール』宝島社、2018年4月20日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

アマゾンのすごいルール
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

【『アマゾンのすごいルール』シリーズ】
(1)ジェフ・ベゾスが「1万年動き続ける時計」を作る理由
(2)アマゾン流 優秀な人を獲得する「ブレない面接」とは?
(3)アマゾンの「360度評価」はココが違う!正しくない評価のはじき方
(4)資料で箇条書きはNG アマゾンが「パワポ禁止令」を出した理由
(5)ジェフ・ベゾスが「顧客第一」のために排除する「ソーシャル・コヒージョン」とは?

最大6人と1対1面接アマゾン流の採用ステップ

アマゾンのすごいルール
(画像=Kzenon/Shutterstock.com)

アマゾンの採用面接は、リクルート業界から”エージェント泣かせ”と言われています。その理由は、彼らがアマゾンに紹介した人間がなかなか採用に至らないからです。「もはやどんな人を出していいかわからない」とボヤかれることもたびたびで、アマゾンは彼らにあまり好かれていないのではないでしょうか(笑)。

とはいえ、アマゾンは決して「落とす面接」をしているわけではありません。飛躍的な成長を遂げている会社ですから、常に各部門が人材を求めているのです。

ただ、だからといって、「誰でもいい」とは考えないのがアマゾン流。優秀な人を獲得するための基本的な考え方、そしてブレない仕組みが存在しています。マネージャーなどビジネスをドライブするレベルの人間の面接を例に、その考え方や仕組みについて解説していきましょう。

まず、面接の基本ステップについて触れていきます。最初のステップでは、送られてきた履歴書を人事部が精査します。ごく一般的なファーストステップです。

次のステップで、精査された履歴書が各部署に送られます。その送られてきた履歴書すべてにHiring Manager(=入社後に上司となるマネージャー)が目を通します。気になる人物がいたら「この人とこの人を面接したいので呼んでください」と人事に連絡し、面接がセッティングされます。

一次面接では、Hiring Managerが会います。場合によっては、人事も会います。時間は40分ほどでしょうか、1対1で面接を行います。Hiring Managerが「この人だったら次に進めてもいいな」と思ったら、二次面接へと進みます。

二次面接は、アマゾンらしい面接と言えます。まず人数ですが、最大5人の面接官が社内で招集されます。面接官はすべて他部署のマネージャークラスの人間です。この面接官の中に1人、「バーレイザー」と呼ばれる人間が必ず含まれます。

二次面接はアマゾン社内で行うのが基本ですが、二次面接もすべて1対1で行います。1人との面接時間が40~45分ほど。それを最大5回行うわけです。1日で終わるということは当然なく、2~3日に分けて行うことが多いのです。面接を通って入社してきたアマゾニアンに話を聞くと、たいていの人が「あんなに何度も面接をする会社は他に知らないですね」という感想を口にします。

・採用/不採用を論議する面接後のミーティング

二次面接の後には、面接官たちがフィードバックを行います。つまり、記入フォーマットに、面接内で確認したことや感じたことを書き、さらに「採用に賛成/採用に反対」を投票しておくのです。全員が記入を終えると、一次・二次の面接官全員で集まり「Hiring Meeting(ハイアリングミーティング)」が開催されます。この時点で初めて、他の面接官の「賛成/反対」の投票結果を知ることができます。

このミーティングで全員が「採用に賛成」という意見だったら、その候補者は採用されます。

仮に「採用に反対」という人がいたとします。その場合は、「反対」の理由について検討します。具体的には「トレーニングで修正可能か?」「周りの人間がカバー可能か?」の2点を検討するのです。

例えば、Hiring Managerが「あなたが『反対』とする理由に関しては、こういうトレーニングをするから大丈夫です」と伝え、「反対」と言っていた人が「うん、だったらいいよ」となれば採用というわけです。「反対」と言っている人が「いや、それはトレーナブル(トレーニング可能)じゃないよ。この人の本質の問題だから、たぶん無理だと思う」と言って「反対」のままだったら不採用となります。

・二次面接の面接官はどのように選ばれるのか?

二次面接の面接官は、関係部署のマネージャーなど、「入社後に仕事上関係が深くなる人間」から選ばれます。一次面接を行うHiring Managerが「この人に面接に立ち会ってもらいたい」と希望を出すことも多く、人事から「この採用担当が面接に加わってほしいと言っていますが、やってもらえますか?」という問い合わせが来ます。「OKですよ」と答えると、面接官に加わるのです。

私は、アマゾンキャリアが長かったのと、さまざまな部署を見てきた経験があったので、面接官として声をかけられることが比較的多かったと思います。自分の直轄部署の採用も含め、他部署の採用面接でも呼ばれるわけなので、正直かなり大変でした。多いときには1週間で10件以上の面接に立ち会ったこともあり、スケジュール帳が面接でどんどん埋まっていってしまったこともあります。

それでもアマゾンは面接に時間をかけています。それはなぜでしょうか?

「アマゾンをこれから1つ上の段階に引き上げてくれる人材を採用しよう」という目的があるからです。会社は、そのために膨大なエネルギーを注いでいるのです。

また、社員であるアマゾニアンたちも、「できるだけ多角的に候補者を評価して、素晴らしい人材を採用したい。それが会社の成長の原動力になる」と信じて面接に臨んでいます。「Hire and Develop the Best」という項目がOLPの中にあるとおり、最高の人材を採用して育てることが大切。自分の部下だけでなく、他の部署の人間も含めて採用に貢献することが、リーダーに求められる資質なのです。

さらに、「自分のときに助けてもらわなければいけない」という実情もあります。

良い面接をする人ほど、「この人に参加してほしい」と名指しで指名されます。だからといって断ってばかりいると、自分の部門で採用面接を行う際、誰も協力してくれなくなってしまうので、無下にはできないのです。なので、日程上どうしても無理という場合を除いては、できるだけ積極的に参加するのです。

佐藤将之(さとうまさゆき)
企業成長支援アドバイザー。セガ・エンタープライゼスを経て、アマゾンジャパンの立ち上げメンバーとして2000年7月に入社。サプライチェーン、書籍仕入れ部門を経て、2005年よりオペレーション部門にてディレクターとして国内最大級の物流ネットワークの発展に寄与。2016年、同社退社。現在は鮨職人として日本の食文化に携わるとともに、15年超の成長企業での経験を生かし、経営コンサルタントとして企業の成長支援を中心に活動中。ブログhttps://ever-growing.biz