(本記事は、佐藤将之氏の著書『アマゾンのすごいルール』宝島社、2018年4月20日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

アマゾンのすごいルール
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

【『アマゾンのすごいルール』シリーズ】
(1)ジェフ・ベゾスが「1万年動き続ける時計」を作る理由
(2)アマゾン流 優秀な人を獲得する「ブレない面接」とは?
(3)アマゾンの「360度評価」はココが違う!正しくない評価のはじき方
(4)資料で箇条書きはNG アマゾンが「パワポ禁止令」を出した理由
(5)ジェフ・ベゾスが「顧客第一」のために排除する「ソーシャル・コヒージョン」とは?

パワーポイントの使用NG 1ページ or 6ページでまとめる

アマゾンのすごいルール
(画像=VGstockstudio/Shutterstock.com)

アマゾンでは、「説明資料は箇条書きにせず、必ず文章形式で書く」というのが基本ルールとなっています。プレゼンテーションでは、パワーポイントの箇条書き形式で資料を作る企業も多いと思います。けれども、アマゾンではNGなのです。

それはなぜか?

「後からその資料を読み返しても内容がわかるものでなければならない」という考え方があるからです。

パワーポイントの資料を使ったプレゼンテーションの場合、キーワードだけを箇条書きにしているのでわかりやすいですし、動画などが盛り込まれるとさらに印象的です。プレゼンテーターは、箇条書きの行間を埋めるようにして、話を展開していきます。うまくハマれば、一体感を作ることができるでしょう。

その一方、「後で困ることが出てくる」とアマゾンでは考えます。

例えば、「出席者ごとに箇条書きの行間の解釈に差異が生まれてしまう」「プレゼンテーターが話したもことを忘れてしまう」「言った、言わないで揉めてしまう」などです。

実は、アマゾンでも初めの頃はパワーポイントを使ったプレゼンが行われていました。そこに”禁止令”を出したのは、他ならぬジェフ・ベゾスです。

なぜなら、ジェフ・ベゾスは、社内会議などで1週間に何十もの報告を受ける身です。そのいちいちすべてを覚えていられるわけはありません。資料を読み直してみるものの、「何を言いたいのか、よくわからない」と腹を立ててしまったのです。

そこで、2006年頃だったと思いますが、「パワーポイントのアニメーション作りなんかに時間をかけるな。すべて文章形式で書くように。その資料を読んだだけでわかるようにしろ」となったわけです。

●1ページか6ページで要点を書く

ただし、文章形式だからといって、ダラダラと長く書いて良いわけではありません。

基本は、「A4で1ページ」か「A4で6ページ」のどちらか。私たちはこれらを「1ページャー」と「6ページャー」と呼んでいました。

・ビジネスドキュメントのほとんどは「1ページャー」で

報告書などのドキュメントは、基本的に1ページでまとめます。

例えば、トラブル発生に関する報告書の場合、「トラブルの具体的内容/究明されたトラブルの原因/実際に行った対策」について1ページで簡潔にまとめます。ここでも、ファクト(事実)を具体的に書くことが求められています。

アマゾンで閲覧されるドキュメントのほとんどは1ページものです。

・年次予算やプロジェクトは「6ページャー」で

一方、年次予算や大がかりなプロジェクトに関しては、6ページでまとめるのが基本です。プロジェクトに関しては「プロジェクトの概要/財源/目標とする指標」などをコンパクトにまとめます。

ただし、グラフや表などは別添とし、枚数にカウントはしません。

●高い作文能力が求められる

ジェフ・ベゾスは本が非常に好きで、高い読解力、文章作成力を備えた人物です。

かつて、アマゾニアンたちの文章作成力を嘆き(十分高い能力ではあると思うのですが......)、「入社試験で作文を課そうかな」と、笑いながら言っていたこともあったほどです。そのため、論理的で簡潔な文章を作成する能力は、アマゾニアンたちにとって必須の能力の1つです。

ちなみにベゾスのひと言は冗談ではなくなり、現在では入社試験で作文の宿題が出ています。

なお、マネージャークラス以上になれば、ドキュメントを英語で作成しますので、この肩書き以上で求められるのは「英語の文章作成能力」ということになります。私も実際、英語でドキュメントを書いてきました。

ただ、個人的な感想を言えば、英語は日本語よりも簡潔かつ論理的な文章を書きやすいと感じました。

また、自分がネイティブスピーカーでなく、修辞表現をたくさん知っているわけではないことも幸いしました。基本的な単語を使ってファクトベースで書くことに徹することができたからです。

ですから、「アマゾンに入社して活躍したい」と思いながら英語がネックになって二の足を踏んでいる方には、「基本的な英語能力があれば、あまり臆する必要はないのではないか」とお伝えしたいです。

余談ですが、ジェフ・ベゾスの印象をひと言で例えるなら「恐ろしく頭の良い人」です。

私は母国語でない英語で話をするので、少したどたどしくなりますし、ボキャブラリーも限られます。そんなときでも私が何をどう説明しようと思っているのか、すぐに理解してくれました。ベゾスとのコミュニケーションは、ストレスがなく、とても楽でした。

また、我々とは違うレベルで物事を考えている人物であることもわかりました。

説明を聞き終えて「つまり、こういうことだよね?」というまとめが、こちらのイメージをはるかに超えてくるのです。説明したこちら側が、「そういうことだったのか」と気づかされることもたびたびでした。

佐藤将之(さとうまさゆき)
企業成長支援アドバイザー。セガ・エンタープライゼスを経て、アマゾンジャパンの立ち上げメンバーとして2000年7月に入社。サプライチェーン、書籍仕入れ部門を経て、2005年よりオペレーション部門にてディレクターとして国内最大級の物流ネットワークの発展に寄与。2016年、同社退社。現在は鮨職人として日本の食文化に携わるとともに、15年超の成長企業での経験を生かし、経営コンサルタントとして企業の成長支援を中心に活動中。ブログhttps://ever-growing.biz